2020/12/05 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にジンさんが現れました。
■ジン > 九頭龍山脈、その奥に存在するミレーの隠れ里。
それを付近にした山中に、その人影はあった。
そこは、その隠れ里に向かうのに通る、獣道の一つ。
その集団は、歩みの先から見て、そこへと向かっているのは間違いなかった。
が、それを阻むように立っていたのが、その人影だった。
闇夜に紛れるような、黒装束に身を包む。
特徴と言えるのは、鴉を模した仮面を被っている事、そして腰に差した二本の刀であろう鞘だろうか。
「………来た道を戻れ。
そして、二度と足を踏み入れる事はしない事だ。
その面々は、すべて覚えた」
発せられるのは、男と思われる声。
男は、それだけを伝えると、後は無言で佇むだけであった。
■ジン > その集団の目的は、予想出来るだろうが、この先の隠れ里。
この付近ではありがちな、里を襲う連中だ。
偶然とも見かけた時で良い、無駄に害を為そうとする連中は追い払え。
それが、主から伝えられている、言伝の一つ。
その言伝に強制力はない、だが、律儀な男はそれを守る。
伝えるべき言葉は伝えた、しかし…
「そうか、去らんか。
致し方あるまいな」
分かってはいた事だが、素直にそれに従う連中ならば、そもそもここまで来ていない。
相手が一人と、油断も伺える気配を漂わせながらも、各々が獲物を手にする。
軽く溜息を吐きながらも、その場に軽く身を屈めれば、一本の木の枝を拾い上げる。
枝とは言っても、一応、杖代わりに地面を付けそうな程度の太さはありそうだが。
「何人かは、手練らしき者も居るようだが。
…まぁ、良いか」
その言葉は、何かを言いたげなものなのだが。
結局は、言葉に逆らい、去る気もなさそうな雰囲気に、諦め気味な呟きが洩れた。
■ジン > 集団の頭なのか、雇い主なのか。
何者かの一声で、前の方に立っていた何人かが男に襲い掛かる。
各々手にした獲物が、斬撃を、打撃を、突撃を、与える為に男へと振り下ろされ…
次の瞬間、男の姿が僅かに揺れれば。
ごっ!と、幾重もの鈍い音が響き、今、男に襲いかかっていた者達の武器が、一斉に弾かれたように後方へと吹き飛んだ。
気が付けば、男は手にした木の枝を振り抜いたような姿勢。
理解出来たものが居たならば、男の枝による目で捉えられぬ神速の一閃で、すべての武器を弾き飛ばしたと分かるだろう。
「………次は、斬る」
その一瞬で、後方で構える腕に覚えのある者達は。
敵わない、それを理解した。
まともな武器と言えるものさえ持たぬ、一人の男を相手に。
だが、それを理解し切れぬ鈍い者も居る訳で。
俺がやる、だの何だの声をあげながら、再び向かって来る者が現れるものの。
新たに襲い来る刃、それをただの枝で受け止め。
軽くそれを捩れば、ばぎんっ、逆に相手の刃が音を立てて折れてしまう。
そのまま、流れるような動きで横薙ぎに振るえば、衝撃音と共に相手が吹き飛ぶ。
地面に撒き散らされる血飛沫。
吹き飛んだ相手の腹は、横一本に切り裂かれていた。
■ジン > 「馬鹿狐と違い、我は敵として向かう者に手心は加えない。
…分かったな?」
手にした枝を、残った者達へと突き付ける。
直感で、目で見て、実力差を理解した残りの者達。
それ以上、歯向かう者達が現れる訳もなく。
お決まりの、覚えてろよ!だの何だの叫びながら、来た道を逃げて行った。
「………覚えた、と伝えたはずなんだが…」
ぽつりと、そんな間に受けた言葉を呟くのだが。
それを聞き取る者は、その場には居なかった。
手にしていた枝を放り捨て、腕組みをし。
集団の去って行った獣道を、しばし眺めているのだった。
ご案内:「ミレーの隠れ里」からジンさんが去りました。