2019/11/15 のログ
ご案内:「無名遺跡」にジェイさんが現れました。
ジェイ > 石造りの狭い通路に足音が響く。
数ある遺跡の中のひとつ。初心者の冒険者が挑むような場所だ。
そこの奥深い階層、そこを、歩いていた。
左側には壁、右側には深い深い地底湖。
一休み――とでもいうように、立ち止まって。
地底湖に右手を浸すと、そっと水を掬って飲んだ。
吐息が、ひとつ零れ落ちる。

――遺品を、探して欲しい。
依頼してきた老婆はそう言った。
商家の生まれに逆らい、家を飛び出して冒険者になって
そして此処で朽ち果ててしまった孫の遺品を探して欲しいと。

「まったく―――迷惑な話だな…。」

老婆に対して告げた台詞と、まったく同じ台詞を独り言にして呟く。
よく似た祖母と孫だ。自分のエゴを人に押し付けても何とも思わない辺り。
尤も、報酬は前払いで多めに貰ってはいるので、とやかく言える立場でもない。
帽子を片手で抑えて、視線を暗い迷宮の先に向ける。
手がかりをもって彷徨っている他の冒険者でもいないか。
或いは、件の孫を屠った魔物でも棲息していないものか、と。
その辺りに転がっていた冒険者の遺品を拝借するほど不真面目にはまだなれなかった故。

ジェイ > 故に、吐息をひとつまた零す。
他者のエゴの橋渡しをするのがこの仕事。
そう知っているが故に、歩き出す足音は、躊躇いなく奥を目指していって。

ご案内:「無名遺跡」からジェイさんが去りました。