2021/08/07 のログ
■ナラン > やがて空が夜明けに白み始める頃、遺跡の入口から女が再び外へと姿を現して
朝早い動物たちの声を聞きながら、街へと向かう。
多少足を引きずりながらだったかもしれない、果たして無事だったのか
成果はあったか、なかったのか――
ご案内:「無名遺跡」からナランさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > ――っはあ、っはあ。
荒い呼吸を繰り返し、どくどくと胸を弾ませながら目の前の敵と対峙し、
「せあぁぁ!!」
裂帛を放ちながら魔物の脳天に戦棍を振り下ろす勇ましいアタッカー――…かと思いきや、スタッフで威勢よくカチ込んでいる――ヒーラー。パーティで編成を組んで入ったダンジョンと化した遺跡だったが……、分岐点で魔物の襲撃に遭い後方にいたヒーラーは一行と引き離されてそのままはぐれてしまい。今は2階層辺りでゴブリンに囲まれて、奮戦していた。
先ほど迷い込んだこの狭い部屋にはゴブリンが数匹たむろしていて、倒さなければ前にも後ろにも進むことができず。破れかぶれ気味で孤軍奮闘。
不幸中の幸いか、ホブゴブリンやゴブリンロードなど強化タイプはおらず、数は多いがどうにかこうにか地道に倒すことはできていたが。
「っは、――っふう! んぁ…!」
無傷という訳にはいかない。打撲やら裂傷を負いながらも、斜めから躍りかかって来るゴブリンを蹴飛ばし、正面から飛びかかって来る一匹をスタッフの一撃で薙ぎ払い――一人ではさすがにかなり苦戦を強いられ。残り三匹となったところで、腕や足ががくがくと震えて来て、正直かなり――
「ツライ…!!」
汗を滲ませながら、それでも膝を折る訳に行かず、一歩前に踏み込んできたすばしっこそうなゴブリンにスタッフをスイングさせるが、避けられ。
「――っひ、っぐ……!」
肉薄されて右腹に棍棒の一撃を食らって身体を折った。
■ティアフェル > 腹部を強打されたが、相手は小柄なゴブリンであったので吹っ飛ぶまではせず、ただしかなり効いたようで、打たれた箇所を抑えて膝をついてしまっていた。はあはあ、と呼吸を一層荒くしながら脂汗を滲ませ。
「……やば…い……、これ……死ぬ……やつ……」
一撃を受けて明らかに弱った様子を見逃してくれる訳はなく、むしろ好機と猛追を仕掛けられ。数匹示し合わせたようなタイミングで一斉に四方から飛びかかって来られた。正面、左手、右手、と躍りかかられて、膝をついた体勢のまま咄嗟にスタッフを右から横薙ぎに大きくスイングさせ、二匹は悲鳴を上げて転がったが、
「や、いや、やだ……!!」
左側の一匹はそれに巻き込まれず脇から飛びつかれて引き倒され、揉み合っている内に後ろから新手が加勢にやってきて事態は最悪の一途を辿った。
「や、いや、やめてやめて……! 離、して…! いやああぁぁぁぁぁ!!」
一匹くらいなら捌けても後から二匹三匹と増えていくと負傷もあって、そのままゴブリン数匹に群がられて硬い石床に組み敷かれ、裂くような悲鳴が壁に反響し一帯に谺した。
ご案内:「無名遺跡」にムメイさんが現れました。
■ムメイ > (反響する声、それに応えるものはいない。 いっそ無慈悲な位にこの時、この場所の近くにはいない。
正確にはいないはず――だった。
『ああ――おちおち死んでもいられねぇ、ってのは相変わらずだな。
運が良いのか悪いのか、俺でもとんと判りゃあしねぇ』
まるで惚けた様な、それでいて楽しそうな声。
何処から響いているかそれこそ判らない声は、狭い部屋の片隅。
ガラクタと一緒に埋まっていた骨から響き
それが一瞬でヒトの形に組みあがって、肉を得て、服を纏う。
首を軽く左右に鳴らしながらゴブリン達を見て
「悪いな、ちょっと肩慣らしさせろよ」
あくまでも穏やかに、優し気にも聞こえる声。
同時に、群がっていたゴブリンが一気に『蹴り飛ばされた』。
ゴブリン達は壁に叩き付けられて、鈍い水音が響くことになる。
■ティアフェル > 腹に食らっていた一撃が応えて、4匹ほどまとめて群がって来るゴブリンをとても蹴散らせずに、ただじたばたともがき、両腕を押さえつけられたが、辛うじて自由になる両足で圧し掛かるゴブリンの顔面を蹴り上げて文字通り足掻いていた、その時――、
「………!?」
ガラクタに紛れた一角で、ほんの些細な変化が起こったのに最初に気づいたものはあっただろうか。
そこにいた小さな魔物たちと一人の人間が、そこに不意に混じった異質な存在に一斉に気づいたのは男性の声が響くと同時に圧倒的な力で小柄なゴブリン達が壁に同化するように叩きつけられた刹那である。
魔物たちがふっ飛んでいく残像を眼にし、次には一瞬にして身体の上に圧し掛かっていた重みが消え、何がなんだか訳が分からずに目を大きく見開き。
所々衣服が裂かれ、裂傷や打撲を負い、床に転がったまま反射的に〝蹴った〟と見えた足の主を探して首を巡らせた。
「な、に……?」
無意識に洩れた声はかすれて誰何とも独白ともつかぬ、およそ意味のない響き。
■ムメイ > 鈍い水音を響かせながら首をぐるりと回す。
何分ここ二年弱ほど「死んでいた」、そして起きなかった。
そうして蹴った相手が動かなくなったのを見つつ、いっそ穏やかにも見える笑いを浮かべて
「起き抜けは手加減出来やしねぇんだ、強いて言うならあー……運が悪かったって奴だ、済まんな」
そのまま彼女の前で足を止めると、ゆっくりと屈む。
歳の頃は二十歳――くらいだろうか? もしかしたらもう少し若いか。
かなり見た感じボロボロではあるが、生きているのは間違いない。
そのまま彼女の顔を見て、おう、と声を出して
「ソロでこんなところに入りこむもんじゃねぇぞ、嬢ちゃん?
この辺りは救出に来る奴も稀なんだ、俺みたいな変な奴位しかいないぞ?」
ほれ、と手を差し出す。 怪我はしているし状況も把握出来ていない。
けれども、彼女は生きている。 ならば、手を差し出す位は自分にも出来る。
笑いかけながら
「ほれ、茫然自失になる前に生きてるなら立ち上がった方が良い。
魔物なんてのは何処から来るのかさっぱり判らんからな、命は基本、一つしかないんだぜ?」
大丈夫か? と言う当たり前の言葉は言わない。
冒険者は生きてさえいれば基本『大丈夫』だ、死んでさえいなければ。
それを知っているからこそ、そんな声のかけ方をした。
■ティアフェル > 壁に張り付いたゴブリン達が壁の沁みになった直後、ぼたっと重力に従って落ちて、床に沁みに変わる。
まるでコバエでも払うかのようにあっさりと魔物たちを蹴散らした声の主。ガタイはいいが意外と若い。
年上ではありそうだが見た目ではそこまで年かさでもなさそうで。
床の沁みになったゴブリンへ向けてか、そのどこか鷹揚な笑みや口調はしゃあしゃあとした余裕を感じさせた。
やがてこちらへ、気軽に声をかけられては、一瞬びく、と肩が震えるが、
「お、おう……。
や……ソロじゃないんだけど……はぐれてしま……ぅ、っけっほ、ごっほ……、ちょ……先……ヒール……さしてね……」
彼の発した一声と同じ応答をぎこちなくしてから、答えかけて打撲が肺に響いて咳き込み。掠れた声を出してはのそりと上半身を大儀そうに起こし、転がっていたスタッフを握って、詠唱を紡いでは回復魔法を自らに施し。
衣服の汚れや裂け目はどうにもならないが、肌に負った傷は綺麗に消し去って、ふう、と息を吐き出すと、遅れて差し出された手を取り。
「――ありがとう! 自称変なお兄さん! 助かった! そして感謝してる! 猛烈にしている!
あと、乗りかかった船だと思ってこのままご同行をお願いできませんでしょうか! せっかく助かったところ単独で放り出されたら振りだしに戻って――死ぬ!」
差し出された手をそのまま、ぎゅっと握りしめて。ここで突っぱねられるとロストの末路しか見えないもので正々堂々ハキハキと救援を求めた。
■ムメイ > 打撲、裂傷に……まぁ、致命的な怪我は無さそうだが大分参ってはいるらしい。
死んでいる間に傷薬は風化してるのは間違いないから、さてどうしたもんかと思ったものの
自力でヒールした様子にほう、と声を出して
「お前さん……ヒーラーだったのか、それならはぐれた時点で入口まで戻れよ……」
何処か呆れた様な声音で彼女を見つつ、綺麗に怪我がなくなったのを見て頷き
そうしてハキハキとしながら救援を乞われれば、ややあってから頷いて
「ムメイだ、変な奴だとは自覚しちゃいるが流石にその呼び名はちょいと勘弁してくれ
同行は別に構わんぞ、久しぶりに地上に戻る予定はあったし」
そこまで言ってから、相手に視線を向けて
「ところでお前さん、ヒーラーではあるが神官ではねぇよな?
どうにも俺が死んでる間に運ばれて居た場所から変わっちまったみたいだから、きちんと方向を把握しないといけねぇ」
流石に遺跡で本性を出す気は無い。 そんな事をしたら崩落で埋まってしまう。
適当な亡霊を捕まえれば多分方向は大体わかるのだが……
思いっきり失念していたが、死んで暫くすれば復活するのが自分だ。
無論、彼女が大体どちらから来たのかさえ分かるのであれば苦労はしないのだが……思いっきり死んでいた、と口走ってしまった訳で。
■ティアフェル > 傷は癒せたが髪も服もぐちゃぐちゃで、あーあ、と溜息が零れる。死にかけていた直後に身だしなみが気になる辺りは冒険者特有の図太さで。
そして、呆れた声音に、むーと眉を寄せて自然と見上げる視座を起き。
「戻る道すがらの有様よー。まったく、肝心の仲間は助けに来やしないんだから当てにならないったら……この分だともう、連中だけ先に離脱してるわねえ……」
万一分離してしまったら即時離脱は基本である。他のメンバーも各々遺跡を出てしまっているだろう。運悪く深部に飛ばされてピンチに陥ってる間に大分時間が経ってしまった。
それでこの上、頼れそうな目の前の人物にまで見限られたらマジで死ぬ、と了承するまでこの手は離すまい、な勢いだったが。
粘るまでもなく承諾を得れば、ぱーと表情を明るませ。
「おっけ。ムメイさん! よろしく!
たーすかったぁぁー! 地獄にゴッドだわあ。
わたしはティアフェル。ティアって呼ばれることが多いかな」
なんて名前を聞いて握った手をぶんぶん上下に振りながらにこにこ上機嫌で口にするも、地獄に仏どころか、地獄に魔王、なんて冗談としても笑えない事実だった訳だが至って能天気に名乗ったりし。
「うん、神職ではないわ。よくよく混同されがちだけど、わたしは傷病の回復を担当しているだけで神の奇跡とは無関係。
…………? はい?」
こくこくと肯いて飽くまで単なる回復職だと肯定してたが、死んでる、と口にする不可解な言葉にかくりと小首をかしげて目を瞬き。何を云っているのか、と伺うような視線を投げかけた。
比喩的な表現として受け取るにしてもどうにも筋道が立たずに不可解な顔を隠さず。