2021/09/25 のログ
ご案内:「無名遺跡」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 遺跡の中でもごく浅い層では、天井が崩落して外の森に浸食されている場所が多々ある。森歩きをしていたと思ったら、いつの間にか遺跡へ迷い込んでしまうこともよくあることだった。

「―――μΣσψ♪…」

そんな森の一部と化した場所に、聞きなれない言葉を奏でるエルフが一人。床に積もった瓦礫の上に苔が蔓延り、その上にシダ類が根を張って不明な足元を、器用にひょいひょいと進んで行く。
遺跡特有の黴臭さと緑の香りと零れ落ちて堆積した土の匂い。
歌を不図止めてすうーとその空気を吸って、欠けた天井から覗く空を見上げる。今宵は月明かりが一際夜空を紺のグラデーションに彩って、ちかちかと瞬く星を見分けるのが難しいほど。

その月明りを辿るように視線を落として行けば、天井や壁を突き抜けてきた木の根と枝垂れた蔦植物とが目に入って、女エルフの口元に不思議と笑みが浮かぶ。
遺跡は何らかの魔力が働くのか、珍しい植物に出合うことが多い。実りの季節だから何らかは見つかるだろう、という安易な期待と、人工物を凌駕していく植物たちの時間と生命力とが織りなした光景に、奇跡を見たような気になって、心は軽い。

「λεβγξ―…♪」

ふたたび、歌を口ずさみながら探索を再開する。
本来ならヒトの存在を知らせるような行為は自殺行為なだけだが、どうやら聞きなれない響きの場合は警戒の対象になるらしい―――とは、冒険者ギルドで耳にしたマユツバな噂だったが
半分試しに、と古い古い歌を口ずさんでみたら、見事にここまでの間特に危険な魔物とは出会わなかった。
それに元々の歌好きも相まって、調子に乗って歌い続けながら探索を続けている。