2021/03/14 のログ
ジギィ > その内女は歌を口ずさみ始める。
雨音に紛れて、外までは響かない筈のそれは、横穴の中だけでひっそりと響く。

――これは伝説
――この声が聞こえる筈だ、砂を渡る風に紛れて

ぎゅっと強く握りの皮を巻きなおす。
力をこめるタイミングに歌声が乗る。

――悪魔の地とよばれる邪悪で不毛な場所に
――…もしお前が帰ったのなら

ジギィ > ―――歩いても足跡は残らない
―――呪われて希望も無くて
―――一緒に行ったあの場所も…今は影が動くだけ

結弦の具合を確かめて、数度弾いて具合を確かめる。
具合に満足そうににんまり笑うとそっと外の様子を伺う。

―――たとえ光が消えたって
―――後悔なんてしていない…

相変わらず入口の上から細い滝のように流れ落ちるものはあるが、雲間から漏れた陽光が束となって降り注いだ、その一端が近くの樹に落ちているのが見える。
濡れた木の幹はその身に纏った雫を光に変えてきらきらと輝いて、それは女の深緑の瞳が細めさせる。

―――まるで夜明けの星
―――夜に空高く燃え上がる炎を眺め
―――覚えておいて欲しいと望むなら…わたしは…

間もなく雨は小雨になって、森の民たるエルフは足跡に用心しながら森へ漂い出ていくだろう―――

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からジギィさんが去りました。