2021/12/27 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にエリザベートさんが現れました。
■エリザベート > 月明かりばかりを頼りに、夜通し山中を彷徨い歩いて。
いま、朱のいろが東の空を染め始める頃――――女は漸く、街道らしきものに辿り着いた。
王都の整備された街路とは違う、土埃の舞う悪路ではあるが、
兎に角、辿れば何処か、ひとの住まう場所へ続いている筈。
――――――行き会うひとが善人ではない可能性は、未だ、考えたくなかった。
襤褸布一枚を巻きつけただけの肢体、素足も既に傷だらけで、
一歩踏み出すごとに眩暈を覚えふらつく程に疲れ切っていたが、
足を止めることは出来ない、振り返ることもしない。
ただ、ただ、逃げなければと――――其ればかりを考えて、
女は何処へ続くとも知れぬ道を、よろよろと辿り歩いていた。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にエズラさんが現れました。
■エズラ > 街道沿いの茂みの奥、そこにぽつんと張られたテントの中から、のそりと男が姿を現す。
人の気配を感じ取り、そっと周囲を窺う――戦仕事にありつけない日々も、時折こうして山中で過ごし、野性的な勘を鈍らせないための行動であった。
焚き火の残り火を松明に移し、向こうからやって来る誰かに向け、叫ぶ。
「そこで止まれェ!こんな時間に、どこのどいつだ――」
■エリザベート > 背後からいつ迫るやも知れぬ、足音にばかり気を取られて。
野営をする誰ぞの存在に気づいたのは、其の男の声が薄闇に轟き、
朱い焔が行く手に躍った、其の瞬間のことだった。
「―――――――― っ、……!」
悲鳴が喉の奥で絡まり、細腕で我と我が身を抱き締めながら、
女は怯えた表情で立ち竦み――――――其れから、逃れようと踵を返した。
街道を逸れればまた、迷ってしまう危険性は高い。
けれども、掛けられた声が紛れも無く、男のモノであると思い至れば、
見つかれば、無事で済むとも思えなかった。
逃げ足は弱り切った女の其れであるから、逃げ切れるかどうかは、
偏に、相手に追う意思があるかどうかにかかっていたが―――――
■エズラ > 炎の揺らめきに陰ったのは間違いなく人影――それも女。
こちらの声に反応するやいなや、踵を返して駆け出した。
道に迷っただけか、夜盗の斥候か何かなのか――いずれにせよ男の行動も素早い。
放っておくことは出来なかった。
「止まれって言ったんだぜ!逃げろとは言ってねぇ!」
松明を片手に、一気に距離を詰め――その細腕を捕まえようと腕を伸ばす。
■エリザベート > 男の声、男の足音。
其れらから逃げてきた女が、止まれと言われて従える筈も無い。
足を縺れさせ、木々に襤褸布の端を引っ掛けながら、
新たな脅威から逃れようと―――――
「ひ、ッ――――――――
いや、嫌あああ、ぁ……、
は、なして、離して、助けて、ぇッ……!」
腕を掴まれ、男の膂力に振り回されるよう、引き戻されて倒れ込む。
相手の貌も風体も分からぬ儘、女は恐怖に引き攣った表情で、
掠れた悲鳴を上げ、懸命に身をもぎ離そうとする。
襤褸布一枚纏っただけの、豊かな裸身の弾力を、惜しみなく男に伝えながら、
非力な腕が、足が、何処までも往生際悪く暴れようと。
■エズラ > 苦もなくその腕を捕らえると、もんどり打って倒れ込みながらも必死に抵抗する相手を、これまた苦もなく背後から羽交い締めにする。
「オラ、暴れんじゃぁねぇ――」
相手の風体を見るに、簿の布一枚を纏っただけという、奴隷にしてもひどい格好。
しかし、それに反するかのように、その顔立ちには一種の品位を感じる。
はて、一体、本当に何者なのか――しかし、いずれにせよ、そんなことは最早男にとってどうでもよくなりつつある。
羽交い締めにした腕に伝わってくる、ふくよかな肢体の感触。
数日間も山に籠もりきりだった男にとってそれは、どんな獣よりも上質の獲物。
「ムフッ、どこの誰だか知らねぇが、そう騒ぐんじゃあねぇ――」
片手で口を押さえ、片手で柔い腰を軽々に胸に抱きかかえながら、己のテントまで連れ去っていく――
■エリザベート > 「いや……っっ、おね、が…… 助け、いや、やぁあ、あっ…!」
逞しい腕でがっちりと、羽交い絞めにされれば逃れられる筈も無い。
けれど、其れでも、―――――逃げなければ、酷い目に遭わされる。
そんな考えばかりが、女の頭を支配していた。
巻きつけただけの襤褸布が、解け、滑り落ちてしまう程に、
暴れて、藻掻いて、のたうつように。
然し、結局は膂力に勝る男を振り解くことなど出来ず、
口を塞がれ、抱え上げられて、テントの中へ引き摺り込まれる。
其の中で何が起こるか知るのは、ただ、ふたりのみと―――――。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からエズラさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からエリザベートさんが去りました。