2017/06/05 のログ
ご案内：「ミレーの隠れ里」にエーテルさんが現れました。
■エーテル > 九頭龍山脈の奥深くに存在するミレーの隠れ里の一つ。
そこから少し離れた森林の中で探し物を求めて歩いていた。
茸類とか、木の実とか、草葉でも、探れば食べれる物は色々とある。それが探し物。
ここでは自給自足なのだから、当然といえば当然の事。
本当は一人よりも、二人三人と手が欲しいところではあるけれど、危険だからとこうして一人が多い。
「これと、これも大丈夫。後は…これかな？」
手に触れて、一つ一つを確認して、大丈夫な物は摘んでいく。
背に担いだ背負い籠の中はそれなりに一杯だ。
だけど、里の人数が多くはないにせよ物は多いに限る。
もう少しだけ、もう少しだけと手を動かし続けていた。
■エーテル > 「コーデリアの方も上手くいったみたい？今日はまあまあの収獲だね♪
良いよ、戻っておいで、コーデリア」
一人で来ている筈なのに、まるで誰かに話し掛けているかの様な言葉。
この場に他の誰かが居ようとも、生き物の気配というものは確かに感じられない。
しかし、そんな少女の元へやって来たかの様に茂みが揺れて姿を現わす影一つ。
姿は人の様ではあるが、人ではない。
遠くからぱっと見であるなら間違えそうだが、それは魔導人形だった。
その肩には一匹の鹿が抱えられている。
少女自身もそれなりに満足した量を得られたか、手を止めて身体を解すように腕を軽く回す。
ご案内：「ミレーの隠れ里」にセイン＝ディバンさんが現れました。
■セイン＝ディバン > ミレー族の隠れ里。そこへの物資の運搬や、護衛。それはこの少女が『趣味』で行っていることであった。
「……え、っと。たしか、コッチだったか～？」
当然、隠れ里の場所は秘密。時には里ごと移動していることもある。なので、その都度その都度こっそりと情報を集め、少女は里へと向かっていく。
……正義の味方でもない少女がなぜそんなことをしているのかといえば。まぁ、いろいろと事情はあり。
「うわっぷ。この辺、茂み、生い茂り過ぎだろ……。
よい、っしょ……。……ん？」
がさがさ、ごそごそ。茂みを切り開き進む。あまり街道を通って足跡を残しても、隠れ里への襲撃者に痕跡を与えるようなものだ。
故に少女は毎回獣道を通っていたのだが……。
一際大きな茂みを抜けた瞬間。人に出会うこととなった。
若々しいミレー族の少女と……屈強そうな人……いや、人ではない。
「……はろ～。キミ、この辺の隠れ里の人？
物資を届けに来たんだけど、里に案内してくれるかなぁ」
小声で少女に声をかける。両手は頭上へホールドアップ。敵意がないことを示し、視線で荷物（随分大きな包みだ）を示す。
少女はちょこちょこミレー族を支援しているが……姿形は大きく変化してしまっている。
もしかしたら、敵だと疑われるかもしれない。
■エーテル > その存在は小耳に挟んだ程度だが聞いた事はあった、隠れ里に現れては援助を行う人間が居ると。
最近はその姿をなぜか変えているも、そこは気にしている者は居ない。
隠れ里のミレー族達はそんな理解者に喜んだり、困惑していたりと様々だった。
唯一人を除いて。
相方である魔導人形と共に居た時に、その相手は姿を現わした。
茂みを掻き分けて進んでいたんだから、気付かない訳はない。
そんな少女が現れた先には、眼鏡越しに鋭い視線を向ける見た目は人間の少女と、人で在らざる存在の姿。
いつ誰と会うか分からないのだ、隠匿の魔法は使い姿を誤魔化している。
相手が相手だ、自分をミレー族と勘違いしたのは頷ける事だろう。
「物資、ね…」
少女の言葉に、考え込んでしまう。
物資はあれば確かに助かる、だけど、この少女を本当に隠れ里に案内するべきか。
正直に言ってしまえば、そんな行為自体も裏があるとずっと考えていたからだ。
こうして物資を理由に隠れ里を暴いていき、情報を売る、もしくは自分達で襲いに来ようと考えているのだと。
いざ、その相手を前に中々考えが纏まらない。
■セイン＝ディバン > 対峙した瞬間。少女は、しくじったか、と考えた。
少なくとも、面と向かってであった相手の実力を読めないようでは、冒険者として長生きなど出来ない。
姿こそ少女に変えられていようと。生きて長く冒険者をやっている少女にとっては、そういった勘などは自慢できるスキルであり。
「……考え事をあてようか、お嬢ちゃん。
こいつを信用して良いものかどうか。そもそもミレー族に無償で援助するなんて怪しい。こいつもほかの人間と同じなんじゃないか？ こんな所だろ？」
見た目に反し、荒々しい口調で少女は言う。そのまま、両手は挙げたままゆっくりと近づき。
じい、と観察。目の前の少女からはなかなかの素質を感じる。だが、少女の興味は人ならざる存在へと向けられていた。
「……そちら、お嬢ちゃんの相棒？
……イイね。隠匿してるのかな。良く判らないけど……。
ゴーレム、の、亜種。かな？ うんうん、イイね、実にイイ。ウチの妻のゴーレムには劣るかもしれないけど」
気配。あるいは、その存在力とでもいうのか。少女を守るように立つその人ならざる存在へと近づき、うんうん、と頷く。
どうやら本気で、その存在を褒めているらしい。終いには、デザインが、とか。戦闘能力は、とか。興味津々。
しかし、その言葉の最後。自分の妻の持っているゴーレムには劣るかなぁ、などと。なかなかに失礼な一言を付け足している。
■エーテル > 少女が語る予想に何も答える事が出来なかった。
向ける視線に、態度に、ありありとそれが窺えたのだろう。
つい視線を逸らしてしまう。
そして、続く少女の言葉が今度はコーデリアと呼ぶ相方の話題へと切り替わる。
魔導人形の良し悪しなんて、ちゃんと分かる訳がないと聞き流そうとするのだが…最後の言葉に、視線が再び睨み付ける様に向けられた。
「あたしのコーデリアを、そこらのゴーレムなんかと一緒にするな！
あたしのコーデリアが劣ってるって？ゴーレムに？お前、自分が何を比べて言っているのか分かってるのか！？」
今にも殴り掛からん勢いで、怒鳴り付ける。
自信作を貶すような言葉を向けられたのだ、仕方がないとも言えなくはないか。
少女の言葉は真実ではあるが、それは分かってもいないし、きっと分かっても納得が出来ないかもしれない。
■セイン＝ディバン > ぺらぺらと喋る言葉に、少女は黙り込んでしまった。その様子に思わず溜息が漏れる。
「図星、ね。まぁ気持ちは分かるんだけどさ。
自己紹介させてもらうよ。冒険者、兼怠惰の魔王軍所属。セイン＝ディバン。怠惰の魔王様の夫をやってる。
ま、要するに魔族と人間の共存を考えてる立場ってヤツでね。
そういう意味じゃ、キミ等ミレー族とかを守ろうと思ってるってことを信用してもらえないかな、と」
黙り込む相手へと自己紹介し、自身の立場を明らかにする。とはいえ、信用されるかどうかは別だ。
そうして、改めて少女の姿を見れば……。単なるミレー族でもないな、と気づく。明らかに、素養・素質が高すぎる。肌で感じる魔力は、一線級の戦士のそれだ。
「おっと、こりゃ失礼。でもまぁ、オレの妻の怠惰の魔王様、ベルフェゴールの部下ってのはそりゃまあスゲェゴーレムでね。
それと比べちゃうと、やっぱ見劣りするのかなぁ、とは思っちゃうよ。
……そうだ。じゃあ、こういうのはどうだい？」
相手の剣幕に、要らん事を言ってしまったか、と後悔する。が、流石に無駄にお世辞やおべっかは使えない性格。更に相手を刺激するようなことを口にしてしまう。
そこで少女は、懐から小さな四角い石を取り出し、地面に置く。
瞬間、それは淡い光を放ち始める。
「これで半径１キロくらいは、外界と切り離された空間になった。ま、簡易的結界発生装置ってとこかな。
……キミのその自慢の……コーデリアちゃん？ だったっけ？
その子の性能評価試験をしてみない？ オレを相手にさ。
狩りに使ってるみたいだけど、『ニンゲン』相手の試験、十分にやったことはあるかな？
……まぁ。コーデリアちゃんが負けるのがイヤなら、やめとくけど」
まるで挑発するような言葉を投げかけるが、決して馬鹿にしている訳ではない。
そのコーデリアという存在が、並みのゴーレムなどとは比べ物にならない程の性能を有しているのは、見るだけでも判る。
その性能を身をもって味わえるのは、いい訓練になるし。何よりも。こうして地金を晒した方が、信頼を勝ち得ることが出来るかもしれないという発想だ。
少女は呼吸を整え、自身に身体強化の魔術をかける。出力は全開。持てる魔力を身体へと流し込む。
■エーテル > 少女の言葉は信用を得ようとするものだが、今回は相手が悪かった。
魔王は魔族を統べる存在、そして、望むのは魔族と人間との共存。
自分にとって敵視している相手ばかりだった。それに、少女は一つの些細なミスをしていた。
向けられる眼に疑心暗鬼の色が深まり始める。
「へぇ…人間、魔族…ね。何も分かってないな、お前は。
魔族は皆を貶める、人間は皆を蔑む、そんな連中だけの共存を目指すお前を、あたしに信じろと？
本当にミレー族を守ろうと思っているなら、何で共存する中にミレー族がなかった？
お前も所詮はミレー族と見下している連中の一人なんだ、本当はさ？
だけど、名乗ったのに名乗り返さないのは礼儀に反するよね…それだけはちゃんとしてあげる。
あたしはエーテル、お前の言う通り隠れ里の住人の一人だよ」
湧き上がる怒りに身を震わせながら、少女を睨み続ける。
怒りの為か、無駄に膨らむ力が見え隠れしてしまう。
そして、少女の次に言った魔王のゴーレムと言うのが、自分のコーデリアが劣っていたと言われる元凶だろう。
ゴーレムはゴーレムだ、たかが与えた命令通りにしか動けない人形なのに…そんな物に劣っていると言われている。
納得がいかない、納得が出来ない、そんな思いが思考を駆け巡る。
「本当にお前はコーデリアを甘くみているね。
人間のお前が、コーデリアの試験？
コーデリアはね、これでも皆を、他のミレー族達を、襲おうとした連中を何人も叩きのめしてきたんだ。
それが、お前に負ける？…やってやろうじゃない」
欠点の一つ、自慢の相方が関わると思考が愚直となる。
そこを突かれているのだ、少女の挑発に簡単に乗ってしまう。
どうやら今はここで派手に暴れても大丈夫らしい。
それなら…コーデリアの実力を見せてやる。
自分は一歩下がり、目を閉じ、コーデリアとの同調を強める。
同調を強めれば強める程、その動きは確かなものとなり、より実力を発揮できるから。
それに合わせ、魔導人形が一歩踏み出し、止まる。
合図を待てば良いのか、勝手に動いて良いのか、それを問うように。
■セイン＝ディバン > 自己紹介した内容。それがことごとく逆鱗に触れまくるないようだったことに気づかないまま。
すとん、と自己紹介を終え、同時に少女の瞳に疑いと怒りの色が灯ったのをみて、おや？ と小首かしげ。
「……ふむ。ふむふむ。
なるほどなるほど。キミはそういう感じなのか。うん。理解した。
言葉が足らなかったな。ミレー族、ってのはオレの中では人間として扱ってるんだけどね。とはいえ、世間様じゃあそうもいかない。けど、ミレー族を一つの『人種』として扱うのは不可能じゃないと思ってる。
要するに、魔物内で、共存を願うヤツラと。亜人含む、人として定義されてる中で、共存を願うヤツラ。その橋渡しができればいい、ってことで。
うん。すまない。説明をするのに、言葉が足らないのはオレの学の無さのせいだな。本当に申し訳ない」
感情の乗せられた言葉。それをまるで受け流すように口にする言葉。出会って初めて。少女が、どのような人間なのかという部分に触れられた気がして。思わず微笑んでしまった。
しかし、相手のことを不快にしてしまったのは事実。少女は深く頭を下げ、非礼と言葉足らずを詫びる。
そのまま、相手が訓練の提案を受け入れたのを見て、少女は腰を落とした。
目の前で少女が一歩下がり、呼吸を整えている。
観察。推測。思考を共有するタイプか。魔力を送り込めば送り込むほど、性能が向上するタイプか。
どちらにせよ……強敵であり、良い訓練になる……下手をすれば、怪我ではすまないかもな、と考え、薄く笑い。
「……来な。お嬢ちゃん。
自慢の相方の性能、堪能させてもらうぜ」
短く言い。指をくいくい、と曲げ、かかって来いとばかりに。
身体強化は万全に発動。全身に力は漲っている。
■エーテル > 「それは真実かもしれない。それは偽りかもしれない。
お前の今の言葉があたしにとってどちらなのか、予想はもう出来てるよね？
どんな言葉を並べても、どんな態度を示しても…相手を信用させるってのは、それだけ物凄く難しいものなんだ。
特にあたし達のような存在を相手にするのなら、もっと細心の注意を払うべきなんだよ」
全てが偽り、全てが虚偽、全てが…だけど、自分がそういった存在であるのに、自分の立場を明らかにしたのは事実。
怒りが完全に収まった訳ではないが、少しだけ冷静さを取り戻す。
本当にそうであるなら、嘘八百並べて騙せば機嫌も損なわなかった…そんな考えも浮かんだから。
眼が捉える少女から、魔力を感じる。
相手が魔導人形と知っていて使うような魔法は限られる。
多分、身体を強化する系統なのだろうと。
それならば、望み通りに堪能させてあげよう…コーデリアの能力を。
「久し振りに少し力が使えそうだよ、コーデリア。
………さぁ、行って！」
言葉と共に、魔導人形は地面を蹴る。それは、地面に足跡が残る程に強い蹴り出し。
見た目は瞬時に目の前に現れ程の速度、右腕を軽く引き、少女の胸元に向かい突き出す。
魔力を感じるのならば、その腕から強まる魔力を感じるだろう。
その拳による突き、それが当たろうが避けようが、その魔力を中心に小爆発、炎が撒き散らされる。