2020/09/12 のログ
ご案内:「無名遺跡」にダミアンさんが現れました。
ダミアン > 「ここは、どこでしょうか?」

僕は上下左右、石だらけの場所を歩いています。
ギルドで見つけた依頼で、遺跡の調査をする部隊に参加しました。
元々安全と言われている外側部分を調査する間の護衛の一人として雇われていたのですが、
奇妙な紋章の床石を踏んだ瞬間、僕一人だけどこかに飛ばされてしまいました。

明りも乏しく、暗い中を槍の穂先を戦闘に歩いています。

埃臭く、静かな場所です。
僕の足音だけが響いています。

こんな所で他に誰か居るのでしょうか?
それに、どこから出られるのでしょうか。

ダミアン > やがて、探索をしている間に外の光が見えてきました。
どうにかこうにか外へ出ることができたようです。

ご案内:「無名遺跡」からダミアンさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  ――血のような緋色に染まって沈んでいく斜陽に照らされて――

「お願い…!!」

 叫ぶように請う言葉が飛び散る。額に玉のような汗を浮かせ、頬は鮮血でまだらに汚したヒーラは、遺跡の出入り口付近で地面に仰向けに倒れて意識を失っている冒険者、そのとめどなく滴る血に塗れぱっくりと空いた傷口を必死に抑え込みながら。

「死なないで!死なないで死なないで!! お願い、お願いだから…!!」

 懇願するように掠れた声は引き裂かれて上げる悲鳴に似た響きで、夕間暮れの風景を一層、緋く染めるようだった。

「……ヒール…!! ヒール…、ヒールヒール!」

 スタッフを翳し詠唱を紡いで、叫ぶように唱えても魔力が枯渇していて、生まれた癒しの光は斜陽の弱弱しい光にさえ負けて、すぐに消えた。ポーションももうない、魔力も尽きて、薬も使ってしまった。出来ることは止血くらいしかないが、清潔なガーゼすらなくなっていて衣服の切れ端を破いたものを傷口に押し付けて無理矢理抑えることしか打つ手がなくて。

 後は、徐々に光の薄れて遠のいて行くような目、その光を引き留めるように叫んで、頬を叩き、心臓に刺激を与えて呼吸を吹き込む。

「死んじゃだめ、死んじゃだめ!死んじゃだめ!! ねえ!!お願い…!!」

 こんな切迫した声は、いくつこの遺跡に木霊したのだろうか――

ティアフェル >  ――暮れかけていた陽が没する。天頂は藍に染まり、グラデーションを描きながら地平線の周りだけ惜しむように僅か、不気味なくらいにはっきりとした茜色が滞っていた。

「ああ……っ」

 その時、絶望に満ちた声が短く散った。
 必死に蘇生を試みていたが――薄く灯っていた微かな生命の光は、ふっ、とまるで燃え残った熾火を吹き消すかのように最後の瞬きすらなく静かに失せた。

 駄目だった、何も出来なかった。わたしは役に立たなかった。

 叫ぶように呼びかける声もぐっと胸が詰まった瞬間のように停止し。

 辛うじて打っていた脈も、細い呼吸も、生きていることを示す何もかもが消え去っているのが確認され、その代わりまだ凝固仕切らない血がほたほたと流れ続け、死亡という現実が横たわる。

「――――!!」

 声にならない慟哭が響き、鼓動が止まって冷たくなっていく胸に顔を埋めて悲鳴のように絶望の声を鳴り渡らせた。
 遠く、果てまで届きそうなそれはしばしの間、聞こえていたが。不意にスイッチを切るように唐突に鎮まり。

「……ごめん……わたしじゃ、連れて帰ってはあげられない……」
 
 嗄れて掠れた声はぽつり、と呟いて開いていた瞼を閉じさせる。
 ずっしりと重い遺体となった人の身体をここから自力で運んでやることは不可能だ。残して行くしかない。せめて遺品を。所持品や身に着けていた品物の中から選んで、ひとつふたつ取り外す。そして、水筒の水で濡らした布を使い血で汚れた顔を拭いてやり、手を組み合わせる形を取らせ、ひと時祈りを捧げる。

 もう、これ以上は何もしてやることがなくなった。

 虫の声が際立って聞こえる早秋の天を仰ぐと、輝きを増した月とパラパラ散らばる星々が見える。
 そんな中で、惚けているのは無防備なことと云えただろうがその時はそう判断する余裕が欠けて――何かが近づくまで分からないような状態で佇んでいた。

ご案内:「無名遺跡」からティアフェルさんが去りました。