2016/11/09 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にアンブロシアさんが現れました。
■アンブロシア >
極度に体積を失い、身体を形成する触手を失った魔物はより強い肉体を使い繁殖し失いかけた部分を補うべく、様々な場所へ彷徨い歩き、本能が何かを感じて足を向かわせたか、偶々偶然なのか、ミレー族の安息地である隠れ里の一つへと入り込む事に成功する。
普段であれば丈や袖が十分にあまる程の巣代わりのローブも今や裾を引きずり袖を持余すレベルまで弱体化しており、それを引きずる音もまた小さく軽快なモノとなっている。
ずず……ずずず………ずず………
今は月明かりと星が雲に隠れ、射し込む光すらおぼろげな夜。
しかしそれを忘れるほどに芳醇な緑と土の香りが広がっており、魔物としても珍しく心地良い穏やかな気分を感じていた。故に絡み合う音も静かで、滴る粘液もゆるやかで……。
■アンブロシア >
自然発生した生物に近い魔物だからか、緑の濃い香りや空気は普段の荒々しい性質を穏かなものへと変えてくれる。此処まで弱体化していればヒト以外にも力があれば獣すら餌食にし、肉を直接貪る事で生殖以外の方法で強化に勤しんでいただろう。
だが其処まで堕ちる事無く、ある種近くに存在するヒトには不幸ではあるが、通常の状態で繁殖や強化を求めてるだけの余裕みたいなものがあった。
ただし、本当に穏やかになったわけではない。
ただ無駄に力を振るおうと言うわけではないだけ……
もし獲物と定めた存在が逃げようとすれば力づくで押さえ込もうとするだけの狩猟本能のようなものは消えてはいない。
以前魔物は魔物でキケンな事にはかわりはないのだ
ずずず……ず…………ずず…ず……
何か草木の枝か軽いものを引きずる音を奏で、地に生える雑草を踏み曲げ、ローブ姿の小柄な人影は進む。
何時もと変わらぬ酒に酔う人間の歩みのように千鳥足のように、左右にゆらりゆらりと身体を揺らし、危なげな足取りのまま。
周囲に気配を向ける余裕は無い
狩猟の経験が有る者なら魔物は用心も警戒もしてないように感じ取れるだろう……。
それだけ魔物の状態はおかしくもあった。
■アンブロシア >
人間が感じる餓えとは違う、弱体化した自らの存在を強固にしたいと言う欲望ゆえの飢餓。
穏やかな思考も段々と本能に傾き理性は薄れ、身体を形成する群れなす同族を増やす為の生殖本能が燻り始め、擦れ絡み合う触手達が皮膚から滲ませる粘液の量はその燻る本能に比例して増していく……。
ずず……ぼた……ず……ぼたぼた……
次第に足音にも匹敵するほどの音となり、雑草を曲げるだけだった足跡はナメクジでも這ったような僅かな光にキラキラと輝く跡となる。
――そして、香るのは濃い緑の中でも判るほどの生臭い何とも言えぬ粘液の香り。
その匂いの所為だろう、土と緑の香りに涼しげに音色を奏でていた虫達が音を潜め、鳥達も警戒の鳴き声を響かせ始めていた。
■アンブロシア >
静かなミレー族の隠れ家に魔物の這いずる音だけが響く……
今宵獲物を見つける事が出来なかった魔物は何処へ行くのか、それを知るモノは魔物自身のみ……。
生臭い香り、粘液が描く這いずる軌跡……
魔物は闇の奥へと消えていくのであった。
ご案内:「ミレーの隠れ里」からアンブロシアさんが去りました。