2022/02/12 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  山賊街道、なんて呼ばれるからにはもちろん奴らが出没する。
 し、当然遭遇もしてしまう。

 昼日中、寒風吹きすさび弱弱しい日差しのもと図らずも猛ダッシュで街道から山賊に負われ逃げる女が一人。

「もぉおぉー!! だーかーらーイヤなのよここー!!」

 元気に苦情を云いながら藪を突っ切り、大樹を避け、突き出た木の根を飛び越えながら追跡して来る刃毀れした剣を手にした髭面の、いかにも云った風体の男を振り切っていく。

『待てコラー!!』

「それで待つなら最初っから逃げないわー!」
 
 飛んでくる怒声に向かって律儀に返しながらも足は緩めない。
 地の利はどうしたって向こうにあるのだから、こっちは精々この脚力を限界まで発揮してスピードで物を云わせるしかない。
 だからわき目も振らずに道なき山中を駆け抜ける。

 相当走った所で背後から投げつけられていた罵声がいつの間にか途切れていることに気づいては、はあはあと呼吸を乱しながら脚を止めずに振り返った、直後―――

「えっ…?!」

 ず、と踏み込んだ先の足には地面が存在せず――切り立った崖の向こうに浮いていたかと思えばそのまま、大きく前傾し、

「っきゃああぁぁぁあぁぁー!!?」

 悲鳴の尾を引き連れて真っ逆さま。逃げるのに必死な余り、前方の茂みの先が崖になっていることに気づかずに悲劇は起こる――

ティアフェル >  あるべき足場、土が、地が、面が、地面が、ない――!

 何もない中空へと思い切り踏み込んでしまい、咄嗟に重心を切り替えることもできずそのまま転がり落ちていく―――

「あぁぁあぁぁぁぁぁぁー!!」

 悲鳴が下へ向かって一緒に落下していく、その叫び声の先が微かに崖の上に引っ掛かって、しかし刹那に掻き消えやがて崖下の地表に叩きつけられた。
 
 騒がしい悲鳴交じりのどしん、と鈍く低い衝突音の後には、しんと静まり返る一帯。
 崖下で意識を失い、所々に裂傷を負い、頭部から流れる血をべったりと重く土に吸わせながら倒れ伏す一人の女。

 一応息はあるようだが、軽傷とはとても云えない有様。

 一見すると生きているのかどうかすら怪しく映りそうなほどぴくりともしない。

「………………」

 返答がない、ただの屍のようだ。

 そんな雰囲気。近づいてよくよく見ればそれには当てはまらないことが辛うじて判るが。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にエルドさんが現れました。
エルド >  
休日、それはとても貴重なものであり
無駄にスべきものではない。
であるからして、この男はときに騎士を辞めたくなって
温泉を掘り当ててそこに宿でも作ろうと画策し

面倒な戦闘を避けて賊が以内であろう場所をスコップ担いで歩き回っていた
勿論治療キット持ち込みで
その折、どこかで悲鳴が聞こえたような気がしてのそのそと
その場所へと向かった、ら。

「う わ ぁ」

遠目から、明らかに縁起でもないものを発見した
これから温泉を掘り当てようというのに、とため息吐きつつ
少しだけ近づいて様子を見ようか。

すこしでも、ピクリとも動けば近づこうと決めて。

ティアフェル >  崖から落っこちていく人影。間違いなく不吉極まりない光景。
 そこそこの高さから真っ逆さまだったので完全に意識は途絶え。
 べったりと血にまみれて転がる様子は一見すると息があるようには思えない。

 けれど、注意深く観察すれば微かに息があり薄く胸のあたりは上下していて辛うじて生存していることが見て取れる。

 そんな現場に夢追い人がスコップもって参上しているだなんてもちろん知らない。予想もつかない。

 ただただ、静かにまあまあ無残に横たわり。

「……………」

 もちろん無言。完全に意識喪失していて大怪我による痛みを感じる余裕もない。
 そんな投身自殺染みた有様にはあまり近づきたくないかも知れない。

エルド >  
少し遠くから観察してみた結果、まだいきていると判明した。
まあまあ無残に横たわっているその身体は胸のあたりが軽く上下していた。
ここで見捨てるのも気分が悪いし、悪いことが起きるかもしれないと
そう考えた結果、助けようと決めた。

「大丈夫かー……いまお兄さんが助けに行くぞー」

そこそこやる気のある声で声をかけながら近づく
まぁ聞こえてないだろうがこういう場合は声がけが大事なのだと
戦場ではそう教えているので声をかけつつすぐとなりにまで接近。

「……よく生きてるなぁこれ」

一見すれば死んでいてもおかしくないような怪我をしている
ようにも見えるが、頭からの血はよく出るのでもしかしたら
と、思うものの詳しくは見ていないため分からない。

「可愛いのに、こんな所で……くっ!」

もう死んでいるような発言しつつ、腰につけていた
治療キットを取り出し、中にある外傷用のポーションと包帯を取り出す。
それは生きている時にかければ激痛であるために意識を失っている方がちょうどよいと
傷を探していこうか。

ティアフェル >  この状況で望めるのは、追ってきていた山賊が確認にきた、ということくらいだが。
 以外にもその例に当てはまらない、最善とも云えるべき偶然が発生した。
 治療方法を有した者の救助である。
 それがいかなる確率で起こり得るものか想像もできないが、幸運であることは違いない。悪運とも呼べるけれども。

 近づくながらかけられたどこか軽い声は失った意識の奥底では届かなかったけれど、何かすでにこと切れている扱いで好き勝手なことを云われていては、そういう言葉は深層意識にも届くのかぴく、と睫毛が震えた。

 夢も見ないただ昏倒している最中、あり得ないことだが何か気になることを云われている気がしていて。

「―――……」

 しかし、指先ひとつ動くでもなく、打ち付けて割れた後頭部から血を流し、すり切れた衣服の下の全身打撲や擦り傷まみれで、手足の骨も一本か二本折れていそうで。実際右手の手首がおかしな方向にねじ曲がっていた。

エルド >  
「うーん……ひでぇなこりゃ……お」

全体を詳しく見れば、結構悲惨な状況であった
だが深く斬られたわけでも、頭を潰されたわけでもない
ならばまだ助かるだろう。
そう楽観的なのは戦場で色々な死を見てきたからだが
と、考えて頭周辺を見ていた時の事、あるワードに反応したのに気付き。

「……可愛いよ! 天使! よっ! この世に舞い降りた女神! 美神!」

可愛いのは本当のことなんだけれど、そう声がけしつつ
手首も気になるが、まずは頭の出血を止めるところからだろうと
頭の割れた部位へとポーションをかけたのならば
みるみると、応急手当程度に傷はふさがっていくか。
薬効が高いのは、高いのもあるが生きている時にかければ
軽い失神程度ならば飛び起きまた気絶するという壮絶な痛みとも引き換えだ。

「生きてろよー! 生きてたら格好いいお兄さんとデートできるからなー!」

格好いいとか自分で言いつつ
頭へとゆっくりと包帯を巻いていき、とりあえずの処置は終わったのなら
添え木も取り出し、右の手首がおかしな方向にねじ曲がっているのを
ゆっくりと元の正しい場所に戻し、他は問題か確認した上でぎっちりと
添え木をして包帯を巻く。

「医療行為……医療行為だからねー?」

そうして、ゆっくりと仰向けにさせたのなら、服を胸元まで引き上げようか。

ティアフェル > 「……………」

 なんか、やたらチャラチャラした声がかけられている。なんのつもりなのかまったく分からないが、反応したのはそこじゃない。
 死んだかのような扱いが引っかかったのであった。
 しかし、そこまで云われたら意識が少しでもあれば、嘘くせえ、とでも悩まし気にボヤいただろう。

 最もダメージを受けたと思われる頭部の外傷へポーションが掛けられればみるみる癒されていくとともにかたくなに閉じていた意識も引き上げられ始めていく。

「ぅ゛……」

 なんかデートだのなんだの発する声が大きくて頭に響く。
 何を云っているのかはっきりと認識した訳ではないが、意識が戻ってくるにしたがって伴う痛みに呻き強く眉をしかめ。

「ぅ、っく……あ゛……!!」

 全身痛くて特に頭部がガンガンと割れるように痛み、呻くなりまた気が遠くなっていく。

「っぅ、う゛っく……」

 苦し気に喘ぐ最中、衣服が引き下げられていっていて、それを認識できた訳でもないだろうが痛みに苦しみながら無意識にその手をが、と掴んでいた。
 そのタイミングは良すぎてまるで咎めているような。

エルド >  
「いいねー……死んだような顔がとても可愛い!
 こっちまで天に召されるようだよ! 最高! こんなもんでいいか」

なんだか反応が悪かったので褒める作戦は途中で切り上げた
頭へとポーションをかけてみたらそっちのほうが効果があったので良しとする。
とりあえず痛みを感じれるレベルなのはわかったので
これで問題はないだろうと一息付くが、手首の治療を終えた後

「……こいつ…! 無駄にガードがかてぇ…!
 ……ふぅ、服はそのままにするからなー?」

ガッと掴まれた手、それにこの女のガードは鉄壁という認識を持ち
眼福ならずか、と肩を落としたのだが、その手を逆に握ろうか。
このまま置いていくのもちょっとなぁ、と咎める気持ちは持ち合わせていたようで。

「服の上から見た感じ、どこも出血してないから問題ねえな
 後は意識が戻っていくだけなんだが……うーん」

どこかの骨は折れているだろうが、一見した限りでは
手首以外に酷いところはなかったように思う。
後は意識が戻るまで待って、街まで送り届ける。

「ま、いらん世話かもしれんけど」

このまま置いていっても問題無さそうな感じではあるが
それはそれでなんかあれなので、手でも握って意識を取りもどすのを待っていようと。

「待ってる家族とかいるかー? 俺は一応いるぞー」

とりあえず、声がけだけは継続していこう。

ティアフェル >  引き続きチャラくさい声が降り注いでいる。
 ナンパ師の救助だろうか、と目が覚めたものなら首を傾げたところだ。
 適当に色目を使っておけば何か特典があったかも知れないが、残念ながら半分死んでる。

 無事な手が伸びてその手を掴んでいたが、行為を阻止するというよりも溺れながら藁でもつかむようなそんなすがるようなところがあったが、結果オーライ。
 この厳寒の中脱がされずに済んだ。

「……ぅ、ぁ゛……ん……」

 呻く声は出るが碌に発声できない。頭が割れそうで、呼吸もはあはあと絶え絶えで。
 しかし、即座に行われた処置のお陰で多少は状態が向上しているのは間違いなく、硬く閉じていた瞼が震えてうっすらと開く。
 ぼやけた視界の中、手を握る知らない男性とかけられる声はどこか呑気に響いた。

「……ん……、だ……r……」

 誰、と唇から零れた誰何は酷く不明瞭で掠れ。
 全身痛くて身体を起こせないまま、

「っ、痛い……いたっ……痛い、いたぁ…っ」

 呻いてじわりと痛みに目の端を滲ませて。ひたすら痛がりながら、掴んでいた手を放し、負傷した状態に気づくと痛みで碌に集中が利かないまま、必死で詠唱を紡ぎ始めた。
 ゆっくりと時間がかかってしまいながらも、どうにか回復魔法を施し。

「あぁ……まだいたい……」

 ぐったりと横たわったまま、力ない声で唸りそれから先ほどよりしっかりとした声。ぱちぱちと目を瞬きながら、

「………あなた、だれ……?」

エルド >  
結果オーライとなってしまったが、此方も此方で
柔らかい女の手を握れるということで役得感はある
特段意味もなく、喋りかけていたのだが。

「ん? ああ、戻った戻った」

声をかけながらボケーッと空を見ていたわけだが
隣からうめき声が聞こえそちらを見てみれば
閉じていた瞼が開かれていて、綺麗で澄んだ瞳が見えていた。

その瞳に引き込まれるように、金の瞳を向けていたが
柔らかそうな唇からこぼれる不明瞭な言葉に
小さく笑いながら口を開き。

「無理すんな、さっきまで死にかけだったんだ」

あれだけの傷を追っていればそれは痛いだろう
気の毒に思いつつも、ポーションをかける時に起きていなかったのは幸いだろう。
そして、回復魔法を行使する様子には驚いたように目を開き。
ならもう大丈夫だろうと、安心したような息を吐いた。
存外に心配していたらしい。

「通りすがりの格好いいお兄さんで、名前はエルド
 左手首と後頭部を中心に回復魔法しときな。
 左手首は骨折、後頭部は割れてたからな」

意識が戻ったと見るや少し真面目モードでそう話す
ふにふにと柔らかい手を揉んでいるので少々あれだが。

「そういう死にかけの、可愛いお嬢さんは?」