2021/10/20 のログ
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にグァイ・シァさんが現れました。
グァイ・シァ > 真丸に近い月が中天まで登り、黒い夜空が藍色に滲む。
夜空に薄く浮かぶ雲は煙のように白く浮き上がり、それを横切る夜行の鳥の影が映る。

降り注ぐ月光は、アスピダを取り巻く鬱蒼とした森林の中まで届くことは無い。風もなく静謐とした夜の森は、時折繁みを揺らす夜行性動物が居る以外騒がせるものはいない――――今は。

「――――っ…」

獣道からも外れた森の闇から、呼吸とも呻き声ともつかない音が響く。
よくよく見れば闇の中でそこに、『何か』が積み重なっている影。
近くに来たものが居ればその『何か』の影が見える前に、むせかえるような濃い血の香りに気付くだろう。

ずる、と影が蠢き
這い出て来るものがひとつ。
それが先ほどの音の主だったらしい、再び呻き声のようなものを上げて―――やがてそれは、喉奥で笑うような音に替わる。

「――――クク… ハ…――――ッ…」

深く呼吸する音。
次には這い出た影は立ち上がって、ヒトの形を露わにする。
それは積み重なった影を一瞥すると、踵を返して森へ分け入る。
途中、木洩れ日のように差し込んだ月光に照らされた姿は、血濡れた女だ。感情のない顔と言い手と言い衣服と言い、まだ滴る程に濡れているのを構わず、歩みを進める。

あの森の闇で起こったのが仲間割れか追う者と追われるものとの闘争だったのか、今となっては知る者はいない。特にこうして歩みを進めている女にはどうでもいい事だった。
ただ、血濡れた衣服だけはどうにかしなければならない。
―――次の獲物を得るために。

血濡れた女は、水を求めて
草木が茂り根太の張った夜の獣道を、危なげもなく進んで行く。

グァイ・シァ > 血の香りをたなびかせて女は歩く。
水場の方へ向かえば、それを目当てにするほかの生き物たちもいる。
中には、女を獲物とするようなものも居るかもしれない。

その夜、更に濃い血の香りが漂う事になったか、果たして清流に流されて消え行ったか
知るのは、森の中の住人だけ――――

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からグァイ・シァさんが去りました。