2022/02/04 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にE・T・D・Mさんが現れました。
E・T・D・M > 自分は『迷宮』という、その一面だけではないという事を、今回はお伝えしよう
本日は無名遺跡の外部にへと這い出し、近隣の山中にまで『出張』して来た
『エロトラップダンジョン』が定置に留まり続けているだなんて事は固定概念だ
街の定食屋だって出前をやるし、娼館のお兄さんやお姉さんがデリバリーされる事だって在る
AM(アダルト・ムービー)も多種多様性を誇る、室内物ばかりがメインじゃない
中には屋外というシチュエーションに焦点を定める事も在るのだ!
かくして『撮影者』として今回においてはこの山の中にまで遠路遥々とやって来た
此処で何をやるのか?その仕事ぶりをご照覧有れ!

E・T・D・M > ――……空が焼けていた。夜の天蓋を照らし出す緋色の光が九頭竜山脈の一角より放たれ続けている
おお!見るがいい!山中に在った農村は、今や脅威の手に襲われていた!
長年をかけて築き上げて来た家々が投じられた炎に巻かれ、虚しくも灰塵と帰して行く
春の収穫を待ち続けていた田畑は無作法な侵略者達に踏み拉かれ、見る影も無い
今も轟然と天掴まんとする程に燃え盛る大火の極光に照らし出され
我が物顔で街中を闊歩するシルエットが浮き上がって見えるだろう
その大半は崩れた賤しい獣の頭の形をしている、そして原始的ながらに武装に身を具していた
手にした蛮刀が振るわれる都度にシメられる羊の様な悲鳴が木霊し
大地に吸われる赤い血だまりを踏み付ける濡れた音が曇り立った
略奪と殺戮の『劇場』が今此処に催されている

但し、文字通りの『劇』
全てにおいて本物では無い
村は破壊する為に作り上げた壮大な『セット』であり
今も血飛沫をあげて倒れる無辜の民草も
悍ましき獣に圧し掛かられ姦淫の憂き目を見る村娘も
それら全ては魔力によって織り上げた偽りの肉の人形
一夜の夢であり、蛤の吐き出した蜃気楼に過ぎない

E・T・D・M > 派手に引き起こした一つの事象は周辺の意識を惹き付ける為のものだ
例えば君が街中を歩き、馬車の事故を認めたとする
一体何があったのだろうと、その目はつい追いかけてしまうに違いない
平穏から外れた『事件』というものは人心に宿る好奇心を掴んで手繰り寄せる
それに何かしらの危険が隣り合わせであったとしても
中には『何が起きた』のかを知りたいが為に歩みを寄せる者すらも居る
好奇心は猫をも殺すとは良く言ったものであり
今も盛大な山肌の一つを使ったキャンプファイヤーは煌々と盛り続けている
円を描くように周辺の木々を伐採し、最低限の延焼に留めているが
それでもある程度の規模の山火事には違いも無い、生木が火に炙られて弾け
水蒸気と濃い煤塵芥を孕んだ黒い煙が狼煙の如くに空にへと昇り続ける……――

E・T・D・M > 蛮行は演出され、略奪される一方の村人たちの悲哀を映し出していた
例えば明日のパンの準備をしていた一人の村娘が居たとしよう
突如として降って湧いた災難に凍り付き、外では村人たちの戸惑う悲鳴が聞こえて来る
父母は家近くの納屋に隠れているように言いつけ、農具を手にして外の様子を見に行く
村娘は怯え竦んで納屋の隅に蹲っていたが、間も無くしてその戸は開かれ
迎えに来た父母ではなく異形の集団に狂乱しながら生地を練る為のめん棒で健気にも殴り掛かり
しかして敵う道理が在る筈も無く、虚しくも盛った獣たちに
家畜小屋の畜生も同然に組み伏せられ絶望の憂き目を見る…
そのようなドラマも『襲撃を受けた村』という舞台中の数在る悲劇の内の一つに過ぎない

E・T・D・M > それらは『撮影』における前菜だ、フィクションがノンフィクションに変わる瞬間はやって来る
只ならぬその出来事に引き寄せられ、食いつく者達が現れ始めるのだ
冒険者、傭兵、或るいはただの旅人、その素性までは一切も知らない
一体何を目的としてこの『舞台』に上がってきたのかも
義勇に駆られ村を助けに来たのか、または是幸いと火事場泥棒か
もしくは単純にして明解なる好奇心に背中を押されて此処までやって来たのか
飛び入りの役者たち!彼らが居なければ全ては予定調和で終わってしまう!
剣を揮い、今も村なる薪木を焦がして拡がる業火の中を走るがいい!
一方的であった殺戮に抵抗の剣戟が響き渡り、新たなるストーリーが場にへと織り込まれる!
奪うばかりであった略奪者達は気圧され、倒れる者達も出て来るだろう
魂の通わぬ木偶の坊より、生身の者達が劣るなどという事が果たしてあろうものか
状況は廻り続けて転変し、外部から入り込んだカオスの様子によって先の読めぬ世界が此処に出来上がった

秩序は存在せず、場は混沌に満ち溢れる
統制は取れず、各々が思うが侭好きな侭に自らの欲望に殉ずるのみだ
匙加減を見誤ってはならない、決して必要以上に戦力の差異を拡げず、拮抗の状態を維持しなければ
『視聴者』が息を呑み込み、手に汗を握るその演出の為に
入り込んで来た役者たちにも多少の手傷は負わせはせども
絶対に殺傷には至らぬように細心の注意を払い、神経を戦場にへと張り巡らせる
『主役』に相応しき存在は果たしてあらんや?

E・T・D・M > 攻防は繰り広げられ(踏み込んだ者達にとっては)命がけの闘争は続けられる
或るいは己の存在の本質に基づくような『画』は撮れないかも知れない
しかして、それもまた『次のシーン』にへと至るが為の伏線だ
悪しきを挫きて栄光の勝利をその手にへと掌握する者が居るだろう
しかし趣味の悪い大衆達には、かくなる英雄が次の瞬間には躓き
屈辱の泥に塗れて見る影も失う有様と成り果てるその姿を見る事に、黒い期待を抱く者も居るのだから
星明りが眩いが程にそれが失墜し、損なわれた様こそも美しい
されば此処で英雄を作り上げる事も、より『良質な作品』を構築する過程に他ならない
正体不明の魔物達の発生、その打ち倒した屍山血河を大地に満たす挑戦者達が、今回は優勢のようだ
今回は自分の敗けという方向性に『舵を取る』のが良いバランスだろう

かくしてや時間を経る毎において地獄の怨嗟は希釈されて行き
山脈の一角を灼いていた炎も間も無くして鎮火の一途を辿る事になる
しかして掃討が終わったその後に、踏み込んだ者達はさぞや首を傾げる事になるだろう
何故ならば一夜を明けて陽を拝む頃には、そこに積み上げられていた筈の魔物の屍
だけならまだしも襲撃を受けて累々と倒れていた村人たちも、それどころか倒壊した村の残骸すらも
悉くが生分解されて焼けた灰燼と同様の粒子となり、綺麗さっぱり消え去ってしまうのだから
あたかも山の狐狸妖怪に抓まれたかの如き
しかして報酬として残った金品と、焼け残った木々ばかりは本物だ
皆は何があったかも解らぬ侭に帰路につき、そして此処で起こった不可思議な出来事を街や酒場で
酒の肴として口にする機会にも恵まれる筈だ
そうすればこの近隣にへとまた注目が入り、人の足が運ばれて来るという次第なのだ……

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からE・T・D・Mさんが去りました。