2017/01/20 のログ
ご案内:「無名遺跡」にシーゲイザーさんが現れました。
シーゲイザー > 脆弱が故に群れ集うシーゲイザーと呼ばれているヒトデの形に良く似た星型をした肉塊のモンスターがいる。
身を守る甲殻も無く、敵を切り裂く爪もなく、あるのは獲物の不意を付く為に物影に隠れられる技能とトカゲの尻尾のように千切れて惑わす触手と……個体同士を強固に結びつけるテレパシーのようなものだけ、初心者や中級者が経験を積むのには生命力の強さからして丁度いいレベルのモンスターである。
切りつけても中々朽ちないし、腐るほど数もいる、がそれでも冒険者の狩りの対象にならないのはシーゲイザーの持つ一番厄介な能力の所為である。
それは異種族の胎を借りて行う繁殖能力、同族同志では子を為さず生命力の強い他の個体の胎を使い、母体と己の遺伝子が融合した子を産ませ、数を増やす女性に忌み嫌われている特殊能力だ。

――今宵は無名の遺跡に蔓延るそんな魔物が浅い階層にある隠し部屋であり宝物庫の中で獲物を待ちわびているか、狭い室内に無数に散らばる硬貨と空の人一人入っても有り余るほどに巨大な蓋のされた宝箱の陰に隠れて、硬貨をガリガリと音を立てて貪り喰らっていた。
その取り込まれた硬貨はシーゲイザーの栄養になるのは勿論の事、喰らえば喰らった分だけその肉塊のあちこちに硬貨を形成する金属がボコボコと出現し、特に硬貨と相性が良い個体だったのか、硬貨を貪れば貪っただけ硬貨の材料である金がその身体に球体になって肉塊に不釣合いは輝きと彩を添えている。

不純物は全て肉塊が栄養とし、浮き出した金は純度を増している、見るものが見ればその金の純度の高さは一目瞭然であり、狭い隠し部屋であり宝物庫を照らす魔法のトーチの輝きに照らされヌラヌラと艶めかしくも煌き、何も知らぬ冒険者を肉塊の魔物の方へ誘っている……。

シーゲイザー > 隠し部屋というだけあって非常に狭い。
フルプレートメイルを着込んだ人間が4,5人入れば部屋は一杯になって身動きもままならないだろう、そんな狭さだった。
故に部屋の中央にどんっと鎮座する巨大なふたが閉じられた宝箱の威圧感はあるし、床一面に転がる金銀銅貨、魔法の掛かった武器等は非常によく目立つ。それを天井から吊るされた永続光源の魔法が掛かったトーチが照らしており、室内はまるで「宝物庫」ですと言わんばかりである、が上級者であればそれは罠であり、無名の遺跡を知っていればわなの有る部屋だと感づくだろうか、しかし残念ながら設計ミスであり「罠」ではない。
罠ではないが、今宵はその厄介かモンスターの巣窟になっていて、硬貨を齧りガリガリと不気味な音を立てる個体以外にも魔法の短剣を齧る物や宝箱を齧ろうとしている個体が硬貨に混じり蠢いている。
だがそれを隠してしまうのはエサである硬貨であり、天井から照らされている魔法の灯りが硬貨に反射して眩く輝くその光であった。

もぞ、もぞもぞ………
硬貨の下で肉塊が蠢き、積み重なる硬貨が音を立てて滑り落ちて床に広がり、その硬貨の反射光が輝きが室内を照らし、次第に硬貨に粘液が纏わりつき、その輝きに淫靡な艶さえも含まれていく。

石畳の床に硬貨、それが粘液にまみれ始めれば床の滑りやすさは通常の比ではない、其処に足元よりも入室者の視線を部屋の中心に鎮座する巨大な宝箱が誘う……罠、立派な罠と呼んでもいい状況下、隠し部屋であるこの部屋に誰か迷い込んでくるのだろうか?
ヒトデの形をした肉の塊達はそれを心配する事もなく、只管に金属を齧る貪り続けるのであった。

シーゲイザー > ガリガリ……と木霊する音にネチャネチャと混じる重たい水音、部屋に侵入者がいなければ魔物達は只管に食事し身体を強化していく。
身体を鍛え強く出来る事が出来ない魔物は喰らって強くなるしかないのだ。

――ヒトデの形をした肉塊は貪る、只管に只管に只管に……

ご案内:「無名遺跡」からシーゲイザーさんが去りました。