2016/10/25 のログ
ご案内:「無名遺跡」にジャークさんが現れました。
ジャーク > 無名遺跡の探索―――にしては、随分とオーバーな兵団が、
煩わしく遺跡を荒らしながら爆進している。
魔導砲を持つ砲兵、大規模な爆発の魔術を操る魔導兵。
それらに囲われて、やけに(本人曰く優雅)悪趣味な人力車に乗りふんぞり返っている男、それが腐敗役人のジャークである。
堂々と粉砕された岩壁を押し退け、遺跡の隠し部屋や広間を捜索している。

「ここもハズレかね。……まぁ良い、どんどん壊せェ!はっはっは…!」

彼は、実にイライラしていた。
と言うのも、何度もタナールへ赴いては魔族の娘を狩るのに失敗、
兵力を大きく削られたり、兵団の思わぬ不甲斐無さや、予想外の強敵に遭遇したり。
このところ、良い事がないのだ。

そういうわけで、ストレス発散の見物と、
また、済んでいる魔族の探索を兼ねて、冒険者にも魔族にも大迷惑な優雅な狩りの時間が始まった。
出来れば魔族を狩りたいが、奴隷商を営むジャークとしては、魔族だろうが、人間だろうが、結局なんでも良かったのだ。
旅路で気に入った女を見つければ、ストレス発散の一環として戦利品としてテイクアウト、そんなつもり。
相変わらず捕らぬ狸の皮算用というか、考えは軽い。
はてさて…なにかあるだろうか。

ご案内:「無名遺跡」にシエニィさんが現れました。
シエニィ > 武器や魔法による大規模破壊を受け、轟音が響き土煙の立ち込める遺跡空間。
その中から、宙に浮かぶ褐色の球がふわりと音もなく漂い、ジャークさん達一行の目の前へと姿を現した。

「……っは、はっ……はくちゅっ」

構造が大きく変わった遺跡に甲高いくしゃみの音を響かせると、その褐色の球が反動でくるくると回転を始める。
それが四肢を拡げ、小さな人型のシルエットを取り戻すと、やがて無様な宙返りも止まる。

「……ちょっと、ちょっとー? 大事な大事な古代の遺跡になんて真似してくれちゃってるわけー?
 ボロボロじゃないのー? ここに棲んでる魔物とか動物とかの気持ち考えたことないのー?
 べつにニィはここに棲んでるわけじゃないけどー、めっちゃうるさかったんですけどー?
 あと埃もすっごくてクシャミまで出ちゃったしー!」

褐色の幼女である。サイズは人間にして3~4歳程度か。
しかしてその顔はくりんと丸いラズベリー色の目を見開き、ピィピィと饒舌に早口に何かをまくし立てている。見た目通りの年齢ではないと思われる。
目の前に大勢の人間が武器や魔法を構えていることをまったく気にしていないかのように……しかし一定の距離を保ちながら、土埃を避けるように宙に浮いている。

ジャーク > 「……な、なんだこれは。魔族の…幼体……かね?」

砂煙の中に浮かぶナニカ…何か声がする。
ちっちゃい人型、幼くて甲高い、ともすれば耳に痛い様な声である。
女らしい声を聞いて期待して……あげて、落とす。
ジャークはガッカリした様に人力車で肩を落とす。

「……嗚呼、なんという…ことだ。」

流石にこんなに幼い魔族の娘を連れて、その、どうだというのだ。
幾等なんでも、少し…アレだ。テイクアウトするにしてもこう、あるだろう、もっとこう。
脳内でリフレインするとりとめのなさすぎるジャークシンキング。
歓喜の笑みから溜息まで。この悪人、表情豊かである。

「……喧しい、片付けろ。幼女趣味のある者は好きにせい。
私は……そいつはいいので。探索を続けたまえ。」

パッと手を振って移動を促すジャーク。
残念ながらなのか、幸運にもなのか、シエニィの容体はジャークの射程外距離であった。
一団はまるきりクレームに取り合わず人力車と共に進行していく。
勿論シエニィの言い分等聞いていなかったように破壊を繰り返して真っ直ぐ直進するのだ。

『大臣さまに代わって答えよう!
古代遺跡であるだとか、大事なものである等と言う事は我々の知ったことではない!
無論動物や魔物も知ったことではないのだ!
故に、クシャミが出ただのうるさいだの貴様の言い分も知ったことではない!以上ッ!
これ以上喚き立てれば始末するッ!否、しなければならぬッ!!』

モブっぽい目に一本黒い線が入ってそうな衛兵が、
威勢よくクレーム対応。

シエニィ > きらびやかな人力車にどっかと座り込む男、あれがこの蛮行の首謀者か。
睨むでもなく、どこか好奇にも満ちた視線をそちらに向けるが、そんなシエニィの目に飛び込んで来るのは相手の落胆の仕草。

「……なによー! ニィのお昼寝を邪魔しておいて、ずいぶんな挨拶ね!
 それに、ニィは幼く見えるかもしれないけどー、中身は結構オトナなんだからっ♪」

頬を膨らませながらプニプニの肩を貼る、その仕草からは成熟した雰囲気など微塵も感じられないだろう。
とはいえ、相手が『その気』でないのならば、去っていくその男を追いかけるのはこの状況では得策ではない。
多勢に無勢もいいところである。

「だいじん……? ふぅん、えらい人なのかな? こんなくっさーい遺跡の奥までたいへんね」

部下と思しきモブがまくし立てるのを、褐色幼女は空中で大股を開きながら、口をへの字に結んで聞いている。

「はいはい、わかりましたよぅ、だいじん様。ニィは死にたくないから、邪魔もしなーい。
 ここはもうボロッボロのモワモワで居心地悪くなっちゃったから、どっか別のとこに行くー。
 ……でもぉ、これだけはお約束だから言っておくよ~。
 あんたたち、こんなこと続けてたらたらきっとバチが当たるんだから! えーと、古代文明とかの!」

ここまで言い放つと、褐色幼女はくるりと宙返りし、短い脚でモブの頭頂をげしっと蹴り下ろすと、その勢いで遺跡の天井の闇へと消えていった。

ご案内:「無名遺跡」からシエニィさんが去りました。
ジャーク > 「……ぐむむむ。
あれか、この……そう、魔族は人の年とは違う齢を経ると言うが、そういうことかね。」

頭を悩ませる様に唸る悪人。しかして、奴隷商は内面より外面を重視するのだ。
申し訳ないながら、ジャーク一向には射程圏外であった。

『そうだぞ!大臣様は偉いのだ。……まぁ、そうだな。
ぶっちゃけ本人が随伴する必要はないと私も思う。ここだけの話だが。
少々出過ぎじゃないかねえ、とな。秘密だぞ!』

ヒソヒソ声を小さくして頷き、答えるモブ衛兵。

『物分かりが良くて助かるぞッ!だが我々はこの行いを止めん!強いられているんだッ!

……あべしっ!』
「はっはっは…しかし、言われてみればあまり居心地がいい場所ではない、な。
どれ、程々に破壊をすれば、我々も引き上げようかね。」

どういうわけだか立派な衛兵の癖に幼女の長くもない足先で頭を蹴り下げられる。
割合情けない姿は一同の笑いに包まれた。
気付けばふわっと浮かんで、先の幼い容体の魔族は消えてしまっていた。
古代文明等のバチは信じるわけではないが、遺跡の空気も飽いてきた。
もう少し、壊して探せば、引き上げさせようか。

ジャーク > 暫く、遺跡の中で砲撃の爆轟と、魔術の破壊の音が響いたことだろう。
けれども、結局のところなんという成果もなく、
率いた兵団の火力や戦力と比べれば、あまりにもお粗末な戦果しか得られなかったとかで。
不機嫌な貴族を背に、とぼとぼと帰還するジャーク一同。
これにまた、優雅な貴族を自称するジャークは、頭を抱えて憤るのだが、それはまた別の話である。

ご案内:「無名遺跡」からジャークさんが去りました。