2018/06/10 のログ
ご案内:「無名遺跡」に影時さんが現れました。
影時 > ――ただただ、仕掛けを凝らせば良いわけではあるまいに。

巷でいう冒険者と同様の生業に手を染めていれば、定期的にこの手の場所に潜ることは鍛錬として含まれる。
死ねば終わりだ。死して屍を拾うものなし。されども死中に活ありともいう。
強敵との邂逅、生存も敗北も総括して生き残ってこそ、得るものがある。
だがしかし、どうだろうか。今回潜るこの遺跡の具合は少々どころか、非常に七面倒なことこの上ない。

「……毒針は云うに及ばず、落とし穴、落とし天井、不可視の鋼線に魔術師殺しの毒霧――嗚呼、数えるのも面倒臭ぇ」

ぴちゃん、と。何処かで微かな水が滴る音色が聞こえる。
苔むした石壁と天然洞窟を加工したと思しい天井や、無加工の岩肌が見える中を闊歩しながら埃に塗れた外套を叩く。
防毒用の鼻から下を覆う黒い覆面に隠れた口元も何時に増して、辟易したかの如く歪む程だ。
気を抜けば、愚かな侵入者を地獄に叩き落そうという仕掛けが多い癖に、魔物の類が見当たらないのは。

「下手にうろつかせると、引っかかっちまうから……かァ? ったく」

きっと、恐らく。そういうことなのだろう。暫し歩けば天井の高い空間へと続く。
まるでホールじみた処を見遣りながら、一先ず小休止を得られそうな風情に小さく溜息を零そう。

影時 > 恐らく、このフロアにも何某かの仕掛けがあることだろう。
安全と認識できるのは踏みしめ、何の変化もないことを認識できる己の足元位である。
今までのこの道程を思い返しつつ、ホールの入り口から入って右側の陰の位置の安全を確かめ、小休止のために用いる。
その場の石床に胡坐をかいて座り込み、腰裏の雑嚢から水筒と手製の携行食を入れた袋を取り出す。
俗に兵糧丸と呼んでいる類のものだ。必ずしも旨いものではないが、嵩張る荷物は邪魔になりかねない以上、最低限の活力確保は必要だ。

――覆面をずらして一口。よく噛んだ上で呑み干し、口を水で濯ぐようにして含み、一息。

「……俺ァ、何か竜だか何やらの類が出ると聞いて潜ってきたんだがな。外れだったか?」

求めるのは、強敵と言える何かとの遭遇と手合わせ。
ガセだったかもしれない。そんな認識を過らせながら体内の気脈の流れに意識を遣り、呼吸を整える。