2021/08/25 のログ
ご案内:「無名遺跡」にグリセルダさんが現れました。
■グリセルダ > ぬめつく蒼白い光を放つ光苔の類に、壁も天井もびっしり覆われた、
遺跡最深部の広い部屋。
甘い薫りの香が焚き染められ、禍々しい術式を構成する魔法陣が描かれた、
中央部の祭壇、石造りの台上に仰臥するのは、意識を失くした小娘一人。
当然合意の上ではない、生贄だか媒介だか知らないが、
勝手に捕らえられ、意識を奪われ連れ込まれたのだ。
もしも途中で目覚めていたら、担ぎこんできた怪しい連中に、
引っ掻き傷のひとつもプレゼントしていただろうが――――
残念ながら、娘は目覚めなかった。
ボルドーのローブを纏った肢体は今のところ、完全に脱力しきって、
妖しく光る祭壇の上に横たわり、目を閉じて、強制された役割をこなしている。
この場で何が起こるのか、誰が、何が、迎えに来るのか。
無事に帰れるかどうかさえ――――――きっと、誰にもわからない。
ここへ娘を担ぎこんできた人々さえ、後はもう知らぬとばかり、
多分朝が来るまでは、誰一人、戻って来ないのだろう。
誰かが、何かが来るのが早いか、娘が起きて逃げるのが早いか――――――
ご案内:「無名遺跡」に黒曜石さんが現れました。
■黒曜石 > 深―――。
もし、その音を文字に起こすのならばそんな塩梅だ。
甘く薫る空気に混じるのは赤い火の粉。
ぬめつく光苔の光の中に浮かぶのは、色の無い灰。
そして、禍々しい術式の魔法陣に無遠慮に踏み入るのは、粗末な靴先。
薄っすらと膜が張ったような黒い黒い瞳が祭壇の上の娘を見る。
「ここが、一番奥か。」
枯れたような、錆びたような声が状況を確認する。
彼は迎えに来るべき者でなければ、呼ばれるべき何かでもない。
訪れただけの者であり、何か。
その手が、祭壇の上の娘に向けられる。
ぐじゅ――ぐじ――と、灰が触れた床が、火の粉が散った壁が歪みはじめていく。
石のそれから、まるで生物のそれのように歪んで、拉げて、狂っていく。
その中で、近付いていく足。
祭壇まで迷いなく、ゆっくりと、まるでそう造られたように近付いて。
■グリセルダ > ゆうらりと、辺りに漂う空気が、光が、色を変える。
生温かく湿った蒼から、降り積もる灰に、紅い火の粉に。
踏み入られ、歪められ、損なわれた術式は変容し、
同時に、娘の意識を深く沈めていた薫りも、秘術も、薄らぎ始める。
彼が、ここへ本来招かれるべき誰かではないとしても、
整えられたこの場を乱す力、あるいは制するだけの力を、彼が有しているのなら。
この場を設えた者たちの意向も思惑も、そうなるべくして打ち砕かれるのみ。
――――――そして、娘の意識は浮上する。
もしかすると娘にとっては、最悪のタイミングで。
「………ぅん、……ん………?」
ぐじゅり。
背中を、腰を預けた祭壇までが、奇妙な弾力と熱を帯びたような。
眉根を寄せて、小さく身動いで、今にも開きそうに瞼を震わせる。
戒めの類は省かれていた、両手が無意識に、祭壇であったものの上を這う。
ここがどこなのか、この状況は何なのか。
ただ、単純に、寝かされているものの形状を探るためだけの掌、指先。
娘が目を開けるまで、後、数秒もかからないはず。
■黒曜石 > 音もない、温度も無い、火の粉と灰。
まるで死んだ世界の薄片のように、祭壇に、壁に、床に降り積もり
そして汚濁へと変えていく。
冷たい石の床は、肉色に蠢きはじめ、まるで内臓の一器官ののように透明で粘ついた体液を分泌しはじめる。
壁に、天井には大小さまざまな目と、唇が開いていく。
『小娘ダ』『生贄ダ』『生娘ダ』
泥水のように濁った色の眼球が祭壇の娘を捉え、
性別も年齢もごちゃまぜになったような声がその「獲物」に歓喜する。
「――獲物か。そうだな。お前は。」
そして、洞のような声が、娘に語り掛ける。
最初の術式が何だったか、目的が何だったかを知る者はいない。
遺跡の途中で死骸に成り果てた彼等に聞くような物好きはいない。
けれど、力ある者の贄とすることが目的ならば、それだけは叶うだろう。
『美味イ』
ちゅ――ぷ。祭壇を這いずる細く褐色な指先が何かに銜えられる。
肉厚の唇。既に方形の肉の塊となっていた祭壇に開いたそれ。
人差し指を銜え込んで、ねっとりと指先から根元までしゃぶっていく。
その手首に、首筋に、胴体に祭壇から伸びた触手が絡みつき始めていって――。
■グリセルダ > 生あるものが、みな、死に絶えてしまったかのような静寂。
腐臭を放つ間もなく朽ち果てて、どろりと濁った汚泥が足許の床を、
壁を、天井を――――――ただ、覆うだけでは済まなかった。
何か、湿ったものが蠢く気配、粘っこい音。
そして、ざわめく何ものかの声―――――それらの中から、不意に。
明らかな指向性をもって、娘の鼓膜を揺らす声。
「ぇ、―――――――― 」
エモノ?
なんのことだ、と問うより早く、指先を何かが食んで、舐めた。
ねっとりと絡みつく舌先、温かく蠢く口腔を思わせる感触に包まれて、
今度こそ、娘はぱちりと目を開く。
しゃぶられていた指先を引こうとするのは、ほぼ反射的に。
けれど、別の何かが手首を捉え、首筋へ絡み、腰に巻きついてきたために、
逃げるどころか、身を起こすことも出来ず。
こちらを見下ろしている男の姿と、その肩越しにいくつもの、ぎょろりと濁った目玉の群れ。
それらを認めて、ピンクの瞳が大きく、零れ落ちそうに見開かれ、
「~~~~~~ っっ、な、なん、っ……!?」
なにこれ、なんなの、どうなってるの――――――そう叫びたかったけれど、
咄嗟に声が出てこなかった。
首を、急所を捕らえられているからか、あまりに想像を絶する光景だったからか。
恐怖や戸惑い、そんな、生者特有の感情を露わにした瞳で、じっと男を凝視しながら、
四肢に、身体に纏わりつくなにかを、振り解こうと身を捩り。
■黒曜石 > ぼたり、と床に落ちた汚泥は
ぐじぐじと蠢きながら床と同化して触手となって伸びていく。
伸びた触手は枝分かれし、増殖し、部屋のあちこちを埋め尽くしていくだろう。
―――灰と火の粉が呼んだ異界。
目覚めた娘の視界に入るのは、そんな悍ましい場所だろう。
その主、黒い瞳の男は祭壇の傍ら、娘を見下ろして。
「お前、名前は――?」
温度の無い声、温度の無い瞳で見詰めた。
死者のそれではない。ただ、それに近い程の彩の黒。
『起キタ!』『名前ヲ!』『教エロ!』『脱ガセ!』
じゅぶ、と熱い粘液の残滓を纏いつかせて指を解放する唇。
代わりに周囲から無数の不協和音が、下卑た声が降って来る。
見開かれたピンク色の瞳を、煮え滾るような情欲が見下ろして、嗤って、囃し立て
――ぎ、じ。
それに混じる音。
視線を落とせば、身体を這いずる蛇のようなものが見えるか。
肉色に蠢く触手。その表面に生えた無数の牙が、彼女の衣服に喰いつく。
身を捩って逃れようとする肢体に絡みついて、粘ついて、食い千切って
まるで飢えたケダモノのように、その膚を露にしていこうとしていって――
■グリセルダ > 目覚めたばかりの娘の視界で、うぞうぞと蠢く肉色の何か。
ひとつふたつではない、その程度ならさすがに、動けなくなるほど怯えやしない。
問題はそれが数え切れないほど多く、しかも、逃れようともがいている間にも、
どんどん増えて、枝分かれして、周囲を覆い尽くしていることだ。
そんな中で、見るからに胡乱げな風体の男に名前を問われて、
誰が素直に答えるものか、と思ったが――――――
「きゃ―――――― っちょ、や、なに、やっ、やだ、やめて、やあっ、
―――――――― 言、うから、教える、から、止めて、やだああ、っ……!!」
無数の眼に睨まれて、濁った声で囃し立てられて、それだけで脅しには充分すぎるほどなのに。
絡みつく触手の群れが、ひとつ、またひとつと牙を剥き、
がじっ、ぐぢゅ、とローブの裾に、袖に、胸元に齧りついて、
めちゃくちゃに食い千切り、引き剥いで、肌を暴き立てようとする。
悲鳴を上げて身をくねらせ、胸を、秘部を庇おうとした両手にも、
別の触手が絡みつき、ものすごい力で引っ張られて、締め上げられた関節がぎしぎし軋む。
押し寄せる触手を蹴り飛ばそうとした足も、当然のように絡め取られて、
まだ、異性の目に触れさせたことさえない無垢な裸身が、肉色の祭壇の上に晒されてしまう。
くしゃりと顔を歪めて泣きじゃくりながら、娘は必死に名を教える。
グリセルダ、という五つの音を、二度、三度と繰り返して、
彼の、彼らの慈悲を乞うけれども。
細身ではあるけれど、少女らしい淡い丸みを宿し始めたボディライン。
小ぶりではあるものの、かたちの良い膨らみふたつ、柔らかなサーモンピンクに染まる先端。
くびれた腰から、ひたと閉ざされた秘部の佇まい、引き締まった臀部に至るまで。
首から提げた細い革紐と、その先にぶら下がる、娘の瞳と同じ色の石を残して、
靴も、インナーも残さず毟り取られるであろうことは、もはや、想像に難くなく。
■黒曜石 > みるみる間に、そう――みるみる間にだ。
この男が足を踏み入れ、そして、少女が目覚めてからまだほんの僅かな時間。
それだけの間に、たったそれだけの間に部屋は異界と化していた。
彩るのは娘の悲鳴、そして、押し出される名前。
「グリセルダ、わかった。」
耳にして、男がほんの少しだけ笑った。
彫像に入る切れ目のような微かなそれは
けたたましい不協和音の声に、あるいは娘の悲鳴と布の裂ける音の中に消える。
とろりと、膜が張ったような黒い瞳の彩がより深くなって
視線の中に映るのは、少女らしい、生娘らしい肢体。
薄褐色の肌に情け容赦なく絡みついていく触手、触手、触手。
人間の身体のどの器官よりも熱く、ぬちぬちと肌を嬲る粘液は粘ついて。
『生娘カ!?』『処女ダ!』『犯セ』『犯セ犯セ犯セ』
その裸身を見つめるのは無数の濁った眼差し。
少女ながら整った美貌の彼女ならば向けられたことがあるだろう、下卑た雄の欲望の眼差し。
娘の意志など歯牙にもかけずに、思う様に蹂躙して犯したい。
そういう欲動を濃縮し切ったような視線の群れ。
応えるように――インナーが、靴が食い千切れる。
そして、彼女の視線に映るのは、笑み浮かべる男の顔。
背中に感じるのはめきめきと顎のように開いていく祭壇
――ごぷり、そして祭壇が彼女を飲み込んでしまう。
導く先はきっと、もっと悍ましいところで。
■グリセルダ > 必死に名前を口にして、それが救いになると信じて、信じるしかなくて。
縋るように見上げた瞳が、男の顔に慈悲を見た、と思ったのは、
彼がほんの少し、そう、ほんの少しだけれど、笑ったように見えたからだ。
劣情、害意、獣欲、そんな得体の知れないものではなく、
確かに言葉の通じる、意志の疎通ができる、そんな、足掛かりのようなものを認めたからだ。
「―――――――― ぇ、…… ぁ 」
けれど次の瞬間、それが幻想に過ぎなかったと思い知る。
ローブも、下着も奪われて、がんじがらめに四肢の自由を奪われ。
恐ろしい囃し声に、眼差しに嬲られながら、不意に。
ぞ、ぷ――――――。
呑まれる。
沈む。
無力な小娘の細い肢体は、恐怖と絶望に彩られ強張った顔は、
ばくりと食われ、呑み込まれ、閉じ込められて、哀れな獲物と化した。
逃げ場はない、助けを呼ぶ術もない。
そこから先に待つものは、きっともっと、想像を絶する――――――――。
ご案内:「無名遺跡」からグリセルダさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」から黒曜石さんが去りました。