2017/09/17 のログ
ギィギ > 部屋の中心部にある宝箱以外スライムの食料は無いように見えるが、実は其処まで何もないわけではない。
偶然迷い込んでくる他のモンスター、室内の部屋隅に生えた水分を蓄えたカビ、それに宝箱の中身から滲み出す魔力、それらが複合的に存在しているのでギィギにとって現状の問題点は一つしかない。

――それは繁殖と成長。
苔の水分で成長は可能であるが、それだけでは足りない。
繁殖をするには温かな肉と適度な湿り気が必要であり、それに該当するものは何一つ存在していない。

だからギィギは餓えている。
その二点の大事な本能を満たしたい、喰らいたいと、言葉は無く意思を伝える手段も無く、代わりに体内に内包した金属同士を擦り合わせ

ぎぃ、ぎぃ……ぎぃ…………

ともの悲しげにしかし何処か怒りを感じさせる耳障りな音を響かせ、訴え伝え吼える……。

ギィギ > どれだけ時間が経っただろうか?

先程まで室内に木霊していたスライムが這いずる音は今や天井より滴る雫の音に代わり、生き物の気配が全くと言っていいほどに消えている。

代わりに部屋の中心部に鎮座している宝箱の鍵穴が粘液で酷く汚れていた……。

ご案内:「無名遺跡」からギィギさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にギィギさんが現れました。
ギィギ > ギィ、ギィ……ギィ………ギィ………

無名遺跡に点在する迷宮の奥底で、金属が軋む音が鳴り響く。
朽ちかけた歯車の悲鳴かモンスターにより引き千切られる鎧の音か、何の音かは判り辛いがともかく恐怖を煽るにふさわしい音だろう。

耳を澄ませば聞えるその音の源は迷宮の奥深く、からではなく、比較的上層階の既に人の手により散々漁り尽くされた迷宮にある「とある隠し部屋」から響いているようで、音を辿れば比較的簡単にその隠し部屋に到達する事は出来るだろう。

その入り口は一見してただの壁。
壁ではあるが、不思議な事に壁を通して音が通路へと漏れている。
其処に手を翳せば岩壁の感触はあるが、体重をかければ石壁を透過して隠し部屋の中に入る事は出来るだろう。

――但し入る事はで来ても出られる保障は何処にもない。

不可思議な隠し扉の向こう側は永続的に燃える松明に囲まれた薄暗い部屋である。

そして部屋の中央にはぼんやりと明るい松明の明かりに照らされて豪華な装飾がちりばめられた人一人入り込めそうな巨大な宝箱が鎮座しているのだった。

注意深く見ればその異常さにきがつくだろう。
その巨大な宝箱は松明の輝きにぬらりと何かに濡れてるのか不気味に輝き、鍵穴からは透き通る紫色の粘液がとろとろと滴り落ちている。


中はスライムの亜種、毒を生成し蓄えるギィギと呼ばれる魔物が巣食っていた。

ご案内:「無名遺跡」にルリシアさんが現れました。
ルリシア > 「......」

今宵の寝床を求め足を向けたのは無名遺跡。
起床時、太陽の光を避けられる屋根のある場所を求め、遺跡内を彷徨っていたが、どうやら道に迷ったらしく、遺跡内を行ったり来たり。

やがて辿り着く上層の階。
既に人間によって完膚なきまで制圧された空間。
松明などで照らされた通路を壁伝いに進んでいく。

奥へ、奥へと。
何処からか聞こえる不快な金属音に警戒しながら、ある壁の前へと。立ち止まり、音の正体がこの壁の向こうから聞こえるのを確信する。
何やら仕掛けが施された隠し部屋か。進むべきか控えすべきか。
しかし、隠し部屋となれば人目に触れることなく安全に夜を過ごすことができる。
低俗の魔族ならばあしらうこともできるだろう。
意を決して、少女は壁へ体重をかけた。

ゴゴゴと、重い音を立てながら視界に現る隠し部屋。
松明に照らされた空間の中央に怪しく佇む宝箱。

恐る恐る、その足を部屋の中へ踏み入れる。
宝箱に近づき、異常がないかと手を伸ばそうと───

瞬間、開いていた隠し部屋と外を通ずる仕掛け扉は大きな音を立て、閉まった。

ギィギ > 宝箱が宝物を内包するように、隠し部屋は来訪者を内包する為に重たい音を響かせ、僅かに埃を巻き上げた後に壁にピタリと嵌り、隠し部屋と外界を隔てる唯一の出入り口は閉じると、扉の輪郭に合わせて赤い光線が走り、隙間無く扉と壁をつなげてしまう。

その重たい音、隠し部屋に入り込んできた侵入者が動く気配と微かな熱に宝箱の中に満ち溢れていた透明な紫色の粘液はボコボコと鈍い音と共に沸き立ち、直にも装飾の施された宝箱を内側から押し上げると、宝箱の蓋はいとも容易く開き、ガコンッと音をたて開いてしまう。

隠し部屋に備え付けられた唯一無二の松明の灯りに照らされるのは宝箱の中身、武器や硬貨ではなく並々とあふれんばかりに満ちている透明な紫色の粘液、その中には硬貨だった物の成れの果てか金属片が、剣や何かの名残か魔力が残っているのか、革の鞘などがふよふよと浮いている。

――そして、あふれんばかりの透明な紫色の粘液、スライムはごぽごぽと宝箱の縁から隠し部屋の床へと垂れ落ちて、宝箱を中心にじわじわと広がっていくのだ。

獲物を捕らえる為に……。

ルリシア > 「…なっ、なんだ、これは…!?」

この部屋から出る唯一の退路を断たれ、赤い光線と共に塞がれる扉。
それに気づいた時にはすでに遅く、宝箱から覗く紫色の液体。
音を立て、開かれた中身に少女は物言わぬ狂気を感じ、一方代へ後退する。

しかし、床へと身を投げた物体は自身を捉えようとこちらへ接近。
身構え、その場に転がっていた木の棒を手に握り、松明の光に照らされた不気味な物体へ叩きつけようと手を振り上げる。

ギィギ > 狙いを定めて木の棒を振り下ろせば間違いなく透明な紫色の粘液にしか見えないスライムの体に命中する筈である、がゼリー状のスライムと違い身体が粘液であるスライムは物理攻撃を受け付ける事はない。

もし命中したとしても身体が飛び散り、飛び散った身体が一番大きな個体に集まろうとするか、若しくはそれ単独で動き始めるだろう。

だがスライムも知性は低いとは言え危険を察知する能力も折角の獲物を逃げないように捕らえるだけの知性は持ち合わせている。

己と対峙している獲物が人間と思わしき少女が手をわずか後退し、手を振り上げる行動に対して、スライムは外見から想像できないくらいに素早く、身体の表面に瘤を生み出すと、瘤を伸ばし触手へと代え、まずは危険性の高い棒を持った少女の手首に硬く弾力を作った透明な触手で絡み付こうとすると、ほぼ同時にもう片方の手首も別の触手で捕らえて、直に宝箱の中へとその身体を引きずり込もうとする。

――豪華な宝石や金で飾られた蓋の開いた宝箱。
少女の体躯をすっぽりと納めてあまる大きな空箱は満ちたスライムにより巣と化し、その中に収めるべき宝を求めてまるで口を開いているかの如く、静かに佇んでいる。


「………ィギ、ギギ、ギィギ…………。」

隠し部屋にまた耳障りな悲鳴が鳴き声が、まるで勝利宣言の如くに室内に響いた。

ルリシア > 「…くっ、は、離せっ………触るなッ」

手に握った木の棒は振り下ろされることなく、少女の手は振り上げたまま、液体生物が作り出した触手によって固定される。見た目に反し、手首をつかむ力はとても強く、少女のひ弱な体では振りほどくことさえ困難。
さらに、もう片方の手へと伸びる触手。躱すこともできずに、少女は両腕を完全に拘束されてしまう。

そして、強い力で引っ張られ、眼前に開かれた宝箱。
中身を埋め尽くす気色の悪液体生物を目に、少女の顔から血の気が引いていく。
こんなところに引きずり込まれればどうなるかなんて考えなくともわかる。しかし、少女が危険を感じた時にはもう遅し。
地で踏ん張っていた少女の足は浮き、そのまま箱の中へ引きずり込まれてしまう。

部屋に響く生物の嬌声と、少女の悲鳴。

ご案内:「無名遺跡」からルリシアさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からギィギさんが去りました。