2016/07/18 のログ
ご案内:「無名遺跡」にジンさんが現れました。
■ジン > ここは無名遺跡の深い場所、足音も静かに歩くのは変わった仮面と和服に身を包む男。
少し前に浮かぶ灯りで通路を照らしながら、先を進んでいた。
馬鹿狐…もとい、今の主に言われ腕試しにと寄越されたのだ。
何も無ければつまらんが、何かあれば面白いものだと…当たり前の事な気がしないでもない。
「………詰まるところ…これはハズレという事か」
結構深くまで来ているはずなのに、あったものと言えば半歩程度で避ける事が出来る物理的な罠だけだった。
これでも疾風迅雷の動きの前に里では敵う者無しと言われたものだ、この程度でどうしようというのか。
さて、何枚目の扉だろう?そう考えながら、通路の先にある扉の前に立つ。
■ジン > 扉に手をかけ、ゆっくりと押し開く。
ぎぎ…と軋んだ音を立て、そう力も必要なく開いていく扉。
そして、同時にかちり、とほんの僅かな音が耳をついた。
「………」
無言のまま音の方へと視線を向ければ、そこに見えるのはこちらへと向かい放たれた数本の槍だ。
…いつも思うが、こういった罠の製作者というのは本当に上手い物を作るもの。
必中と言う訳ではないだろうが、向けられる攻撃は気付かなければ確実に当たる位置へと狙いが定められている。
だからこそ、避けるのが容易いのだが。
飛来する槍の穂先の向きと、槍自体の角度を確かめ、その狙いが頭と心の蔵と腹の辺りだと見極める。
後は簡単なもの、狙いがそこであるなら半歩横に動き体の向きを横へと変えるだけ。
それだけの動きで、槍は体を掠め後ろの壁へとがつんっ、と突き刺さった。
「まぁ…相手が悪い」
それを一瞥してから、ゆっくりとした足取りで次の部屋なり通路なりと進んでいった。
■ジン > これで終わりだろうかと、そう思えるような広い部屋だった。
奥の方に見えるのは祭壇だろう、そこに見える台座の上に、あからさま過ぎて怪しげに見える書物が置いてあるのが見える。
その他には…幾つもの書架と、また違った書物、何かの部品らしき品々。
完成品らしい、何種類もの武器らしきもの、よく分からない鉱石。
更に人形やら鎧やら、なんとも多種多様なものだ。
どれも魔法製ではあるのだが…それが男には分からない。
入り口に佇んだまま、さて、どうするか?と迷う。
腕試しに来ただけで、こういった物品には興味がない。
かといって、手土産も無しでは本当に行ったのか?と怪しまれるのは目に見えている。
そこらには無さそうなものか…それが分かれば苦労はしない、である。
■ジン > …やはり、こういう時は定番であの一番奥の怪しげな書物を持ち帰れば良いか。
そう決めれば、辺りに警戒はしつつ祭壇へと向かっていく。
近付き…部屋の中央辺りに差し掛かったところで、かたり、と音がした。
一つ…ではない、幾つもの音が耳に入る。
気配はなかったはずだが…そう思って視線を向ければ、音を出していたのは気にしてもいなかった人形や鎧だった。
「面妖な…」
魔法で動いているのだが、それが分からない男には、どうして動いているのかが理解出来ない。
ともあれ、数を確認する…人形が3、鎧が3、どちらも洋風な外見をしている。
まぁ、外見はどうとも相手をするには変わらないのだ、関係はないだろう。
こちらへと近付く間も与えず、男の姿が消え、鎧の1つの側に現れる。
その手は刀の柄に添えられており、次の瞬間には目に見えぬ剣閃が鎧を薙ぐ。
そのまま流れるような動きで次の鎧の側へと移り、更に残った鎧、その間は数秒と掛かっていない。
いつ抜いたかも分からぬ刀は鞘から抜かれた様子もないまま、僅かに見える刀身も、ぱちりと収められ見えなくなる。
…それを合図に、がらがらと鎧は崩れ落ちていった。
■ジン > 残ったのは人形だ。
見た目はなんとも西洋の少女が持っていそうなドレスやら身に纏った人形だけに、まずは鎧から切り捨てたが…これも切り捨てねばならないか。
ゆらゆらと揺れるように近付く人形は、何をしてくるのか想像がいまいち出来ない。
身構えたままでいれば…その人形の周りに、なにやら不思議な光がいくつも浮かび上がった。
魔法…だが、男にはまだそれが理解出来ていない。
その光が一斉に放たれるが、切り払うべきか避けるべきか、迷った。
結論は…避ける。
少し多めに距離を置いて地面を蹴って下がると、その床に着弾した光はぱんっ、と爆ぜて散っていった。
…ちらりとその場所を見る、特に衝撃を受けたとかは見られない。
が、なにやら嫌な予感はする。
更に放たれる光を避けながら、その攻撃が途切れる瞬間を狙う。
■ジン > 「見た目で判断はすべきではない、か…」
ぽつりと呟き、浮いていた光が大体放たれたところで、壁を蹴って人形の一体との距離を一気に詰めた。
後は鎧と同じだ、刀の柄に手を添え、通り抜け際に…そのはずだった。
人形の体をいとも容易く両断するはずだった刀が、人形に触れる寸前にがぎんっ!と何かに弾かれた。
「………ぬ…!」
予想外だ。断ち、収めるはずの刀が弾かれ、手にした抜き身の刀が晒される形となる。
距離を再び置いて着地をし、確認するように刀身へと目を移す。
刀の方には異常はないようだ。
■ジン > 刀を再び鞘へと収め、身構える。
弾いたものとは魔法による物理障壁なのだが、目に見えぬそれに理解が届かないでいた。
再びその身が消えると、別の人形から今度は金属同士が打ち合う大きな音が響く、1度、2度、どちらも同じなのかの確認だ。
結果は言うまでもなく、3体とも通じない、だ。
こちらの刃が通じないが、相手の攻撃も避けれないものではない。
物理のみを通さない障壁は、こちらの攻撃をすべて防いでしまう相性最悪のものだった。
さて、困ったものだ…人形の攻撃を避けながら、この先どうするかを考えていた。
全力で飛ばせば、この場はあの書物を奪いこの部屋を去るのは楽ではある。
その後だ、もし部屋を抜けても追ってくるようならばかなり厄介なもの。
最悪は、何も手にせず逃げても追って来る事だろう。
■ジン > そうか、これが魔法…
そう思い至ったのは、それなりに経ってからだった。
となると、その方面には疎い自分にはどうしようもない。
下手に攻撃をする事も出来ず、光を避け続け、逃げの一手と決める。
どうせ追われ続ける可能性があるならば、手荷物の幾つかを頂こうか。
相手にもこちらの動きを捉え切れぬところがある、一気に奥へと駆け抜ければ、台座の書物を一冊、散らばっていた重量の無さそうな武器の類を手にしていた布に乱暴に包む。
人形の横を抜け、今度は入り口までを一気に駆け抜けた。
…出ても追って来るようならば、不本意だがあの馬鹿狐を頼るしかないか…そう考えながら。
ご案内:「無名遺跡」からジンさんが去りました。