2016/08/04 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にルイサさんが現れました。
ルイサ > よろず屋と銘打っていても、実際は請け負う仕事は限定している。
命の危険が伴う仕事はお断りだし、コトに深入りせねば解決しないような深刻な悩みはきちんとした機関に相談するよう勧める。
結局は雑用か探偵業かといった生活だったが―――今回は別だ。

常連客の繋がりでミレーの隠れ里へと物資を届ける依頼が来た時、断る気にはなれなかった。
関わらない方が身のためだとは理解しているが、依然ミレー族を保護している女性と接した影響もあり、戸惑いながらも引き受けた次第だ。
単純に同族と接することに興味があったし、彼らが平穏に暮らす手助けをほんの少しでもするのなら、かつて自分の里を襲った奴らへの意趣返しになるような気がして。
そうして内密に教えられた隠れ里へと夕刻に入り、里の長である老婆の小屋に招かれた。
里の中は平和そのものに見えたが、幼い子たちが外界に出ないよう親が諭したり、王都ならばあってしかるべき設備が整っていないなど、やはり不便さは否めない。
礼を述べて穏やかに話す老婆の目は全てを見透かすようでいて、もしかしたら自分の正体に気づいているのではないかと感じさせたが、あくまで仕事。
事務的な会話だけを交わして小屋を出るとまっすぐ、繋いだ馬の元へ向かう。
もっと里を観察してみたい。色々なことを聞いてみたい。
しかし長居すべきではない。
夕陽を浴びてきらきら輝く馬のたてがみを撫でる掌にはそんな葛藤が込められていた。
――――自分が暮らしていたという里も、こんな感じだったのだろうか。

「…帰らなくちゃ。」

ルイサ > 吹く風に涼しげなものが混じっている。
近づく落日に視線を上げればどことなく、夢から現実へと引き戻された心地だった。
道中どこかで休息したり宿をとるとしても、あまり夜が更けるのは好ましくない。
名残惜しそうに馬の相手をする仕草は中断させて、相棒と共に里の出口へと向かうよそ者。
ここを一歩出れば、里の長の魔力によって出入り口は遮断されてしまうのだろう。
魔法の扱えない自分には場所がわかっていても再び訪れることは難しい。
そんな事実が殊更同種族の彼らとの別離をしがたいものとさせているが、足を進めて現実世界へと戻っていく。

願わくば、彼らが自身と同じ道を辿らぬようにと心で唱えて――――。

ご案内:「ミレーの隠れ里」からルイサさんが去りました。