2020/04/06 のログ
ご案内:「無名遺跡」にプリシラさんが現れました。
■プリシラ > 長閑な草原の只中に、ぽかりと空いた地下の遺跡へ続く穴。
ぼんやり歩いていた己がまんまとそこへ嵌り落ちて、どれだけ時間が経った頃か。
――――ふ、と、意識が浮上した。
落下時にあちこちへ拵えてしまった傷が、一斉にひりひりと痛み始めて、
一気に涙目になりながら、小さな呻き声を洩らす。
起き上がろうと身動ぎ出したものの、頭が重くて眩暈までする。
苔生した岩肌の上へ掌を滑らせてみたが、少なくとも手の届く範囲に、
愛用のロッドは見当たらず――――
傷の癒える気配が無いのも、痛みが引かないのも、
守護の力を宿すロッドが、地上に置き去りであるからなのだが。
そのことに己自身が気づくのは、未だ先のことになりそうだった。
何はともあれ、今、一番気になるのは。
「こ、こ……一体、…どこ、なんでしょう……」
その、一言に尽きる。
ご案内:「無名遺跡」にルヴィエラさんが現れました。
■ルヴィエラ > (――其処を通り掛ったのは偶々の事
とある場所へと向かった、其の帰り道、最短距離ならばまっすぐ帰れば良かろうと
馬を草原に走らせるなぞと言う、雑な所業を要求しては、籠の中でのんびりと座って居たのだ、が
――ふと、籠を止めさせる。
草原のど真ん中、野盗でも居れば襲う絶好の機会になりかねず
御者は思い切り渋った物の、ならば此処までで構わないからと、先に帰らせて仕舞い。)
「――――――……さて、この辺りかな?」
(――御者が立ち去って仕舞った後、周囲を見渡して歩き出す
まるで何かを感じ取って居る様に、近付き、見つけたのは大きな竪穴
移籍へと続くのだろう、その穴を、少しばかり覗き込んだ後で
ふわり、と、羽根が堕ちるような速度で、穴の中へ飛び込んで行けば
――さて、階下に居る娘の所まで、どの程度の深さが有るだろう
そして、娘にとっては、何かの気配が、頭上より近づいて来るのを――随分と早くから、感じ取れるかも知れぬ
其の身に流れる半分の、淫魔の血筋が――ざわつくような、感覚と共に)。
■プリシラ > 地上に空いた穴からは、遠く陽光が差し込んできていた。
けれど、天翔ける翼は疎か、歩く以外の移動手段を持たぬ身は、
漸く上体を起こせても、ただ、途方に暮れるばかりである。
せめて、ロッドが手許にあれば。
そう考えて、淡い光だけを頼りに、周囲へ視線を巡らせ始めた時だった。
首筋が、背中が、冷たい指先でなぞり上げられた時のように――――
否、もっと内側から、ざわりと戦慄き粟立つ感覚を覚える。
「っ、―――――… っ、」
刹那、唇を衝いて出そうになった声を、危うく飲み込んで息を詰めた。
傷つき血の滲む掌で、震える口許を覆い隠しながら目を伏せる。
深呼吸をひとつ、意図してゆっくりと――――吸って、吐いて、それからやっと。
伏せた瞼を持ち上げ、光の差す方を何気無く振り仰げば、
そこに、軽やかに舞い降りてくる男の姿が在り。
「ぇ、……… え、っ…………?」
今度はぽかんと口を開けて、重力の存在を無視したその姿を、凝視することになるのだった。
■ルヴィエラ > (ゆっくりと、全身を流れる血液が熱を帯びて行く様な
其れは彼女にとって、表現し難い感覚、では有るだろう
そして、其の感覚はきっと、次第に強さを増して行く
彼女が頭上の気配に気づいたなら、其の存在の傍に、件のロッドが浮いているに気付けるだろう
そうして、穴から地下の空間へと、ひょい、と入り込めば
彼女の目前に降り立ち、一度周囲を見渡して。)
「――――――やぁ、御機嫌よう。 ……無事…とは言い難いが。
如何やら、重い傷では無い様だね。」
(――そう、発した声音自体は、余りにも気易い物であったろう
けれど、其の瞬間に――其の声音が、彼女の身体に纏わりつき
奥底にまで響き渡り、浸透する様な――そんな、感覚へと陥るやも知れぬ
向ける笑みこそ、柔和で穏やかな物ではある、けれども
一歩、彼女へと踏み出す、其れだけで
彼女を取り巻く空気が、濃密な、甘さを帯びるかの如くに)。
■プリシラ > その感覚は、己にとって、全く未知の部類だった。
例えるならば、普段は気にも留めずにいたものが。
肌の内側を流れる、血流、と呼ばれるものの存在が、やけに熱く、生々しく、
愛撫にも似た甘やかさで、微細な血管の隅々までも、なぞり、擽り始めたような。
名状し難い、もっとはっきり言えば、得体の知れない、気味の悪い感覚である。
残念ながら己は、その感覚と、頭上から現れた男性との因果関係に思い至る程、敏い性質では無かったが――――。
「――――ぁ、……それ、わたくし、の」
訳の判らないものからは、出来れば距離を取っておきたい。
けれども男の傍らに、見慣れたロッドが浮かんでいるのを認めれば、
思わず、無防備に呟いてしまった。
僅かな隙、それこそ、呼吸ひとつ分にも満たぬ程の――――その、間に。
まるで、見えない糖蜜の海に、首まで浸されたような感覚に襲われる。
傷の痛みが熱い痺れに変わり、四肢がゆっくりと脱力してゆき、
男が一歩、こちらへ踏み出した、それだけで――――
「ぁ、――――― だ、め、……いけませ、ん……!」
来ないで――――と、絶叫することだけは何とか堪えたが。
空気の流れにすら肌を嬲られるようで、己は無意識に、己が身を両腕で掻き抱く。
上気した頬、潤み始めた眼差しには、未だ、恐怖の色が深く。
踏み込まれることを、近づかれることを、触れられることを――――
理由も定かで無いのに、必死で拒もうとしていた。
■ルヴィエラ > (浮遊するロッドの所有権を彼女が主張するなら
その様だ、と、小さく呟いて、また一歩。
全身に傷を負って居る其の身を、抱く様にして守ろうとする姿を
静かに見降ろしながら、片腕が、そっと娘に伸べられる
果たして、其の指先は振り払われるだろうか
或いは、拒まれる事無く、其の頬へと触れる事が叶うだろうか
何れにして、触れて仕舞えば、きっと其れだけで
其処から伝う熱が、或いは――波が、彼女の思考を、理性を、脳裏を
すぅ、と、白く染めて行くかに、染み込んで、伝って。)
「―――――……先ずは、何れにしても、傷の手当てをしなければね。
……此処では少々適さない、もう少し、奥へと行こう。」
(朽ちた竪穴、周囲を苔が覆う中よりも
遺跡とは言え、建造物である筈の奥へと向かえば、多少整って居る筈だ、と。
――伝えて、そして、叶うなら。
其の身体を腕の中へと捉えて抱き上げ――連れて、行こうと
其の先に何が待ち受けるかも知らぬ遺跡の奥へと、彼女と共に、消えて行こうと――)。
■プリシラ > 己が身を抱き締めた腕が、指先が、弱々しく震えている。
こうして相対しているだけでも、纏いつくような熱感が全身の力を奪い、
ともすれば意識すら危うく奪われかねない状態に陥っていた。
伸ばされた腕を恐々と見つめ、ふるりと身を震わせつつも、
「ひ――――― っ、ぁ……ぁ、ああ、ぁ………!」
逃れようと顎を引き、上体を仰け反らせたものの、稼げた距離はほんの僅か。
直ぐに男の指先が、戦慄き強張る頬へ辿り着いてしまう。
―――――直後、堪え切れずにか細い悲鳴を上げたのは、最後の抵抗か。
肌の内側に、身体の芯に、頭の奥に、――――男の、存在が沁みる。
一介の混血児に過ぎない己には、その熱は、あまりにも強烈過ぎた。
ふつ、と途絶えた意識、その場へ再び己が倒れ伏してしまうよりも早く、
伸ばされた男の腕が、この身を抱き捉える。
意識も無い儘に、―――――駄目、と、もう一度呟いた気がするが。
脱力し切った身体では抵抗も叶わず、囚われ連れ去られてしまうことになる。
遺跡の奥、日の光も差さぬ闇の涯。
入り込んでしまった己の運命を握るのは、その男、ただ一人と―――――。
ご案内:「無名遺跡」からルヴィエラさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からプリシラさんが去りました。