2020/08/30 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にナターシャさんが現れました。
ナターシャ > 鬱蒼と生い茂る木々の間を抜ける風は未だ涼しく、草花には朝露の名残が煌めく。
木漏れ日が踊る朝の森を、古びた本を片手に歩くのは、ミレーの特徴たる猫耳と尻尾を、
隠しもせず気ままに揺らす一人の少女。

目くらましの魔力に守られた里を抜け出し、日課としているフィールドワーク。
貰いものの古い薬草図鑑を抱えて、里の周辺に生えている草花の中から、
『使える』ものを見つける、あるいは、『危ない』ものを見極める。

普段は獣しか通らないような細い道を辿り歩き、時折しゃがみ込んで、
叢から顔を覗かせる、珍しげな花を観察しては、手許の図鑑でその名を確かめる。
地道な努力、というにはいささか緊張感に欠けた、散策に近いものだったが。

「今日は時間も早いし、……もう少し遠くまで行ってみても良い、かな」

昼までに戻れば良いのだから、もう少し足を伸ばしても。
そう気楽に考えることの恐ろしさを、未だ知らない少女だった。

ご案内:「ミレーの隠れ里」にミミックさんが現れました。
ミミック > それはモソリと木漏れ日を避けて蠢く。
熱が苦手というのもあるが、木漏れ日を擬態した甲殻が反射して周囲の敵や獲物に己の姿を見られなくするためである。
しかして朝露を避けるような真似はしない、朝露に甲殻が濡れて滴り落ちる際に一瞬だけシルエットを浮かばせてしまうが、木々や葉より滴る朝露は大事な水分である。

モソ、モソモソモソモソ

夜行性ではないがそのような理由からあまり太陽が高い位置にある時は擬態しながら一箇所でジッと動かない蟲であるが、今朝は偶然にも獲物の気配を感じ取れたのか、生い茂る葉同士が擦れあう音に混じり、モソリ、モソリと多脚を動かして木々から木々へ枝から枝へと移動している。

移動をして――…目的の獲物を見つけるとつるんとした見ても感情の破片も見えぬ眼で一度獲物を確認してから、直接ではなく獲物の背後へと音も無く枝より落下する。

見つけたのはミレー族の少女。
成熟具合は見てミミックには判断できないが、獣の特徴のあるミレー族である事自体は見ても判るし、本能がそれを襲え
喰らえとざわめく、十分に苗床になるかは襲ってから判断すれば良いと。

――…が、運が悪いことに枝よりの急降下、その着地の際にペキと乾いた細い木の枝を踏み折ってしまうのだった。

ナターシャ > 胸元に抱えた図鑑が網羅しているのは、あくまでも薬草、つまりは植物のみ。
毒草の類について、詳細に記されたページもあるが、それ以外の脅威―――
つまり、魔物と呼ばれるモノたちについての記述は、一行たりとも無かった。

里で生まれ、里で育ち、未だ里以外の場所を知らない少女にとって、
魔物はおろか、王都で暮らす人間たちすら、朧な印象しか無い未知の存在である。
『あまり遠くへ行くんじゃないよ』という、父や里の人々の言葉を、
決して軽んじている訳でもなかったが――――実感は、何処までも希薄で。

だから己の背後、驚くほど近くで、ぺきり、と。
小枝が折れたような音を聞いた時も、少女の頭に浮かんだのは、
平和な森の中で何度も見たことのある、鳥や小動物の類で。
特に身構えもせず、何気無い仕草で振り返り、――――大きく目を見開いて、文字通り凍りついた。

「え、――――――――――」

生きている、動いている。
イキモノなのだろう、と理解は出来る。
けれども、――――ソレが『何』なのか、推測する材料も持たない少女の頭は、
一瞬、真っ白になってしまった。
ぴんと跳ねた耳、直立した尾が総毛立って警戒警報を発し、
逃げなければ、と震える四肢に命令するまで、恐らくは致命的な間が空いてしまう筈。

ミミック > 冒険者であれば一度は遭遇した事がある俗に言う雑魚モンスターであるが、だからと言って植物図鑑に記載があるわけでもなく、強さとしては然程強くないためか、危険度が低い所為であまり警戒もされない。
これがゴブリンなどであればきっと狩りをするなどして駆逐されていただろうが、弱いことが逆に良かったのか此処一帯では駆逐されず僅かな数であるが棲み付いていた。

それに僅かな数であるが故に、森で行動する者に遭遇していないお陰で警戒されることもなく、行動範囲も広がりった事でこうして不運な獲物を見つけることが出来たのだった。

ただ不満があるとすれば妖精が居ないこと。
本能として妖精を捕らえ背中に背負いながら嬲り体液を啜り、飢えをしのぎ身体に必要な栄養素を蓄えるのだが、それが出来ていない――…つまりはこの個体は極端に餓えている。

振り返る少女に対してペキとまた枯れ枝を踏み折りながら、妖精ではないが身体の丈夫なミレー族の雌を見つけて、本王の従い動き、その距離を詰めていくミミック。

――…が、緩慢はゆるやかな動作は其処まで。
自分が慣らした音、ではなく獲物の頭部にある猫の耳が尾が警戒を見せたのを本能で理解した瞬間にミミックは獲物を『狩る』動きを見せる。

最初に頬を口をぷくぅと膨らませ、口内にたんまりと唾液を溜め込んでから噴出す金属や衣服を溶かす溶解性の人の頭ほどの大きさもある草の汁を煮詰めたような臭いの唾液玉。
当ればその粘度と粘着性でじわりと着衣に絡みつき、触れた箇所から黒ずませ液体に溶かしていくミミックの特技。

身体のサイズは獲物である少女の半分ほどしかないが、吐き出すその唾液玉は大きく、吐き出して気を引いているうちに先程まで距離を詰めるような足取りで多脚を動かしていたが、ガサガサガサと落ち葉や雑草を踏み散らして、残りの距離を跳ねて、身体を少女の腰辺りにぶつけて地面に落ちた襲うとする。

ゆるやかな動きから跳ねて飛びつく動きになるまで数秒。
傍目から見ても明らかに狩猟をする動きである。
もし少女が耳を跳ねさせなければ、尻尾を直立させなければ視線が重なった時点でミミックの方が警戒して後ずさったかもしれない。
だけども少女は『警戒』してしまった。
だからミミックは警戒から仲間を呼ばれては不味いと、逃がすまいと興奮した状態で少女に襲い掛かる。

ナターシャ > 里の大人たちが『警告』したのは、もっと大きくて恐ろしいイキモノのことだったろうか。
少女がもう少し大人であれば、あるいは対抗する術を持っていれば、
相手はさほど恐れるに足らぬ存在だったのかも知れない。

けれど、少女はまるで知識も力も無いままに、このイキモノに出会ってしまった。
そして、少女自身は気づかぬうちに――――相手の、いわゆるトリガーを引いてしまったのだった。

「きゃ、――――――……!!」

ごぽ、と、くぐもった音を聞いた気がした。
次の瞬間、どぷりと吐き出された粘つく液状の塊が、咄嗟に顔前に翳した両腕も虚しく、
少女の顔を、髪を、肢体をどろどろに濡らした。
否、濡れた、のでは無く――――服が、じわじわと溶け落ち始めている。
しかし、その事態を正しく認識するより早く、少女は魔物の容赦無い体当たりを受けて、
べしゃり、湿った土の上に倒れ伏す。
どろどろと、ぐずぐずと、溶け出して纏いつく服の残骸、魔物の唾液に濡れ光る四肢を藻掻かせ、
圧し掛かるモノから逃れようとする間にも、無垢な素肌は露出してゆく。
仰臥に近い体勢でも、弾むような張りを保つ乳房も。
きゅっと細く括れた腰も、なだらかな稜線を描く下腹も、臀部も、何もかも。
魔物の飢えが極限に達しているとすれば、この『獲物』が内包する魔力の芳香すら、
『餌』として感じ取ることが叶うかも知れない。

「や、っやだ、いや、っ…………だれ、か、助け、――――――」

当の少女自身はただ、この状況から逃れることしか考えていないけれど。

ミミック > 警戒をする事は『逃走する』か『仲間を呼ぶ』事だと判断した特に仲間を呼ばれては身体能力で勝るミレー族に少女であれ敵わないと考えたのだ。

だから既に口内には二度目の布や金属を溶かす溶解性の唾液を溜め込み始め、頬にあたる部分がプクリと膨れ上がっていたが、直ぐに唾液玉にして吐き出す必要は無いと思ったかミミックは口に溜まるものを溜め込んだまま、身体をぶつけ湿った地面の上に押し倒したミレーの雌の腹部に覆いかぶさるようにすれば、蟲だからか感情など全く皆無な眼は鉱石の如く何も映さない、がミミックは押し倒した獲物が繁殖にたるだけ十分に売れているかの確認をまずは視覚で始める。

青く瑞々しくはあるが母体として存分に役目を果たしそうな胸元の膨らみはもつ張りと弾力とは十分である、滑らかなク曲線を描く腰も、今は見ること難しい尻肉もきっとそれにたるに十分なものであろうと、しかしそれ以上に欲しくなるのは香りであろうか、本能を燻って欲を誘う香り『魔力』の香り。

肉を喰らいたい食欲よりも優先される獲物が内包する魔力の摂取、幼虫に啜らせるべき甘く薫り高い豊潤なその魔力であるが幼虫を内包していない己にとっては己を高めるため、幼虫を獲物に孕ませるための大事な栄養源であり、抱える飢えはその獲物が香らせる魔力の芳香に極限までに達してしまうだろう。

どろり、どろどろどろ、と吐かずに溜め込んでいた唾液を思わず口から垂らし、獲物と合うまでは耐えることが出来た飢餓感に思わず口から唾液を辺りに撒き散らしながら、太く長い紫色の舌をずるんっと伸ばすと、舌先で無垢なる柔肌をなぞり、膨らみ弾みそうな乳房と乳房の間までべろりと舐め、舌先は進む進み――…助けを呼ぼうとする獲物の唇を舐めて、どろどろの唾液を獲物の口内に滴らせる。
煮詰めたような草の香り、味も同様のものだろう。

それからだ。
ギチッ、ギチッギチッと多脚の内の半分で獲物の腹部を挟み込み、その背中にまで足先をまわすとチクリと鋭い足先で獲物の背中を引っ掻き、魔力どころか繁殖の苗床にも出来る獲物を逃がすまいと締め上げ、最後にもし姿形どおりのサソリであればある筈のハサミの代わりにある筒状の前足を使い、餌であり獲物であるミレーの雌の乳房のふくらんだ半球を突きだす、此処から体液としてすいだせるか否か確認だ。

ナターシャ > 覆い被さって来る感触は、甲虫を思わせる硬質。
生温かく肌に纏わりつくような感覚は、浴びせかけられた粘液のものだろう。
仰ぎ見た粘液塗れの視界のなか、相対した魔物の『眼』は無機質で、無感動で、
だからこそ獲物と化した少女の身体は、恐怖にがたがたと震え始める。

「やだ、………やっ、や、離し、て―――――…ぇっ、
 いや、ぁ、ひぁ、ん――――――ぅ、やめ、て、やめて、気持ち、悪、ぃ……!」

どろり、ぼたり、開かれた魔物の『口』から溢れ滴る雫さえ恐ろしく、
ぞろりと伸ばされた長い舌が肌を舐り始めれば、仰け反った喉からは更に悲痛な叫びが上がる。
少女の恐怖も、生理的な嫌悪も知らぬげに、弾む乳房の谷間を這い登った舌が唇を捉え、
噎せ返るような草いきれの香りを放つ粘液が、口腔へ流れ込んだ。
げほ、ごほ、と咳き込んで、嚥下を拒もうとしたけれど――――

「ひ、……いっ、痛、い、いたっ、あ、あぁあ………!
 は、な……して、いや、おね、が………誰か、――――――んくぅ、うっ…!!」

ギシ、ガチ、と耳障りな軋み音と共に、少女の肢体を魔物の『足』が抱き挟む。
鋭い爪が撓る背筋へ食い込み、逃すまいと締め上げる力の強さに、少女は更に悲痛な声を放ち、
震える脚をバタつかせ、粘液でぬめる両手で魔物の胴体を掴み、引き剥がそうとか弱い力を籠める。
けれど少女が抗えば抗うだけ、暴れれば暴れるだけ、柔らかな身体は魔物の締め付けに苛まれ、
白い肌には幾つもの、紅い爪痕が刻まれることになり。

腕、と呼ぶべきか、前足、と呼ぶべきか。
左右から伸ばされたソレが、無垢な乳毬を玩びにかかる、
その瞬間に背筋を駆け抜けた、得体の知れない衝撃に――――少女は、声を詰まらせて四肢を跳ねさせた。

深い森の中、里からは随分と遠く。
少女にとっての救いが現れる気配は、未だ、欠片も無かった。

ご案内:「ミレーの隠れ里」からナターシャさんが去りました。
ミミック > 朝露が未だ残る木漏れ日射しこむ森での邂逅。
ミレーの少女の助けを呼ぶ声に気づくものはなく、その声は逆にミミックを興奮させ、更なる惨劇を招くか……。

何れにせよ、少女と魔物は出会ってしまった。
それが何をもたらすか、それはこの場に立ち会ったものにしかわからない。

ご案内:「ミレーの隠れ里」からミミックさんが去りました。