2016/05/11 のログ
■レイカ > すたん、と木の幹が小気味いい音を立てた。
中身は既に乾いて久しい。この木の幹は既に死んでしまっている。
いや、この幹だけじゃない。……今、私の目の前には”死んだ世界”が広がっていた。
「…………ただいま。」
だけど、私はそういった。ほんの少しだけ微笑んで。
焼けて、倒れた木々が歩くたびに煤をふわりと浮かび上がらせる。
カサ、と音を立てて枯葉が崩れた。
………ここは、私の故郷。
私が騎士団にいたころ―――ミレー族狩りに合って、滅びてしまったミレー族の集落。
中がよかったあの子も、優しくしてくれたお兄さんも、長老様も……。
皆、皆殺されてしまった。
■レイカ > 「……うん、私は元気。病気も何もしてないよ…。」
今、私が立っているのが村の入り口。
その奥は、何にもない。ただ黒ずんだ地面と、焼け焦げた木々が広がってるだけだ。
ずっと、この場所に来るのが怖かった。
何でって言うわけじゃない。ただ―――皆に合わせる顔がなかった。
人間の世界ででも、ミレー族が暮らせるようにしてみせる。
人間もミレー族もない、皆が笑って暮らせる世界を作るために―――。
そんな風に、格好のいい言葉を並べて、みんなの反対を押し切って、若い私は騎士団に入った。
辞めておけと、そんなことが出来るはずがないからここにいろと、皆に言われた。
だけど―――私はそれを振り切って人間の世界へ、騎士団へと入った。
一歩、村の入り口を潜る。
それだけで、私の胸はずきりと痛む。
■レイカ > 「…………。」
一歩、一歩。集落の中心だった場所に近づくたびに、胸が痛む。
これは私の罪の意識。村が襲われたとき、この場に駆けつけられなかった私への。
何も知らなかったでは済まされない。私は―――人間の騎士団にいた。
貴族が、ミレー族を奴隷にしているのを知ったのは私が師団長になったとき。
強いショックを受けた。けど―――何も出来なかった。
私は、ミレー族と自分を天秤にかけて、自分を選んでしまった。
「…………。」
そして。
この集落が襲われたのを知ったのが、半年前。
私が、騎士団をやめてしばらく経ったころだった。
勿論すぐに駆けつけた。けど―――そのときには、この村はこの有様だった。
死体も、何もかも残っていなかった。当たり前だ、襲われてからずいぶんと時間が経っていた。
もっと―――もっと早く、私がここに帰ってきていたら、結果は違ったかもしれない。
もしかしたら、誰かは助けられたかもしれない。
■レイカ > たらればなのはわかってる。
何を言っても、何を感じてももう皆は戻ってこない。
あの耐えなかった笑いも、みんなで遊んだ広場も、もう何もかもなくなってしまった。
ここには、もう誰もいない。
話しかけても、誰も何も言ってくれない。
集落の中央で、私はただ立ちすくんでいた。
空を見上げて、誰もいない集落で。
「……ごめんね…ごめんね………っ
助けにこれなくて、何も出来なくて……。」
私は、誰にも聞かれることのない謝罪を口にしていた。
空を見上げて、歯を食いしばって―――涙を流しながら、ただ謝った。
■レイカ > ―――謝って、許してくれるはずもないのも、わかってる。
助けにこれなかった私を、皆責めるだろう…。
「………うっ…ううっ……」
嗚咽が漏れるのを、止められない。
みんなの声が聞こえるようなきがする。
『お前が、ここを教えたんだ!皆を殺したのはお前なんだ!』
「…………。」
私は、その”声”を聴きながら。
みんなの恨みに抱かれながら、誰にも聞かれることのない謝罪を、ただ繰り返すだけだった。
ご案内:「ミレーの隠れ里」からレイカさんが去りました。