2020/05/20 のログ
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にエラさんが現れました。
エラ > 城塞都市内部、娼館――――とは名ばかりの、捕らえられた女たちが嬲られる為の場所。
外からしか鍵の掛からぬ部屋のひとつ、招じ入れられた先は他の部屋同様、
寝台と小卓、椅子が一脚あるだけの質素な空間だった。
時に得体の知れぬ香が焚かれていたり、生々しい性臭ばかりが満ちていたり、
そうした臭いにも、ある程度の凄惨な光景にも、随分慣れたと思っていたが。
小柄な人物一人分程度の、ささやかな盛り上がりを見せる寝台に近づき、
そっと上掛けを持ち上げて中に包まるものの様子を一瞥するや、
自然、眉宇に深い影が刻まれるのが解った。

己を此処へ連れて来た兵士が、どんな様子かと問うてくる。
どんな、とは詰まり、引き続きの仕様に耐え得るか、という意味なのだろうが。

「………無理、でしょう。
 傷が癒えれば、ということでは御座いませんわ、
 ……彼女には少し、休息が必要です」

恐怖を、絶望を、受け止め、飲み込むだけの時間が。
たとえ其の先に待つのが、更なる恐怖であり、苦痛であり、絶望であるとしてもだ。
不愛想な表情で左右に頭を振りながら、携えてきた小さな布袋の中を探る。
取り敢えずは目立った外傷に、塗り薬ぐらいは与えるべきだろうか、と。

エラ > 其れは困る、と兵士は声を荒げる。
曰く、此の部屋の女は昨日仕入れたばかりで、廊下には未だ、
幾人もの兵士が順番待ちしているのだ、と。
――――己が返すのは、双肩が上下に揺れる程大きな溜め息。

「そんなこと、私に仰られても困ります。
 たったひと晩で、此処まで使い潰したのは、
 貴方がたのお仲間じゃありませんか……」

だからこそ、回復させる為にお前を呼んだのだ、と兵士は言い募るが。
そも、万能には程遠い己としては、もう一度頭を振ってみせるより無く。

「………明日の朝までに、此の娘が死んでも構わないならどうぞ」

其れも困る、と渋面をつくる兵士。
どうやら、此の娘は彼等より偉い誰かの気に入りであるらしい。
あるいは彼女が此処まで疲弊している元凶も、其の誰かなのかも知れないが、
己には、どうでも良いことである。

「外でお待ちの方々には、別の娘で我慢頂くよりありませんわ。
 ……さ、少し出ていらして。
 其れとも、手当てだけでも手伝って下さるの?」

そう告げながら軽く睨めつけると、生殺しに遭うのは御免だとばかり、
兵士は靴音も荒く出て行ってしまう。
閉ざされた扉には恐らく、外から再び鍵が掛けられるだろう。
ふっと再び息を吐いて、己は手早く、寝台の上で意識を失くしている娘の手当てを始める。

エラ > 薬草を磨り潰した自作の塗り薬と、幾らかの回復魔法。
己に出来る手を尽くし終える頃、廊下が騒がしいことに気づいた。
もどかしげに鍵を開け、荒々しく扉を開けたのは、壮年の騎士と思しき男。
娘を自室へ引き取ると言う男を、勿論、己は止めたりしない。
其の権利も無ければ、彼女に其処までの義理も感じぬ故に。

そうして無人となった部屋から、己は一人、静かに出て行くことに。
廊下の彼方此方には、先刻の騎士が制裁を加えたと思しき男たちが転がっていたが、
生憎、薬は先刻の娘で使い果たしている。
投げ出された彼等の足の間を擦り抜け、己は此の建物を後にする。
有形無形の首輪で二重に縛られた身、何処へ逃げることも出来ないのだが―――――。

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からエラさんが去りました。