2023/05/28 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中」にジン・ジャオファさんが現れました。
ジン・ジャオファ > 少し強めの風が吹く。
木々を揺らし、うねりを作り、ざわめきのように音が反響する。
そんな騒々しい山の中。九頭龍山脈と呼ばれる巨大な山脈地帯にその男はいた。
表向きは観光客。九頭龍山脈に湧くという温泉を楽しみに来たというだけ。
しかしその風貌────射干玉の黒髪に、北方の帝国シェンヤンの旅装は珍しく、人目を引く。
そんな視線も介さず、男は温泉宿が並ぶ山間の建物を抜けて、山中に入っていった。

その裏向きの目的は、この地に拡がる古代遺跡。そこに眠る遺物。
王国が他国との戦争に持ち出してきたブツが、どれほど以前からあるのか興味があった。
魔物も出れば賊も出る。ついでに言えばミレー族がこそこそ隠れ住んでいるらしい。
そして何より、魔術鉱石────朱金や辰金の存在。
男がかつて忠誠を捧げた神君のごとき始皇帝が、不老長寿を求めて欲しがっているブツ。
それをお目に掛かれたら、なんて軽い気持ちだったが……。

「こいつぁ……八卦山とどちらが広大かねぇ」

男は、広大すぎる山脈地帯を眺めながら、そんな風にぼやいていた。
少なくとも男一人では諦観も浮かぶというもの。地図作成用に持ち歩いていた羊皮紙をくるくると丸め直した。
山間の山中、少し開けた場所で大きな石に腰掛けながら、懐から煙管を取り出す。
とりあえず一服したら宿へ戻ろう。そんなつもりで、風に吹かれて髪を揺らす。

ご案内:「九頭龍山脈 山中」からジン・ジャオファさんが去りました。