2021/08/17 のログ
ご案内:「無名遺跡」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 遺跡の中でも浅い層は地上の草木に浸食されて、そこから這入り込んだ水は遺跡の内部を徐々に穿ち、やがて流れを作って更に深部へと零れていく。外が雨ともなればその流れは一層増して、壁と天井で蓋をされたようになった内部は当然湿っぽい。
そんな場所はまた苔類や日陰の好きな植物の好むところで、遺跡内部で多様な生態系を展開している。

ぴたん、ぴたんと雫が滴る音が木霊する、遺跡のとある通路。すこし狭苦しいその中を、頼りなくカンテラひとつの灯りで進むエルフがひとり。
風が吹かないこの通路の空気は、不思議と外の陽気からはかけ離れた冷たさで、本来この湿気であれば旺盛に繁殖していそうな黴臭さもない。

(……こわ…)

かつ、かつ、と立てる靴音は半ばわざとだ。
カンテラの灯りがあるので気配を消す努力は今更だということもあるけれど
雫の音以外しない、暗く狭い通路を延々行くのはちょっと不気味で、せめて何か生き物らしい反応が欲しくて、靴音に驚いて時折逃げる生き物とか、いたらいいなあ、というためのもの。

しかし今の所、他の生き物の反応は感じられない。
地図によればまだまだ浅い層だから、強大な魔物などはいない筈だが…

「…幽霊とか、止してよねー……」

わざとおどけた調子で声に出してみる。そのまま笑い飛ばそうとしたけれど、口がひきつって半笑いで引っ込んでしまった。ゾンビなら殴ればいいけれど、幽霊はちょっと、アレなのである。

この通路を抜ければ天井が外まで抜けている場所へ出る筈。
その灯りが見えやしないか前方に目を凝らし、左手を壁に触れ、右手でカンテラを掲げて女エルフは進む。