2017/06/07 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 【待ち合わせ待機中です】
ご案内:「ミレーの隠れ里」にエーテルさんが現れました。
セイン=ディバン > 「おりょ。……エーテルちゃん、案外優しいというかなんというか。
 線引きが上手いタイプなのかな」

短い言葉とはいえ、すぱっ、とコレまでの掛け合いを斬る一言。
強い拒絶の様にも聞こえるが……少女には、その様子が、好ましくあった。

次いで、相手のアクション。迫る左腕。回避しようと、足に力を蓄える。跳躍しようとした瞬間……それがフェイントだと気付く。
視界の端、本命、左足の蹴りが一気に向かってきた。

「ウッソ、だろ……!!
 見事なフェイントだねヲイ!!」

まるで生身の人間のような、卓越したフェイント。しかし、何とか反応は出来た。だが……。少女の持つ生存本能スキルは、この蹴りを避けるな、と言っている。
この蹴りすらも囮。本気本命の一撃はその後に来るぞ、と。
だが……。

(本気を出せ、と挑発した以上。その罠、引っかからないのは……。
 ちぃぃっと、失礼にあたるよねぇ!!)

瞬間。少女はそう考え。そのけりを、わざと回避した。ギリギリの距離で、直撃を避け。そして……相手の目論見どおり。
蹴り足に込められた魔力により、その回避の動きは風により阻害される。

「こりゃ……こりゃスゲェ!! 火炎だけじゃなく、風も纏うか!!
 一流のゴーレム……いや、超一流の魔術人形だな!!」

風に囚われたままだというのに、少女は嬉しそうに。楽しそうにそう叫ぶ。

エーテル > 実のところはまだまだ言い足りない。
だけど、言葉に熱が入り過ぎる事によるコーデリアの動きの緩慢化を少女は目敏く気付く事だろう。
それは避けなければならないと思ったから。
少女がそれに対してどう思ったかまでは、分かっている訳もなく。

「コーデリアが自立型じゃないのに気付いたんだ、仕方ないよ。
もう少し複雑にしなくてもいけると思ったのに…とんだ誤算」

攻撃を仕掛けながら向ける言葉。
それに気付かなければ、もう少し単調に続け油断を強めようと思っていたのだ。
これも避ける…だけど、そう思っていた少女は最後の風の束縛に引っ掛かってしまう。
これで少しの間は少女の動きは鈍る筈だ。
それでも、この相手は勘が鋭いところがあるから油断は出来ないが。
だって、こんな状態にも関わらず少女の反応は考えていたものと違ったのだから。

「こんな程度がコーデリアの性能とは思わない事だね。
もっともっと色んな仕掛けが備わっている、今のはほんの一部。
それを全部見せる事も出来ずに終わるけど」

でも、コーデリアの事となると単純だ、それは自覚しているけどどうしようもない。
貶されれば怒りを露にするし、褒められれば嬉しくなる。
少女の言葉に一転して自慢気に語っているのが、口調で分かるだろう。

もう一つだけおまけだと言うかのように、魔導人形は強く地面に足を叩き付ける。
伝うのは地の魔力、地面の一部が弾け飛び、その幾つかが少女に襲い掛かる。
それにワンテンポ遅らせ、二の足で地面を蹴って少女へと突っ込んでいく。
石つぶてが当たるなら、その衝撃に続いて両手を広げさせ相手を捕らえるだろう。
もし回避される事があったなら、追撃を何か考えなければならない。

セイン=ディバン > 会話は一度途切れ。少女も、相手同様戦闘に集中する。
刹那、僅かに魔術人形の動きが向上したように見えたが……。
元よりかなりの精密さと速度を持っているのは間違いない。
少女の見間違いかもしれなかった。

「ハハハ、多少警戒してくれたなら光栄。
 とは言え……。この程度じゃ決定打にゃならないぜ……?」

相手の言葉にニヤリ、と不敵に笑う少女。しかして、この状況は少女にとって余裕のある状況ともいえない。
見事に束縛され、自分の持ち味である速度を殺された現状。
それでも、少女は笑う。そうあるべきだ、と信じているかのように。

「いやいや、マジで感服した。見くびってたよ。
 そりゃ、是非とももっともっと堪能したいねぇ。
 そう言わずに、もっとサービスしてよ……!!」

自慢の相棒が褒められたのが嬉しいのか、相手は高揚した様子だ。
少女もその様子に釣られるように笑うが、その余裕もいよいよ消えた。

人形が地を蹴り、割れた地面が弾丸のように襲い掛かってくる。
更に、人形自体も更に少女を追い詰めるように、肉薄する。
ことこの状況では、石つぶてを貰えば人形に捕まる。この事実は変わらない。
このままなら積み。すなわち敗北は確定だ。

「……あぁ~あ。こんなにあっさり追い詰められるとはねぇ。
 切り札、使いたくなかったんだけど」

諦め顔で少女は言い。一気に体内の魔力を練る。身体強化の効果が切れ、余剰魔力が身体に戻る。その瞬間。

少女の姿はその場から消え。石つぶては空を切り。人形の腕も風を裂くのみだった。

「……いや、危ない危ない。本当に大した性能だ。
 訂正するよ、お嬢ちゃん。キミの相棒は素晴らしい。とてつもなく素晴らしい相方だ、ね。
 おほ。柔らかい感触。案外着やせするタイプ?」

掻き消えた少女の声は、背後から。少女の切り札。空間転送。本来は都市を移動する際に使うような魔術だが。
少女は、その魔術でもって相手の背後に回りこんでいた。
そのままのほほん、とした声を相手に向けながら、その胸へと手を回し、揉み揉み。

エーテル > 少女は言った、この程度では決定打にならないと。
風の魔力に拘束され、自慢であろう動きは封じられている。
動かなくても何かが出来る?出来るとして、何が?
少女が使っていたのは身体強化の魔法、その手のタイプが攻撃魔法を使うとは思えない。
魔導人形を相手に状態異常の魔法を使うとも思えない。
そうなると、今自分が陥っているような拘束するものだろうか?
つらつらと言葉を並べ立てる少女に油断無く注意を向け続け、思案する。

逆にこちらは無言のまま、少女への注意と、思考に集中を割いているからだ。

そうして考えていても、動かなければ何も変わらない。
石つぶてと突進を重ね、相手を追い詰めようとするが…切り札を切るとの言葉と共に姿が掻き消えた。
姿が消えるまで向けていた少女への集中と、先の手に向けての思案。
それが次の少女の行動への反応を一歩遅らせた。
自慢するほどではないにせよ、それなりの膨らみが少女の手に伝わるだろう。
それを受けている本人はと言うと…硬直してしまっている。
弄られる感触に反応をしているとかは無い、何が起こっているのかという理解がまだ追いついてない様子だ。
でも、ゆっくりと理解が追いついてこれば、みるみる顔を真っ赤にさせていった。
大きめな眼鏡を掛けているとは言え、それは隠しようがない。

「な…何してるんだっ!」

少し離れた場所、少女が消える前に居た場所で魔導人形の倒れる音。
森林に響き渡るような大声と共に、右手が大振りに少女を振り払おうと動く。

セイン=ディバン > 実際、口では達者なことを言っていたが。本当に危ういところだった。
切り札を切らなければ、石つぶてによる打撃。そして、人形の拘束を受け、そのまま倒されていたことだろう。
とはいえ、その切り札が見事に決まり少女は状況の逆転に成功した。

胸を揉み、その感触を楽しむ少女。豊満とまではいかないが、なかなかの感触だ。ソレを受けても無反応な相手に、おや? と思っていたが。
赤面し、声を荒げるのを見て、あぁ状況が判断できてなかったのか、と納得する。

「何って、戦いを終え、互いを認め合い絆を芽生えさせる的な、アレ?
 いがみ合っていた二人の間に芽生える感情、とかそういう。
 あ、人形倒れた? ……なるほど。魔力供給型じゃなくて、同調形、あるいは遠隔命令型って所か。
 ならば、今後はこういう風にキミ自身が追い込まれないようにしないとだめだよ?」

魔道人形が倒れたのを見て、推測を口にする。この弱点は、この相手にとって今後致命的なものになりかねない。なので、親切にアドバイスをする。が、胸を揉む行為は止めない。
振り回された腕を屈んで回避し、更に胸を揉みつつ、相手の耳へと舌を這わせる。

「ふふふ、ウブな反応。もしかして、エーテルちゃん処女?
 任せておいてくれたまえ。オレ、こう見えてテクニシャンだから」

聞かれてもいないことをベラベラ喋る少女。その服の下では、少女の体躯に似合わぬ巨大なペニスが膨らみ始めていた。

エーテル > 「…んな…こんな事をしておいて、認め合う?
馬鹿に…するなっ!」

少女がこうした行為に移らずに、普通にそう接していたならば、或いは。
あれだけ偉そうな事を言っておいて、状況有利となった途端に本性を現わした…そう思ってしまうのは仕方の無い事だろう。
振り回す腕まで回避され、胸に続いて耳まで舌によって嬲られる。
意識してしまえば、嬲られる場所に受ける感触が、とても嫌なものに感じてしまう。
こういった行為を知らない訳じゃない、でも、こんな流れでされてしまうなんてあんまりだ。

「く、んっ…嫌だ…嫌だ…やっぱり、人間なん、て…人間なんて…!」

与えられる感触に、嫌がるように身を捩る。
少女から見て感じるのは、自分が与える行為に対する初心な反応だろうか?
だけど実際に起こっているのは怒りの再加熱、抑えられないレベルにまで、その熱が膨らんでいく。
もういい、何もかも包み隠さず曝け出してやる。
そして…

「お前を…消してやる…」

何か切れる音が聞こえた様な気がする。
小さく震える身体、呟く小さな声、それら全てに怒気しか感じられない。
何かが砕けるような音と共に、少女に弄られる身体に変化が生じる。
身に纏っていた服の一部が千切れ、地面に舞い落ちた。
少女が目にするのは、竜を象った二本の角、黒い翼と尾を生やした姿だろう。
眼鏡の奥から鋭く睨み付ける瞳は、黒から真紅に変わっている。

セイン=ディバン > 「え~? よくあるじゃん? 戦いがお互いの絆を深める、っての。
 いや、バカにしてる訳ではなく。エーテルちゃんカワイイからエッチなことしたいなぁ、っていう感じなんだけど」

背後からの拘束に、激昂したような声で返す相手。しかし少女は悪びれもせず、更に胸を揉む。
しかし、如何様に愛撫しても、相手の反応が柔らかくなる事はない。というか、余計抵抗されている。

「んお、ショック。じゃあエーテルちゃんは、人間相手じゃなかったら良いのかよー。
 それこそ差別的だ、凝り固まった固定概念だ。もっと世界を広くフラットな目で見なよー」

身を捩り、嫌がる相手。その言葉に、飄々と反論するものの。
何かがおかしい、と少女は鼻を鳴らす。先ほどまでの人形との戦闘。それ以上の危機感が脳に響き渡り……。そして、相手の一言同時に、その警戒状態は全身を硬直させる。

「……わぁ。それ……角。翼。それに尻尾?
 ……まじか!! エーテルちゃん、もしかして龍族か!!
 うっわぁ、龍族のハーフなんて初めて見た!! カッコイイー!!
 ちょ、ちょっと待っててくれ!! 何か記録、記録できるようなアイテムは……!!」

その相手の姿。あっという間に起きた変化に、少女は呆気に取られ……。
次の瞬間。まるで子供のようにはしゃぎ、相手に矢継ぎ早に声をかける。
目はキラキラと輝き、邪気など欠片も見当たらない。本当に本心からカッコイイと思っているようだ。
目の前で相手が大激怒しているのもお構い無しに、懐からいろいろとアイテムを取り出していく。さっきまで芽生えていた性欲は、見事霧散したようで。

エーテル > 結局は、そんな行為をする事を考えていたんだ。
コーデリアをどうにかすれば、今みたいに持ち込んで好きにできると踏んでいたんだ。
それなのに、少女の口車に乗せられて…そんな自分も心底嫌になっていた。
少女は何か言っている…忙しく感情を変える様が見えてる。
だけど、何も見たくないし、何も聞きたくない。

だから、先ずは何も見えなくしてしまおう。
怒りに思考は単純化してしまっている。
右手が空へ向かい伸ばされ、振り下ろされる。
そして感じるのは強大な闇の魔力。
少女は言っていた、半径1㎞は何も干渉されないと。
真実でも、虚偽でも、構わない。
次の瞬間、少女の言っていた半径1㎞は何も見えない巨大な闇に包まれた。

セイン=ディバン > 少女としては、あわよくばちょっとエッチなことが出来ればラッキー、くらいに思っていたのだが。
その軽はずみな行為は、見事に相手を激怒させ、状況を悪化させるに至ったようだ。
流石にこの雰囲気はまずい、と察したか。少女はバックステップで距離を取るが。

「……わぁ~。これ、もしかしなくてもヤバイ感じ?」

急速に広がる黒。恐らくは目の前の相手の行使した力なのだろうが。
触れれば判る。この闇は、恐らく少女のスキルではどうしようもない。
除去したり、光で上書きしたりすることは出来ない。人間程度の魔力で、龍種の潜在魔力に敵う訳がないのだ。

「えっと……これ、このまま放置してはいけないよねぇ……」

自分のせいでこうなったのだから。せめて、相手を落ち着かせなくてはいけない。
少女はやれやれ、と笑い。目を閉じた。

エーテル > 真の闇、夜目を持った者でさえもこの闇は見通せない。
広がる闇で魔力に対する感知能力は紛らわせているし、視界もこれで封じた筈だ。
それでも、まだ足りないと考える。

自分はと言えば、地面を蹴って翼を広げ上空へと舞い上がった。
これは自分の作り出した闇、自身には闇に包まれた光景はしっかりと見えている。
そうしながら、再び意識を倒れている魔導人形へと向けた。
魔導人形独特の金属の擦れ合う小さな音を立てて立ち上がり、真っ直ぐに少女を捕らえようと突っ込むだろう。
多分、その動きは音の所為で少女には伝わっているか。
こちらとしては、そちらにも注意を分散して貰えるとありがたい。

更に行動は続く。
視線でしっかりと少女を捕らえながら、大きく息を吸い込む。
すぐ前には包む闇よりも薄っすらとした別の闇。
魔力を乗せ、闇と共に眼下に広がる光景へと躊躇無く吹き掛けていった。
闇を纏わせし漆黒の炎、その炎にまかれた者は一時的に能力は強制的に抑制させられる。
相手を本当に消してしまう様な吐息を選ばなかったのは、残った理性の欠片がなしたものか。

セイン=ディバン > 闇に包まれ、辺りはまったく見えない。試しに懐からランプを取り出してみるが、辛うじてそのランプの光が見えるだけだ。不思議なことに、『辺りを照らす』という機能がまったく働いていない。

「……」

何も見えぬなら、いっそ視覚を封じたほうがいい。少女はそう判断し、瞳を閉じたまま聴覚に集中する。
聞こえてきた音。機能復活した人形が迫ってきている。しかし、それは一度捨て置く。
微かに聞こえた。空を切る音。怒りによって変改s多少所は、どうやら空へと舞い上がったようで。
……それに気付いた少女は、ニヤリ、と笑う。

「なるほど。こういう連携攻撃が本来の戦い方か」

小声で囁き。どうしたものか、と考える。が、どう考えても、無駄だ。
相手の出方は恐らく少女の推理の範疇を大きく超えていることだろう。
ならば、と。少女は人形の突進を見ぬままにバク宙で避け……空を見た。

「来なよ、お嬢ちゃん!! 手札全部さらけ出して勝負しようぜ!!」

叫ぶと同時に。空からソレは舞い降りた。漆黒の炎。身体を包み込まれ、その炎の熱さに身を硬くするが……炎の熱は、身を焦がす程ではなかった。だが……即座に、この炎の本当の意味が理解できた。身体を巡る魔力が。練った傍から消滅していくのだ。
簡単な術式すら、行使するどころか、詠唱段階で消滅していく。

「……なるほど、こりゃマズい……!!」

一気に危機的状況になった自分自身に対し、困ったような笑顔を見せる少女。再度迫る人形の腕を、身体能力だけで回避する。

エーテル > 視線の先、自分の吹き掛けた黒き炎に少女がまかれた光景を確かに見た。
何かを行おうとする姿を見れば、それが魔法を行使しようとして出来なかったものだと理解は出来る。
これで、少女はほぼ無力化出来ただろう。

その筈なのだが、それでも尚コーデリアの動きには対応している。
今の少女を相手にするには、もう魔法仕掛けは使えない。
自分が与えたオールアンチ能力が、少女自身も含めた全ての能力を抑制してしまうからだ。
闇は残したまま、少女へと向けて急降下する。
二人掛かりならば、いくらこの少女とて逃れ切るのは難しい筈だ。

「今度こそ終わり、何か言い残す事は?」

少し距離を置いた地面に着地をし、口を開く。
そうしている間もコーデリアは捕らえ様と動いているのだから、言葉を返す余裕があるかどうかは分からないが。

セイン=ディバン > よもや相手が龍種絡みだとは思っていなかったし、こんな変り種のブレスの使い手だとも思っていなかった。
そもそも、戦闘能力の高い訳でもない少女としては、魔術による強化などは生命線。それを潰されては、正直分が悪い所ではなかった。

「うはっ、ウハハハハ!! い、っやぁ!!
 これは、うん、キツい!!」

繰り返される、人形の突進。ソレを、勘だけで回避し続ける少女。跳び、転がり、屈み。本当にギリギリの所で回避をし続けるが。
それでも、その突進はじりじりと少女へと迫っている。
余裕あった回避は、今は本当にギリギリ。もう後僅かの時間で、少女が捕まるのは明らかだ。

「ふへ!? 言い残すこと? えっと。そうだな……。
 エーテルちゃん、彼氏とか好きな人いるの?」

やや離れた位置から聞こえた声に、少女はそう答えた。瞬間、足がもつれ、転びそうになるが、前転で立ち上がる。服に人形の腕が掠り、布地が吹き飛ばされた。しかして、少女は笑ったままだ。

エーテル > 少女の動きを見て、限界が近いのは分かる。
同調を続ける限り動きが衰えない魔導人形と人間では差は歴然、捕まえるのは時間の問題か。
だが、それを待っているつもりはない。
意識の集中を強め、コーデリアの動きを更に俊敏にさせてしまう。
疲れの見える少女に対し容赦のない攻め立て。
ただ、先程攻め立てていた時の様に拳や蹴りは放っていない。
明らかに捕らえるだけの動きではあるが。

そして、こちらは地面に転がっている、先程地面を砕き散っていた石つぶての側に。
ゆっくりとした動作で幾つかを拾うと、少女へと向けて鋭く投げ付ける。
魔力も込められていないただの石だ、少女に当たってどうなるかは分からないが、コーデリアに当たったところで傷も付かない。

「そんなの居ないよ…それでお終いかな?」

コーデリアだけでも捕まりそうなもの、こちらの軽い妨害も入れば確実に捕らえられるか。
自分で聞いたのだからと、それだけは答えておいた。

セイン=ディバン > 息が切れる。足がふらつく。閉じた目の内側が痛む。
それでも、少女は動きを止めない。少なくとも、止まってしまえばそこでお終いだ。ヘタしたら本当に殺されかねない。まぁ、自業自得だが。

「ちょ、っと、っと……!!
 あ、ららららら!!」

限界ギリギリの回避も、永遠には続かない。遠くから飛来した石。
ソレに気付き、石を回避しようと身体を捻ったのが最後。膝から力が抜け、尻餅を着くと同時に、見事に人形に捕縛されてしまい。
後はぶら~ん、と力なく捕まるがまま。息を整えようとしながらも舌は止めない。

「あ~、じゃあもう一つ。なんでそんな人間が嫌いなの?
 お仲間を襲うから? ミレー族を見下すから? そうじゃない人間もいるのに?
 一定数の人間に出会ったからとて全体を否定するのはレッテルを貼ってるだけじゃない?
 それとも、本当は優しい人間がいる、なんてのに気付いて、人を拒否してた自分の浅慮さに気付いてしまうのが怖い?」

切れた息のまま。表情は笑顔のまま。畳み掛けるように言う少女。
それは、紛れもなく挑発のような言葉。相手を怒らせる以外の効果などありはしない言葉だ。だが、少女はそれでも尋ねる。
いや、尋ねるフリをして、言葉を叩きつける。人間を否定する。それは本質的に、ミレー族を否定する人間どもと変わらない、と。

エーテル > 限界のある人間だ、それは仕方の無い事。
飛来する石と、それに合わせて捕らえ様と動く魔導人形により、少女は捕らえられた。
こうなれば、もう少女には逃れる術は無いだろう。
集中を必要最低限にする代わりに、しっかりと少女を抑え込ませる。

事が終わろうと、少女の口は止まらないだろうと、それは理解していた。
先程から、よくもそこまで口が回ると思う程に言葉を続けていたからだ。
闇を解き、自分は元より見えているが、少女にも自分が見えるようにする。
側にまで近付き、真正面から真っ直ぐに瞳を見詰め。

「そうじゃない人間も居る、でも、だから何?
そうじゃない人間がいるから、皆に安心出来る生活が保証出来るの?
出来ないよね?今のこの世情が、その証拠じゃない。
人間も、魔族も、全部…全部居ない方が、皆は平和に暮らせる。
だから、あたしは人間も魔族も嫌って、皆に近付かせない」

そこまで言って、一度だけ視線を逸らす。
全てを嫌うのは間違っているなんて、分からない訳が無い。
でも、そこまでしなければ、きっと他の集落の様になる。
心配するが故に、辿り着いた愚考、それは理解しているから。

セイン=ディバン > あるいは、少女が、元の男性の身体のままだったのならば。
また結末は変わったのかもしれないが。残念なことにそれは仮定でしかない。
現にこうして捕らえられたのだから、敗北は敗北、だ。
敗北者としては、勝者にその身柄を委ねるしかない。

捕まったまま言葉を吐き出し続けていれば、不意に周りが明るくなった。どうやら、周りの闇を解除してくれたのであろう。
おぉ、周りが見えるとはすばらしいなぁ、などと呑気にのたまいつつ。相手の視線をこちらも正面から受け止める。

「ふむ。そこまで判っていて、あと一歩に気付いていないのか。
 いや、気付かないフリをしてるのかな。
 そうやってキミ一人で戦って、いつまで守れるかね。限界は来る、必ずね。
 ならば、協力者を募るべきだ。それに、キミが派手に他のミレー族を守れば守るほど、ミレー族を悪く扱うクソ共は意地になって襲ってくると思うぜ?
 ましてや、自分たち以外は全部いない方が良い? なんだそりゃ。それこそ支配階級のクズ共と変わらない狭量さだな。
 ……まぁ、実際信頼できる相手かどうかの判断は難しいと思うけど。それにほら。オレみたいにテクニシャンの良い男……あぁいや、今は身体はこんなんだけど。そんな人との気持ち良いセックスもできなくなるよ?」

真っ直ぐに見つめられ。心の奥底からの言葉を聞いたからこそ。
少女は、同じく真っ直ぐに意見を述べた。少女自身、ミレー族を守りたいと思うからこそ。
このままこの女の子が進む道を違えれば、必ず破綻すると。そう考えている。
その瞳には、ウソ偽りなど一つもなかった。

エーテル > 今は消えているも、包んでいた闇のお陰で少しは思考が働いている。
自分にとって闇は水と同様に心地の良いものだから、少しは心を落ち着かせる事が出来た。
本当に今日は感情の起伏を激しくさせられて忙しい日だと、何気に考える余裕も作れる程に。

改めて少女を見詰めながら、その言葉を聞いていく。
言っている事は、大体自分も分かっている事だ。
追い払えば、それだけ相手を躍起にさせる事もあるだろう。
そんな者達が集まり、より大きな力となれば間違いなく追い詰められるのはこちらとなる。
排他的な考え方が愚かだとも十分に理解しているのだ。
だけど、他に救いを求める事なんて出来ないのも事実で。

「父さんは蔑まれてきた、母さんは疎まれてきた。
簡単に助けを求めれば良いって言ってるけどね、それさえも出来なくなるような環境もあるんだって、分かって言ってる?
何不自由ない生活を送ってきた訳でもないだろうけど、それでも、きっと理解し切れてない部分だってある。
…理解をし切るなんて無理な話なんだって、あたしだって分かってるよ。
自分は自分、他人は他人、全部理解するなんて不可能。
でも、少しでも近付く事なら出来るんだって事も…
そうであっても、そこにはやっぱり裏切られるかもしれないって嫌な考えが浮かんじゃう。
どれだけ良い方向に考えようとしても、今までの事がどこかで必ず引っ掛かる。
人間はね、そこまでの事をしてきたんだ…少なくとも、あたしの周りの環境では、そうなっちゃってるんだ。
だから…駄目、なんだと思う…」

少女が偽り無く語るからこそ、自分も同じように偽らない。
複雑過ぎる世情や環境、理解してるけど、どうにも出来ない自分の状況。
きっと、少女の言う通りになる。いつかやってくる破綻の道。
それを逃れる術があるのに、手を伸ばせない自分が居る。
年齢的にまだ少女である者に、答えを求めるには余りにも難しいものではないだろうか。
最後は言葉も詰まり、俯いてしまう。