2020/06/20 のログ
エゼル > はっとして、口元を押さえた。誰も居ないのに辺りを見回してしまうのは、癖。
丁度、足元の石床に視線が向く──そこには、よく見れば一か所だけ汚れが薄い箇所がある。
ひょいと脚を伸ばして、そこを踏み越える。
スイッチ式の罠の可能性があった。踏んでみないとその懸念が現実だったかどうかわからないが、
流石に試してみる気にはならない。
ダンジョンでは一般的と呼べる注目点は、女にも分かっている。配達人の必須スキルではないにせよ。

エゼル > 散漫になりかけていた注意力が戻って来れば、
よし! と一つ小さく気合を入れて、配達を待っている依頼人の元へと、小走りに駆けていく──

ご案内:「無名遺跡」からエゼルさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  ――たまにこうして、顔も知らない相手と待ち合わせることがある。

「そろそろかなー…?」

 午前中、遺跡の入口で、人待ち中のヒーラーが一人。今日はここに潜る予定で、相方となる誰かを待っていた。
 冒険者ギルドの方から今日空いている前衛を一人送り込んでもらってその人と遺跡の入口で待ち合わせて内部に潜る。
 とにかく手の空いている人が来るということなので前衛職の何某かということしか分かっていない。半ば賭けのような二人編成の簡易チームだ。
 静まり返った石造りの遺跡は地下が何層かの構造になっているようで本日はまあ、無理のない程度に探索するつもり。何せ二人だけで挑むのだから無鉄砲な行動は命取りになりかねない。

 装備を軽く確認してスタッフを握った右手を下ろし、左手は腰に当てて周囲を見回し。

「開けてびっくりな人が来ることもあるけど……誰か来るか結構楽しみ」

 案外知った相手か、名前も聞いたことのないような冒険者か、まったく予想はつかないが――このぶっつけ本番的編成はなかなかスリリングで個人的には面白い。

ティアフェル >  相手に寄っては思っていたより下層まで潜れるが、逆に浅い場所で済ませなくてはならなかったりする。まあ、それはそれ。
 少々雲の差す蒼穹を仰ぎ、午前中のまだ涼しい風を受けて目を細め。忘れ物はないかとウェストバッグを開けて中を覗き込み。

「ポーション類に解毒剤、麻痺に催眠……包帯、ガーゼ、軟膏、油薬……
 水筒お弁当ドライフルーツ飴ビスコッティ、チョコにマシュマロ……」

 前半はともかく、後半が浮かれたラインナップとなっていた。お菓子がやたら詰め込まれている。空いた箇所にしこたま詰め込んできた。待っている間に取り出した飴玉をひとつ口に含んだころころと舐め転がす暢気な人待ち。

「あまぁ……甘味は大事ー……――って、っうぐっ?!」

 至って能天気に飴を舐めている最中、不意に遺跡の中から轟き漏れて来た獣の咆哮のような轟音に驚いた弾みでまだ充分大きさを残した飴玉を詰まらせて、どんどんどん、と胸を叩きもがき苦しみなう。
 まだ何も始まっていない内からセルフ危機に陥った。

ティアフェル >  しばし、胸を叩いて苦悶していたがどうにかして喉に詰まった飴玉を吐き出すと、死ぬかと思ったーと大きく息を吐き出して、ダンジョンのゲートに手をついて呻いた。

「っはあ、っは……油断した~……ダンジョンの入口で死んでる場合じゃないから……。ダンジョンに潜る前から、お家を出たその時から冒険は始まっているのよ…ッ。気をしっかりしゃっきり、根性据えて――」

 気合を入れるようにぱんっ、と両手で頬を叩いてモチベーションを復活させ。えいえいおー、と拳を振り上げる本人は至って真面目だったが――緊張感のないことおびただしい。

「さーて、まだかなー……? 今の見られてないよねー? 来てたりしなかったよねー?」

 一人漫才状態と化していた光景。もしも派遣されてくる前衛さんが見ていたら回れ右しちゃうかもしれない。いや、それは待って。ここまで来てマジで勘弁して。と冷や汗を掻きながら改めてぐるーと周囲を見渡して確認作業。

ティアフェル >  まーだかな、と待ちぼうけヒーラー。さっきの光景を見ていて帰宅を選択されて結局待ちぼうけたまま終わってしまったか、それともしばしして待ち人来りか……。

 冒険はまだ始まらない朝のダンジョン前だった。

ご案内:「無名遺跡」からティアフェルさんが去りました。