2020/07/18 のログ
ご案内:「無名遺跡」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > ――――かつ、と硬質の音が響く。
遺跡の地下、どれくらい潜ったろう?
(半日くらいは、経っている気がする…)
高い天井からぶら下がる、樹の根なのか蔦なのか果たして判別しがたいものを見上げて、その合間にぼんやり光る苔を見上げる。
だだっ広い、過去は地下都市の広場だったのかも知れないその場所は
今や床から天井を突き抜けて、おそらく地上へと伸びている樹々で様々に分断され、足元にある筈の石畳も根太やら苔やらが覆って特有の香りを放ち、もはや薄暗い森深くの様相とそう変わりが無い。
「…違いは、動物の気配がない事かな……」
足音を空間に響かせながら、やや当て所なく進む赤銅色の肌の女は
翠の視線を足元に落とし、それからまた前のほうへと戻す。
明るさは宵間近の夕刻くらい。
多少気を付けなければ足を取られる虞はあるが、不自由なほどではない。
(――――目的が此処で無ければ、いちど引き揚げようか)
王城の学者からの頼まれごと。
遺跡に生育するという青く光る蔦が欲しいとのことで、いつものように物見遊山ついでに遺跡に踏み入れたものの…
此処に至るまで出会ったのはアンデッドばかり。
未だ武器に沁みついている気がする『におい』に聊か辟易して…正直戻る口実を探している。
「せめて、洗えるような場所かなにか、あれば良いのにな…」
片手を聳える樹に触れて呟きながらも、薄闇に目を凝らして女は地下広場を進んでいく。
■ジナイア > 天井の光る苔はひとまず灯りを失う様子は見えない。
薄闇であるのも『光る蔦』を見付けるには好都合なはずだ。
(――――今回で済ませた方が、いいんだろうな)
次に来た時、この光る苔たちが天井以外の床や樹々にまで繁栄してしまっていればややこしい事になる…
元々何か報酬を渡されている頼まれごとではないものだから、果たすか果たさないかは維持の問題だが。
「――――…」
仕方ないな、と自嘲の笑みが熟れた唇に浮かぶ。
せめて、言い訳が立つくらいには探すとしようか。
―――――そうして女が地上に戻ったとき。
果たしてその手に戦利品はあったのか、否か…
ご案内:「無名遺跡」からジナイアさんが去りました。