2021/05/16 のログ
ご案内:「無名遺跡」にタマモさんが現れました。
■タマモ > ここは九頭龍山脈、その中でも、麓付近にある無名遺跡。
つまるところ、あれだ。
上級冒険者よりも、下級冒険者向けの遺跡、と言える場所である。
もっとも、だからと言って、必ず来るのが下級の者ばかりなのか、と問われれば、そうでもない。
時折、見過ごしがあり、意外な発見もある。
それを狙い、やって来る者も居れば。
…今、ここに居るような。
単に、暇潰しで着ている者も居るのだ。
「………む、むむむ…」
少女は、ある一室で唸っていた。
床に屈み込み、何やらやっている。
そこにあるのは、大量の砂。
なぜ、こんな場所に砂が?そう思うだろう。
この部屋、結構ところどころが朽ち、天井や壁のところどころが欠け、床は砂塗れ。
少女は、その砂を大量に集め…
棒倒しをしていた。
すでに、砂はぎりぎりまで途切れている。
少し砂を掻けば、棒が倒れそうな状態だ。
少女は、そこからどうするか、必死に考えていた。
こんな、遺跡のど真ん中で。
■タマモ > こっちか?それとも、そっちか?
ほんの僅かな砂の山と、そこに立つ棒。
右から、左から、角度を変え見詰めながら、少女は考える。
その姿は、普段とは打って変わって、真剣そのもの。
まぁ、こんな事に、真剣になってるなよ。
誰かがそれを見ていれば、そんなツッコミが入る事だろう。
「こっち…いや、ここから…それとも…」
しかし、そうして、ただ考えているだけでは進展はない。
今こそ、決断する時だ。
ゆっくり、ゆっくりと、手が左右から伸び。
その僅かな砂山の端に、指が添えられる。
ず、ずず、ずずず…その指が、同じくゆっくりと戻され。
その動きに合わせ、砂山の左右が削られてゆく。
ぐらり、ぐらり、棒が少しだけ揺れる。
ここで終わりか…いや、まだだ、この限界を、越えてみせる!
指先は、砂山の半分を越えた。
棒はまだ倒れない、この調子ならば…と、少女は、勝利に淡い期待を抱くのだ。
大丈夫、周囲から、ほんの僅かでも、邪魔さえ入らなければ。
変に、意識を逸らさなければ。
この一回だけは、勝利を迎えられる。
■タマモ > かたん、そんな折、部屋から離れた場所から、僅かな音が洩れる。
「………あ」
ぴくん、その音を、聞き逃す少女ではない。
耳が反応して揺れ、そして…
ぐらり、大きく棒が傾き…ぱたん、倒れた。
少女は、掻き切れぬ、そんな格好のまま、固まる。
視線は、倒れた棒に注がれたままだ。
少しの間、何とも言えぬ静寂が流れ。
ぎ、ぎぎぎ…少女の首が、ゆっくりと、音の立った方向へと、傾いてゆく。
ふらりと、屈んでいた身を起こし、そちらへと体も向ければ。
のらりくらりとした足取りで、体を向けた、そのほんの僅かな音が立った方。
そちらへと、歩み始める。
その表情は、邪魔された事に怒りを覚えるような、そんなものではなく。
かと言って、それを許すような、優しさを抱くものでもない。
そのまま、ふらふらと、少女の姿は、その部屋から消えていき。
その後は…
ご案内:「無名遺跡」からタマモさんが去りました。