2019/06/20 のログ
ご案内:「無名遺跡」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > 「……これ、か」
九頭龍山脈、その尾根に穿たれたような、山深い場所に開いた遺跡の入口。
そこを抜けて暫く―――途中、ヒトならぬ気配をやり過ごしながら進んで、やがて通路の横にまたぽっかりと空いた、何か怪物の口のような横穴の前。
大人が2人も並べば狭いくらいの回廊で、古代の魔法なのか何なのか、薄明かりがぼんやりと天井に灯っている。
その回廊の壁を崩すように、回廊よりも広く、大きく口を開けた横穴の先は、打って変わって自然のそれとしか思えない、暗さと湿っぽい空気が漂ってくる。
王城で知り合った植物学者に頼まれた、珍しい種類の苔の採取。
物見遊山半分、軽い気持ちで引き受けたものの。
(……思ったより、辛気臭い道行かもしれないな…)
薄闇に翠の瞳ばかりが目立つ、黒髪に赤銅色の肌の女は、その熟れた唇に苦笑とも、諦めともつかない笑みを浮かべた。
■ジナイア > 洞窟のその先を覗き込む様に、回廊から少し身を乗り出す。
片手にしていた小さなランタンを、穴の向こうへと差し込むが、穴の向こう、奥ヘは僅かな光しか届かない。
どうやらすぐ先で、穴自体が少し下の方へ落ち込んで居るようだ。
「………」
穴の奥から…僅か、風が吹く。
翠の双眸が僅か、細められる。
この先…抜けた『向こう』が、あるのかもしれない。
■ジナイア > 律儀なつもりはないが、口約束とはいえ、何も試みないというのは性分ではない。
もしこの先、抜けた所にまた見知らぬ景色が広がるかも知れないならば…
それを確かめるためだけでも、進んでみる価値はある。
どちらにしろ、物見遊山のついでだ…
片手のランタンを翳すようにしながら、一歩踏み込む。
靴の下で硬い岩盤と砂が噛み合う音が、低く、奥へと響く。