2019/11/06 のログ
ご案内:「無名遺跡」にルチアさんが現れました。
ルチア > 「ぃ……た、……たぁ、っ………」

失敗した――――。

ぬるぬる、ぐしょぐしょ、崩れかけて苔生した石畳の上に四肢を投げ出して仰臥し、
頭上高く僅かに覗く外の光らしきものを眺めてひとりごちる。
あの光がつまり、己が落ちてきた穴であることは明らかで、ここは多分地下遺跡のどこか。
幸いにも人間より身軽に、頑健に出来ている身体が致命的なダメージは回避させてくれたものの、
ろくに受け身もとれず落下してきたのだから、それなりには痛い。
時間をおけば回復はするだろうけれど、今すぐには立ち上がれそうになく―――

荷物も、杖も、一緒に落ちたのか、それとも地上か。
少なくとも、手の届く範囲には見当たらなかった。
涙目で顔を顰め、苦痛を堪えてそっと息を吐き――――

「どう、しよう……あそこまで、登れるとこなんて、あるかな……」

まさかこんな得体の知れないところで、ひっそり人生に幕を降ろすのでは、なんて。
そんなことまで考えて、込み上げてくる嗚咽を噛み殺すのに必死だった。

ルチア > ズキズキと全身を支配する痛みが、次第に遠退き始める頃。
代わりに訪れたのは、抗い難い睡魔だった。

己を回復させるために、何より必要なのは休息である、ということか。
どことも知れぬ暗い場所で、意識を手放すのは怖いことかも知れないが――――

程なくして、娘の意識は闇に沈む。
場違いに健やかな寝息が、遺跡の片隅に響くことに―――――。

ご案内:「無名遺跡」からルチアさんが去りました。