2017/12/26 のログ
ご案内:「無名遺跡」にジョアンナさんが現れました。
ジョアンナ > 地底に広がる遺跡の一角、滑るように蒼く凪いだ地底湖の畔。
微かな衣擦れの音を連れて、蒼白い人影がゆらゆらと、幽鬼の如き足取りで水辺を進む。

腰より長く伸びた、淡紫の長い髪。
蒼白い陶器の肌、表情の希薄な面に、暗く焦点の曖昧な眼差し。
纏うドレスの白は花嫁の装いのようにも、死に装束のようにも見える。
実際、恐らく元々は、其の両方を兼ねたものであったのだろう。
―――――漂い歩く女の頭にはもう、そんな記憶も残っていないけれど。

ずるり、ずる、り。
ふたつの紫水晶が無意識に探し求めているのは、あたたかい血潮の流れる生きもの。
出来れば活きの良い雄が良い、絞り尽くしても枯れないような、瑞々しい生き物が望ましい。
飢えも、渇きも未だ、然程では無いものの――――機会があるのなら、勿論、満たされたかった。

ご案内:「無名遺跡」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > たまには本業に精を出してはどうだろうか。そう、宝探しだ。
そんなことをギルドの人間に言われ、男もまたその意見に納得し。
男は、無名遺跡の中へと足を踏み入れていた。

「つっても。この辺りはもう調べつくされちまってるかなー」

そう深くもない階層を歩きながら言う男。ある通路で、何か違和感を感じる。
壁をよくよく調べれば隠れたスイッチがあり。ソレを慎重に押せば……。

「……へぇ」

目の前に現れたのは、美しい地底湖であった。隠し通路の埃のつもり具合から、人がそう入っていない場所だとわかり。
男はその美しさに惹かれるようにゆっくりと湖へと近づいていくが。

「ん? ……だれか、いるのか?」

何かが。聞こえたような気がした。気のせいかもしれない。
男は一度腰を低く落とし、周囲に気を配る。いつでも、どんな類の行動でも取れるように、だ。

ジョアンナ > ―――――求めるものは、若くて、瑞々しい、躍動感に溢れる生きもの。

ある意味、この場所はそんな女の希望を、容易く叶えてくれる場所だった。
自信に満ちた、生気漲る冒険者たち。
難を言えば、此処へ辿り着くよりも前に、惜しくも力尽きてしまうモノも、
少なからず居る、ということだろうか。

けれど今夜は如何やら、此処まで生きて辿り着くモノが居たようだ。
足音で分かる、息遣いで分かる、漂う気配で知れる。
恐らくは其れなりに、熟練した冒険者―――――そして、瑞々しい、雄。
とうに鼓動など忘れた筈の心臓が、歓喜に跳ね躍るようだった。

「………こんばんは、勇気ある御方。
 此処で、生きた殿方に御逢いするのは、随分と久しぶりですわ」

逃げも隠れもせず、ゆらゆらと髪を、ドレスの裾を揺らしながら。
アメジストの瞳が捉えた人影を目指して、女は一歩ずつ距離を削る。
血の気の失せた顔を、血の色を映した唇を、嬉しげに綻ばせさえして。

セイン=ディバン > そもそもこの無名遺跡は、その広さたるや凄まじく。まだ全容解明も出来ていない。
そのくせ、階層ごとにトラップや魔物のレベルはハッキリと区分されていたりするものだから、駆け出し冒険者からベテラン冒険者まで。
腕試し、小遣い稼ぎからガッツリ財宝ゲットまで様々な目的の人間が訪れる、いわば登竜門でもあるのだ。

「……しかし。こんな隠し通路があるとはな」

地底湖の美しさに感心しながら男は言う。どうにも、このルートは財宝の匂いはしないが。それも突き当たりまで行けば変わるかもしれない。
そんなことを考えていたのはほんの僅かの時間のみ。
何者かの気配を感じ取れば、男は戦闘体勢に移行したが……。

「……ふ、ん? これはこれは。また珍妙……いや、奇妙な出会いだ。
 遺跡の奥で、こんな美人さんに出会うとはな」

現われたその何者かを目にし、男は口の端を吊り上げ、笑う。
落とした腰を引き上げ、真っ直ぐ立つと。懐から愛飲の細巻を取り出し、吸い始め。
近づいてくる相手の姿を、まじまじと観察する。

「こんばんは。お嬢さん。こんな所にいると危ないよ。
 それとも……生きた男に何か用事なのかな?」

相手の気配。探るまでもない。明らかに冒険者然としていない格好。
血の気の無い顔、表情。どう考えても、普通の人間ではないだろう、と。男は推理する。
だが、男は武器も構えず、ただ相手の近づくのを見るだけだ。

ジョアンナ > 女はいつも、いつまでも、此処に居る、という訳ではない。
けれど、此処は陽の光も差さず、寒すぎも暑すぎもせず―――――
ふと気づけば戻ってきてしまう、常宿のひとつ、のようなものだった。
何より此処は、血気盛んな雄と行き会える確率が非常に、高い。

相手が警戒しようと、戦意を露わにしようと、女には其れすら、
得難い精気の発露と感じられてたまらないのだが。
其れでも、やはりどちらかと言えば―――――攻撃されず、出来るだけ近くへ。
叶うなら触れられるぐらいまで、触れて貰えるぐらいまで、近づかせてくれる方が嬉しい。
漂う細巻の独特の香りにすら、物珍しげに小さく鼻先を蠢かせて。

「―――――危ないこと、なんて、何も、ありませんわ…?
 だって、今、此処に居るのは……わたくしと、貴方、だけ、ですもの。

 ……其れとも、貴方……わたくしに、恐ろしいことをなさる…の?」

かくん、と小首を傾げる仕草は、まるで童女のようでもある。
紫の瞳を緩く瞬かせ、相手の顔をぼんやりと見つめる儘―――――ふ、と。
思い出した、と言わんばかり、胸元で両手を軽く打ち合わせて。

「そう、……ええ、そうでしたわ。
 ねぇ、貴方……お名前を、伺ってもよろしくて?」

肌の色は蝋のように白く、唇ばかりが紅い、誰が見ても不自然な有り様だが。
腐臭の代わりに漂うのは、甘く、滴るような花の香り。
相手が押し留めなければ、互いの距離はきっともう、腕を伸ばせば届くほどに近い筈。

セイン=ディバン > 男にとっても、この遺跡は都合のいい場所であった。
踏み込みすぎなければ、腕試しや訓練にもってこいの場所だからだ。

とはいっても、この遺跡で人間に出会うなんて稀だし。
そもそも、ヤバ事慣れしてなさそうな女性に会うなんて普通ならありえないことで。
だからこそ、男はその異常さを楽しむように。警戒を解いている。

「ははは、そうかね。壁一枚向こうには、魔物や罠がごろごろしてるのに?
 まぁ、確かにここにいるのはオレとキミだけだな。
 ……さぁ。どうかな。オレとしては、女の子相手に『酷いこと』をするのはキライじゃねぇが」

不思議な雰囲気を漂わせ。近づいてくる女性。
振る舞い、言葉、仕草。幼い様でもあり、また大人びても見える。
酷く強い違和感。男はクスクスと笑い。

「あぁ、そうだな。オレとしたことが迂闊だったぜ。
 セイン=ディバン。冒険者だ。よろしくな。
 お嬢ちゃんのお名前も聞いていいかな?」

尋ねられれば、何を隠すでもない。素直に名乗り、相手の名前を逆に聞く。
近くで見れば、やはり肌の色白さは普通ではない。なのに、唇は鮮烈な赤で。
鼻に触れる、甘い香りを堪能しつつ。男は。
腕を伸ばし、相手の頬に触れようとする。

「名前もそうだけど、正体も教えて欲しいかな。
 それともその辺りは秘密なのかな? 可愛らしいフロイライン?」

相手が拒まなければ、その肌に触れると同時に。
男は、そんなことを単刀直入に質問した。