2020/07/30 のログ
ご案内:「無名遺跡」にイーゴリさんが現れました。
■イーゴリ > 「―――ふむ。これも使えそうかね。」
とある遺跡の深部。
小柄な体躯が壁際にしゃがみ込んで漁っていた。
余り人の手が入っていない路を選んで潜ってきたお陰か、既に銀色が想定していた以上に収穫は得ている。
手にした小さめの金属物を持ち上げ、光源に照らして見せ。
「目立つ傷無し。異音無し。後は魔力を流して動くかどうか、だが―――…」
遺跡の中には数多の仕掛けが施されている。
それも、現在進行形で増えているのだ。
外見に多少の経年劣化は見えるが、そう言う風に見えるように作られた物、と言う可能性も捨てきれない。
その場合、用途の不明な物は仕掛けられた罠と連動している事も多々ある。
「悩ましいのう…。試してみたいのう…。」
■イーゴリ > ただの魔導機械であれば儲けが増えるだけだし、罠であればそれはそれで。
自ら危険に飛び込む必要は無いとは思うが、此処暫くは碌な働きをしていなくって体が鈍っているのも確かで。
「まあ、いきなり爆発、なんぞ面白みのない事もせんじゃろうし。」
念の為魔力で生み出した水の膜を体の表面に纏わせる。
黒布の下でうっすらと口角を持ち上げながら手に持った金属へと魔力を流し始めて。
■イーゴリ > 魔力の受容器が満ちたのだろう。流し込んでも押し戻されるような感覚。
それから暫くの間、何かしらの反応がないか、軽く振ったり指先で弾いたりと衝撃を与えてみるが、うんともすんとも言わない。
「なんだ、壊れていたか。」
つまらん。等と不服そうに呟いて体に纏わせていた水の膜を解き――刹那、持っていた金属が先程まではなかった隙間から細い管を出して手首に巻き付いてくる。
予想外の動きに双眸を見開けば、反射的に手首に巻き付く金属を壁へと打ち付け。
ぎぃん、と鈍い音が長い通路に響き渡る。
然し、巻き付いた金属にも、壁にも傷はひとつも付いていないようで。
「……ッ、」
■イーゴリ > 石壁の様な通路の癖、響いたのは金属同士のぶつかる音に嫌な汗が肌を伝う。
やらかした。間違いなくやらかした。
がっちりと手首に巻き付く金属はすっかり姿を変えてブレスレットか何かの様相を整えている。
眉間に皺を深々と刻みながら、自身の周りを先程と同じように魔力で生み出した水で包み込み。
「……遊びすぎたか。」
がりがりと後頭部を荒く掻く。
魔力を流し込んだ物を対象に、その者の魔力を抽出する為の起爆剤と言った所だろうか。
自身を包み込む水球に弾かれてはいるが、壁からも管が伸びてきている。
ここら辺一帯を破壊してしまえば装置も動きようがなくなるだろうが、それをすれば遺跡が崩落しかねない。
「面倒ではあるが、大人しく上に戻るかねえ。」
他者の妨害がなければ、水球で身を守ったまま地上に戻るのはそう難しい事ではない。
もう少し遺跡漁りに勤しみたかったが仕方なし。
少々気落ちした様子で来た道を戻っていくのであった――。
ご案内:「無名遺跡」からイーゴリさんが去りました。