2019/10/20 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にヨアンナさんが現れました。
■ヨアンナ > ――――それは、突然の襲撃だった。
ミレーたちが息を潜めるようにして暮らす里が、不意の襲撃に遭い
壊滅させられることなど、この国では日常茶飯事なのかも知れない。
けれど己にとって、それは、どこか遠い世界の出来事のようなものだった。
夜空が赤く染まり、怒号が、荒々しい靴音が近づいてくる。
養父に腕を掴まれ、普段は食糧庫として使われている地下室へ放り込まれて、
決して出てくるな、と念を押された。
勿論、直ぐに出て行こうとしたけれど、向こう側から閂を掛けられては、
非力な細腕でどうにか出来る筈も無く。
平和だった里が、優しかった人々が、蹂躙される恐ろしい物音を、声を聞きながら、
並んだ樽の間へ膝を抱えて蹲り、蒼褪めてかたかたと震えながら、
―――――ただ、ただ、この悪夢が己の上から去るのを待っていた。
■ヨアンナ > 耳を伏せて、尾を丸めて。
恐怖の時間は、未だ終わる気配をみせない。
その顛末を知るのは、未だ、神と呼ばれる存在のみかと――――。
ご案内:「ミレーの隠れ里」からヨアンナさんが去りました。
ご案内:「ミレーの隠れ里」にヨアンナさんが現れました。
■ヨアンナ > ――――少しの間、意識を失っていたらしい。
かくん、と頭が傾ぎ、はっと気づいて目を開けた。
薄暗い地下倉庫の片隅に蹲って、両腕で膝を抱え――――あれから、
どのぐらい時間が経過したのだろう。
今が昼なのか夜なのか、それすらも解らない。
外側から閂を掛けられた分厚い扉の方へ、赤く充血した眼差しを向ける。
先刻まで聞こえていた怒号も、悲鳴も、靴音も、今は聞こえない。
――――あまりにも、静かだった。
「……お義父さ、ん……」
呟くように呼んだけれど、答えは無い。
ずっと同じ姿勢で居たために関節が軋みを上げるのも構わず、樽の陰から立ち上がって、
上へ続く梯子段の傍へ歩み寄った。
木製の古びた手摺に手をかけ、閉ざされた扉を見つめる。
こうしていればそこが向こう側から開かれ、養父の笑顔が見られる、と。
もう大丈夫だ、出ておいで、と、そう言ってくれるような気がして。
■ヨアンナ > ――――――ガタ、ン!
突然、頭上で鈍い音がした。
「きゃ、っ………!」
見上げていた扉が大きく軋み、木屑がぱらぱらと降り注ぐ。
反射的に両手で頭を抱え、その場へしゃがみこんだけれど、声は殺せたかどうか。
もしかしたら聞こえたかも知れない、――――気づかれた、かも知れない。
息を呑んで、今まで以上に蒼褪めて。
見つめる先で扉がまた、ぎしり、と軋んだ。
頭上で何某かの決着がつくまで、あと、どれぐらいか――――――。
ご案内:「ミレーの隠れ里」からヨアンナさんが去りました。