2022/12/24 のログ
■ゴーシェ >
――――― ぐじゅ っ。
ロッドを握る掌に、手応えがあった、と思う間も無く。
夜のしじまを切り裂いて、悍ましい悲鳴が、絶叫が轟き、娘の鼓膜を劈いた。
「ッ、――――――――― な、なん、…… ん゛、ぶっ!?」
ぶしゃっ、と勢い良く弾けた、体液と思しき飛沫、それは、まだ良い。
けれども己の攻撃が齎した相手のダメージを視認するより早く、視界が飛沫に覆われてゆく。
四方八方から凄まじい勢いで浴びせられたそれに、一瞬で濡れ鼠にされたばかりか、
声を張ろうと開いた口といわず、見開いた目といわず、魔物の放つ粘液を浴びて―――――
噎せながらもいくらかは嚥下し、皮膚から、粘膜から、なす術も無く吸収してしまう。
マントも、その下に纏うローブも、何もかもがぐずぐずに、どろどろに濡れて、
蒼褪めた娘の頬さえ、薄桃色に塗り潰されてしまうほど、したたかに『攻撃』を浴びて。
甘い粘液の罠に、今度こそ完全に取り込まれた形で、ロッドが手から滑り落ちる。
金属製ではないそれは、溶けたりはしないけれど、もう、どこに転がって行ったのやら。
遅ればせながら、両手で顔を覆い、きつく目を瞑り、咳き込みながら一歩、後退ろうとするが、
果たして魔物は、その退却を、逃げを、許すだろうか。
■ミメシス > 片や金属を溶かす効果をもった透明な粘液。
片や『雌』に対して肌の感度の向上と嚥下を摂取を続ければ栄養はあれど微弱な依存効果のある危険な薄桃色の粘液。
どちらも香りは腐った果実を思わせる甘い甘い香りである。
踏みつけ、それだけで足りず、或いは確認のためにロッドをつきたてた獲物に対して吐きかけた二種の粘液は柔肌を伝い布を伝い、ドロドロに穢し犯すだろう、犯し続けるだろう。
僅かでも味覚に入れば癖になりそうな甘さを、肌に浸み込めばその柔肌には甘美な刺激をより甘美にさせる効果を押し付けながら、ゆっくり、ゆっくりとミメシスは大きく広げていた身体を縮めて、獲物の背後から肉塊の身体で圧し、一方では柔らかな弾力ある肉塊の身体で受け止めるだろう、挟み込んで捕らえようとするだろう。
――…残ったのはまた闇。
獲物を挟み包み込んだまま擬態化を再開すれば其処には何もない、何かあった形跡は見つかるが、其処にはもう何も無いのだ。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」からゴーシェさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」からミメシスさんが去りました。