2020/10/18 のログ
ご案内:「無名遺跡」にハクさんが現れました。
ハク > のそのそと遺跡の中程にある池の近くに張ったテントから出てきたハクは、あくびを噛み殺しながら魔獣避けの簡易結界を崩す。
それなりの値段のものであるが、長くつかったせいかついに楔が崩壊し、砂になってとさりと地面におちていった。
それを見てため息をつきながら、つぶやきを漏らしてしまう。

「今日でひとまず最終日、ということでござるな……」

袖の中にある宝珠に入れた何匹かの害獣討伐の証の数を考えて、若干の赤字であることに渋面を作りながら池で顔を洗う。
ふー、と息を吐いて宝珠から食事を取り出してそれを食べ終えると、抜身の刀を取り出し、
羽織を宝珠に格納してからそれを地面に埋める。
体に張り付く魔力膜のスーツの他、腰につけたいくつかのポケットがあるツールベルトと刀だけ、
という簡素な姿になると気合を入れて遺跡の入り口に潜っていくのだ。

「さて、せめてあと200ゴルド分くらいは稼ぎたいところでござるなぁ」

出費も考えて、トントンになるくらいの目標を軽く口にし。音もなく静かに遺跡の中に入っていく。
暗くなってきたならば、『灯火』の術を使って明かりを生み出し。
目標はそれなりに高額な賞金になる害獣か盗賊、もしくは売り物になる魔道具や魔導機械、財宝など。
それらを狙って昨日まで探索していた場所のさらに奥へと踏み込んでいく。

ご案内:「無名遺跡」に虹色の獣さんが現れました。
虹色の獣 > (――其処は、随分と住み易い場所で在った
天敵と呼べる様な存在も少なく、魔力に満ちている地
マグメールの森の中や、平原と言う自然地帯とは異なった性質では在るが
其れでも、多くの魔獣が住み着くだけの理由は在るのだろう

のそり、のそり、通路を歩く姿が、ひとつ
其の口に、何処かから拾って来たのだろう、何がしかの「物」を咥え
通路の奥、壊れた壁面の向こう側、ぽっかりと開いた窪みへと向けて。
其処に積み上げられて居るのは、様々な人工物――俗に言う、魔導具と呼ばれる物
中には壊れて仕舞って居る物も多いが、魔力を発するが故に、この魔獣の興味を引いたのだろう。

無論――決して、獣に扱える様な代物ではない。 ない、筈だ。
故に、其れ等は本来、人間にとっての宝の山、と言えるのだろう)。

ハク > 遺跡の中という場所であるため、無駄に口を開くことはない。
視覚のために小さな灯火を浮かび上がらせているものの、その光量はできるだけ絞り弱めの明かりにしている。
時折、蓄光性なのか発光性なのかわからないが弱い明かりを生み出すコケが生えているのを確認するが……
特にそれらは金になるものではないため、意識を取られないようにしつつ先へと進む。

――そして、何か硬いものが硬いものに当たる音を耳にして狐耳をピンと立たせながら足を止めて光を消した。
魔力皮膜1枚のみという姿だからこそ、その後急ぎ足で音の元へ向かっても足音がたつことはない。
刀も鞘を持ってきていないため、鯉口から音を立てる事もない。

やがて獣が魔道具を溜め込んでいる部屋の入り口にたどり着き、気配を消しながらそっと室内を覗き込む。
音や気配といったものは人間レベルでできる限り消している。
だがもし獣が人間レベルでは太刀打ちできない気配察知力を持っていたり、ハクの体に蓄えられた大量の魔力を察知できるならば――
すでに気づかれているかもしれない。
そのため、刀を握る右手はしっかりと力を込めていつでも戦闘できるようにしていた。

虹色の獣 > (咥えていた魔道具…或いは、魔石の類と言う可能性も在るが
いずれにせよ、魔力を帯びた代物と言うだけで、貴重な物では有ろう
其れが蒐集物の山の一つと化し、また獣は、のそりと振り返る
山を背にして、其の場へと腰を降ろせば、緩やかに尻尾を振りながら
まるで宝の守護者めいて、其の場へと居座る事だろう

窪みの中は、集められたモノによって、周囲よりも魔力の濃度が濃い
或いはそうして、自らにとって居心地の良い空間を創り上げて居るのやも知れぬ
と為れば――魔力と言う物自体に鋭敏な獣が、其の強大な魔力の気配に気づいて居ても不思議は無い
覗き込む視線の先、居るのは、虎や獅子に似た――されど、其れ等とは異なる生き物
額に埋め込まれて居る様な虹色の石は、光が放たれ無くば、輝く事は無いが
其処に、「居る」と言う事だけは、感じ取れる筈だ
同時に――覗き込んだ女を、雌を――見詰め返している、と言う事実も)。

「 ―――――――――――――― 」

(其れは、鳴き声か、其れとも唯の呼吸か
小さな音が響いたと同時、背後の山が一部崩れ落ちる
ぱらぱらと落下する魔石の一つが、硬い床面へと叩き付けられ、ぱりん、と割れた刹那
弾けた魔力が光となって、窪みを一瞬照らし出し
――女の姿も、そして獣の姿も、互いの視界に露わとする
王都にて、高額の懸賞金すら掛けられた、実態不明瞭の魔獣、或いは幻獣
其れが――女の、其の目の前に居た)。

ハク > 想定通りというべきか、既に気取られていた様子で部屋の中にいる獣と視線が交わってしまう。
じ、っと見つめ返してくる獣の姿に選択肢が2つ浮かび上がる。

その1、尻尾を巻いて逃げる。
重なった視線だけで、あの獣がある種の知性を持っている事は理解できる。
ここで引けば、おそらくあの獣は追ってこないのではないか。
そんな予感があった。
――だが、それでは再び遺跡の探索に時間を取られてしまうのは間違いない。
見れば尾をふる獣の塒には魔道具が山のように積もっている。
あのうち2つ3つほど頂戴できれば、今回の探索は無事黒字になる、という計算だ。
捨てるのはとても惜しい。

その2、交渉をする。
とりあえず話しかけてみて、反応を見るというパターンだ。
もし話が通じるような幻獣であれば、交渉次第で宝を分けてもらえる可能性もある。
――難点は、今交渉に使えるような何かが手元にない、という事か。
自分の体に蓄積された魔力を譲渡することで、とかそういう程度で交換できればいいのだけれど――

そう、考えて躊躇していた所で何かの音がし、瞬間光が室内を満たし――
そこにいた、虹色の獣の姿が。
最悪、体毛や爪、牙といった末端部分だけで500ゴルドになる『宝』の姿が見えてしまう。
そうなれば、もう選択肢は2のみ。
はぁ、とため息をついて覚悟を決めると刀を右手に握ったまま室内に入る。

「もし、言葉が通じるのであれば。
 おぬしの毛か牙か爪を分けてもらうことは可能にござるか?
 さらに言えば、その宝を分けてもらえると嬉しいのでござるが」

灯火の術を強めに使い光を生み出しながら、獣に向けて話しかける。
無論、飛びかかられたなら反撃をすぐに行えるように体の中の魔力を練り、高めながら。
むちゃくちゃな要望であるのは理解している。断られるのもまたやむなしだろう。
だが、詳細不明なかの獣。気まぐれなど起こしてくれないだろうか、という願望も強くまざりながら――
ゆっくりとそちらへ近づいていく。

虹色の獣 > (果たして、其の侵入者は如何言った行動を採るのか
其れを見定める様な眼差しに、敵意や害意こそ見えずとも
其れが獣である限り、知性の有無を把握出来ぬ限り、安心とは言えぬ物
雌の姿が、ゆっくりと明かりを灯しながら近付いて来るのを
特に動きも見せずに唯、見詰めていた、が――

――向けられた、ヒトの言葉を、理解して居るのか否か
僅かに其の瞳が、薄らと細められた直後――返答の代わりめいて
ゆらゆらと揺れていた尻尾が、突然鞭のようにしなり、侵入者の足元めがけて振るわれる

まるで警告めいた――お断りだ、とでも言うかの
精々足払い程度の一撃では在るが、そも、体格が違うが故に威圧感を伴うだろう
其の一撃を持って、相手が諦め立ち去るならば、其れで構わない
だが、もし、其れでも諦める様子が無いのならば、其の時は

――ゆっくりと、再び立ち上がる
今度は――周囲の魔力、其の色を変化させながら
交渉を持ちかけながら、隙さえ在れば自らを狙わんとする雌の、練り上げられる魔力に対して
明確に、害意を以て―――美しい音色の、咆哮を)。

ハク > 「で、あろうな」

足元を狙う尾の一撃を、わずかに飛び下がりながらため息をつく。
『宝』を無償で差し出すなど、どんな獣でもありえない。
獣でなくともそんな事はありえないだろう。
だからこそ、内丹に気を込めて大人の姿に変化を果たす。
身長が伸び、体の凹凸は顕著になり。
尾の毛量も増えてゆっくりとくねりながら、子供姿では大刀サイズであった刀を両手でしっかりと握る。

(まぁ最悪、食われたらそれまででござるしな)

ある意味不老不死化された事による悪癖か、あまり自分の命を大事にしなくなっている。
以前も一度獣に食われて死んでしまったものの、食い残し部分から再生を果たして逃げきったことがある。
体を守る魔力皮膜も薄手ではあるが耐刃性は高く獣の牙はよほどでなければ通さない。
最悪、前足部分だけでも切って持ち帰ろうという意思をみせて一気に獣の足元へと突進した。

虹色の獣 > (交渉は決裂――明確に戦闘の意思を見せた侵入者に対し
礼を尽くして出迎える様な寛容さは――少なくとも、獣には無かった
自らの居場所を、乱し害する者を排除するのは当然の事
鞭の様にしなる尾を再び、相手へと向けて構えたなら

――其の時、相手の姿に生じた変化
解放された魔力が高まりを見せ、先刻までとは比にならぬ圧となる
先刻までの姿でも、有象無象の人間種とは比較出来ぬ魔力を感じられたが
この姿はまるで――魔力の、坩堝。 それも、様々な色が混ざり合って黒を成す様な、混沌。
弱き魔獣程度ならば、其の変化だけで逆に気圧され、逃げ出すやも知れぬ

だが――唯一、女にとって其れが悪手で在ったのは
其の変化によって、より成熟した雌として、認識されて仕舞った事、だ。)

「――――――――――――!!」

(――女の突進に合わせ、再び尻尾が振り下ろされる。
今度は先刻よりも、威力を伴った一撃――そして、今度は尾の先端が
針の様に硬質化して、女の肌へ、傷を負わせんとする
防護被膜へと覆われた胴体部分では、或いは致命的な一撃にはならぬやも知れぬ、が

―――魔力の継ぎ目が、見えて居るかのように
尖った針の数本は確かに――女の、皮膜に覆われて居ない、其の首筋を掠めんとするだろう
そして、同時に香る筈だ。 ぼたり、ぼたりと毛の先端から滴る――蜜の如き雫の、香りが)。

ハク > 「はぁっ!!」

防御を考えない猪突猛進の剣。たとえ傷を負っても、再生すればいいという割り切りの剣。
四肢を踏みしめ戦闘態勢をとった獣に対し、腕の1本くれてやってもこちらも1本もぎ取るという意思を持ち。
鋭い刃――いやさ矢となってついには獣の足元へ。
内丹に込めた気により成長した体では、しっかりと地面を踏みしめ斬鉄せしめる一撃を刀に乗せて振るう事ができる。
だからこそ、振り下ろされた尾の一撃を切り上げる刀で――

「ッ!?」

断ち切れない。
鉄よりなお硬いその尾に驚愕の気配をにじませてしまいながらも追撃の刀を振るうために足を踏み出し――
しかし、その足は地面をしっかりと踏みしめる事ができずに地面に転び、倒れてしまった。

「な、ぁ、っっ……!?」

首筋にわずか食らった尾の一撃。その先端に滴る雫はクスリに弱い体をしっかりと侵食してしまい、
麻痺毒により地面に倒れ伏してしまうのだった。
なんとか、解毒を――と思うものの、口元もうまく回らず、簡易的な回復術を使う事ができていない。