2018/01/13 のログ
■ギィギ > 此処は無名の遺跡と呼ばれる遺跡でも発掘され尽くした初心者向けの他と比べて比較的安全だと言われている浅い迷宮。
時折冒険者以外が踏み込んでの探検ごっこや希少な薬草を採取する者達さえ入り込んでくるそんな場所ではあるが、今宵は神の気まぐれかモンスターらしいモンスターが姿を見せていた。
――地上に半ば露出しており天井などあってないような物で、人間の膝丈程度の高さの名も無き草達が生い茂る、迷宮……よりも遺跡群が立ち並ぶフィールドと呼ぶ方が判りやすい場所をその件のモンスターが這いずり回っているのだが、夜空の月明かり程度では見え辛く、カンテラや松明などの明かりでよく照らして目を凝らさなければ発見する事すら困難で、耳を澄まして這いずる音を聞き分け、この領域から立ち去らなければ、どうなるか想像に容易い、そんな状況になっている。
不幸にも何も知らずにギィギと呼ばれるこの半透明な紫色の粘液タイプのスライムがいる領域に入り込んでしまう人間は居るだろうか?
ズル……ズルルル………ズズ……ズルル………
狩猟者は獲物を求め彷徨い這いずる。
風が吹き、草花を揺らし、木々が枝同士をすり合わせ、不気味な音を奏でるこの場所に新たな「音」が加わるかは誰にも判らない。
――だが彷徨い這いずるモノは「音」を加えるべく、生存本能を満たし、種を繁栄させると言う単純な目的を果たす為に草木を踏み倒し、時折体内に取り込んで最低限の栄養にしながら、獲物になりうる存在との遭遇を求めていた。
■ギィギ > ギィギが這い擦り進んだ道に存在していた草花はギィギがもたらす気まぐれか、それとも体内に内包する様々な毒素の効能か、成長が促進される草もあればホロホロと灰の如く崩れて薄紫色の粘液に飲み込まれ栄養と化し消えていく……。
だから這いずるような残痕がある場所もあれば無い場所もあるが、ごく稀に這いずり残した粘液がきらりと輝く場所もある。
ただ、その後は本当に少なく、故に今宵のこの遺跡にはギィギ以外に同族も魔物も居ない……筈で、ギィギと名称の付けられたスライム族の1匹の独壇場となるのだが、如何せん原始的な生物である。
繁殖への欲望は腐るほどあるが、其処を棲家やテリトリーにするという意識は無いのだろう。
だから何か「音」がする者に遭遇するまでただただ草花の上を土の上を這いずり進む事しかしない。
――だがそんなギィギにぶつかる存在があった。
草花に混じり聳え立つ大きな岩である。
溶解する粘液を滲ませる身体も石には弱く、溶かす事はできないが、ギィギは岩の表面に身体を擦りつけ、ずるり、ズルリと土ではなく岩の上を這いずり上がり、這いずるだけではなく、獲物に飛びかかれるように待機する様子を見せた。
夜空にか輝く星星や月に照らされる領域、そこに転がる岩のひとつ、ギィギが登った岩だけが草や地面と違って粘液体の滲ませた粘液で輝き、あたりに其処だけが異質に映って見えるだろう……。
■ギィギ > 獲物に遭遇できなかった事はギィギは岩の上で仮死状態に為る事にした。
全身の感覚器に意識を向け、周囲の様子を嗅覚で触覚で確認をしながら、意識は静かに闇の奥底へと沈んでいくのだった。
――だがもし誰かの気配があれば匂いがあれば1滴の水からでもスライムは甦るだろう、だから今はその時を待ちわびて……。
ご案内:「無名遺跡」からギィギさんが去りました。