2021/05/10 のログ
■アルシェ > 九頭龍山脈の中腹を走る街道――そこから外れた森の中で少女がひとり木の幹に背を預けて崩れ落ちていた。
足場の悪い地面には点々と赤い雫が、まるで道標のように少女の元まで跡を残している。
数ある遺跡のひとつへと探索に向かったのは良いものの、そこは運悪く山賊どもの塒になっていたらしい。
ばったりと出くわしたのがまさに運の尽き。
その場で数人は沈めたけれど、何せ数が多い。
先方もこのところ実入りが少なかったのか、小娘ひとりに対して躍起になって追いかけてくるものだから振り切るのも容易ではなく。
どうにか森の奥まで逃げ込む形で撒いた……と思いたいけれど、それも定かではなく。
そうでなくとも魔物か獣にでも出くわしてしまえば、今の状況では対処しきれない。
浅く荒い息を繰り返しながら、暗くなった空を仰ぎ見て。
「………おなか、すいた………」
ポツリとそう零した途端に、きゅぅーっと切なげな鳴き声があたりに響き。
■アルシェ > 食糧を入れていた背負い袋は、道中で山賊の顔面に投げつけてしまっていた。
水や調理器具も入っていたから、なかなかの高ダメージを叩きだしていたはず。
それで落とせたのがひとりきりと言うのが、少し残念なところ。
身を起こそうとするも、身体に力が入らない。
夜も更けて気温が下がってきている。まだ冬場でなかっただけマシではあるけれど、
このまま獣に見つからなかったとしても風邪をひいてしまうかもしれず。
どうにか痛む身体を押してポケットを漁るけれど、干し肉のひと欠片はおろか、火打石すら出てこない。
思わず出てしまいそうになったため息を呑み込む。
そうしたところでお腹が膨れるわけではないけれど、気が滅入るよりはマシだろう。
ポーションの類もすでに使い果たしてしまっているから、今できることと言えば応急処置くらい。
服の裾を切り裂いて、ざっくりと抉れた脚の傷へと巻き付ける。
「さすがにこのままだとヤバいかも……目も回って来たし。」
疲労のせいか、それとも空腹のせいか。
視界がぐるぐると揺れて、やはり立ち上がれそうにはない。
ちょっとでも体力は温存しておかないといけない。
にも拘らず、近くの茂みがガサリと揺れる音が響き―――
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にタマモさんが現れました。
■タマモ > 九頭龍山脈、そこに居る事に、大層な理由はない。
…と言うか、理由があって、行動する事の方が、少ないか。
ともあれ気が向いたので、ふらりとやって来ました、九頭龍山脈。
そんなノリで、適当に歩き回っていた訳だが…
暇潰しにもならない、そんな連中に出くわした。
そもそも、ここでも色々と遊んでいるのだ、この付近を根城にしている賊達からも、それなりに恐れられている存在。
むしろ、相手側が恐れ戦き、どこかに行ってしまった訳で。
とは言え、あの様子、何かを探しているようだったか。
そう思えば、興味は向くもの。
そんな成り行きで、適当に、また歩き回っていれば。
運が良いのか悪いのか、その場所に到達するのだった。
「………ふむ、この付近っぽいんじゃがのぅ…」
がさがさと、茂みを掻き分け、ひょい、と顔を出す。
そんな呟きを洩らしながら、ぐるっと視線を巡らせれば…
そんな姿が、その相手には、ちょうど見えるだろうか。
■アルシェ > はたして獣か、魔獣か。それともさっきの山賊どもか。
いずれにしても、起き上がれもしない状況では、その先はないに等しく。
次第に近づいてくる音に、最後にもっと美味しいものを食べたかったと悔いが残る。
このままでは、こちらが美味しく食べられてしまうだろうから。
やがて暗がりの中でもはっきりと視認できるほどの距離で茂みが揺れる。
そうして姿を見せたのは、小柄な女の子
夜闇の中でも良く見えるその明るい玉子色の髪には見覚えがあり。
何よりぴょこんと揺れる狐耳と尻尾に、「あっ!」と声が出てしまう。
「タマモさん! 助けてー! へるぷみー!」
貧血気味で顔色は悪いけれども、そうも言ってはいられない。
ここを逃せば、まず確実に誰かのお腹の中に直行してしまうだろう。
精いっぱい手を振って必死のアピールで。
■タマモ > 普段の時の探し物ならば、匂いを辿り、音に耳を傾け、さっさと終わらせる。
しかし、今は特に、それを重要視していない。
そのせいか、鼻も耳も使わずに。
だからだろう、そんな少女を、すぐに探り当てられずにいたのは。
茂みから、次の行く先を決めようと、視線を巡らせていた…その時。
ある方角から掛かる声に、ぐるん、と首がそちらを向く。
…ぱっと見気持ち悪い?気にするな。
ともあれ、視線がそちらへと向けば、そこに見えるのは、見覚えのある姿。
よいせ、がさごそ、と茂みを掻き分け姿を現した。
「おやおや、誰かと思えば…」
そして、近付きながら、そう呟くも、言葉が一寸そこで止まり。
「………えーっと…ともあれ、久しいのぅ?
何じゃ、こんなところで、何かあったか?」
少しの間、わずかに視線を彷徨わせ、そう続けた。
理由は簡単だ、顔は覚えてる、名前は忘れた。
誤魔化すように、ひらひら手を振り近付けば。
そこでやっと、少女の状態に気付いて。
「あー…もしや、あの逃げた連中が探しておったのは、お主か?
なんとも、大層な事となっておるようじゃな?」
ぽむ、お気楽に、何か気付いたように、手を打って。
真ん前まで寄れば、しゃがみ込み、少女の顔を覗き込んだ。
■アルシェ > 茂みの先からぴょこんと覗いていた狐耳がぐるんとこちらを向いた。
しばらくしてこちらへとやってくる少女に、どうにか助かったと安堵する。
「お久しぶりー……って、ゆっくり挨拶したいところなんだけど。
ちょっと貧血と空腹でやばめな感じでー……あとついでに疲労っぽく。」
相変わらず眩暈は続いている。
明るい声に悲壮感はないものの、脚に巻かれた布に滲んだ血はかなりの量。
実際、点々と落ちている血の跡を見れば、それなりの量だとも知れるだろう。
「んー……なんかお宅突撃して食卓拝見みたいな?
なんだか怒らせちゃったみたいで。もしかして、近くで見かけた?」
覗き込まれた顔色は悪いものの、知り合いに出会えたからか気負いはなく。
ぐったりと木の幹に身体を預けた格好で、ものすごくざっくりとした経緯を説明する。
どうやら件の人たちには出会ったようだから、こんな説明でも通じるかもしれない。
「まぁ、そんなわけで。助けてくれると嬉しいなぁーって。
具体的には、食べて物を分けてほしいのと、朝まで添い寝希望とか。」
さすがに小柄な少女に街まで背負って連れていってとは言えない。
摩訶不思議な術を使う少女のことだから何か出来てしまいそうな気もしなくもないけれど。
■タマモ > うん、本人から聞いてみたら、思ったよりも大層な事になってた。
とは言え、まぁ、何とか出来ない事もないのだが。
「ふむふむ、貧血と、空腹と、疲労?
それは、本当に大変そうじゃのぅ?
…なるほどなるほど、そうかそうか」
すんっ、鼻を鳴らし、視線を、少女から地面に向ける。
血の匂い、視線に映る、その量。
一瞬、その顔から表情が消えるも…それは、すぐに元に戻る。
「………うむ、先に妾を見て、逃げ去った連中じゃろうな。
まぁ、とは言え、問題なかろう、すぐ終わる」
ちらりと、一寸、少女から視線を外して空を見上げれば。
その視線、すぐに戻して少女にそう伝える。
そう経たずして、件の襲った連中は、その付近で簀巻きになって発見される訳だが。
それは、また後の話だろう。
「ほほぅ…良い良い、構わんぞ?
必要なのは、食べ物だけじゃな。
朝までは…せっかくじゃ、たっぷりと愉しませてやろう」
今回は、時間を掛けるつもりだったのだ、多少の準備はしてある。
袖へと手を差し入れ、がさごそと何か漁れば。
そこから取り出されたのは、風呂敷包み。
それを適当に側に置きながら、少女へと手を伸ばし、軽く触れる。
必要なのは、食べ物だけ。
その理由は、すぐに分かるだろう。
触れた手元から、ふわりと力が流れ込み。
それが少女の身を包み込めば、じわじわと、早送りされるように、少女の傷口が治ってゆくのだ。
それは、数分と経たず、完了する訳だが…
その代償は、その急激な回復力の上昇に比例した、体の変化。
主に、火照りと、感度の上昇。
そう、少女の性格を考えれば、それなりに何か出来そうだが。
そこに、悪戯を突っ込んでくる、そんな性格なのだ。
■アルシェ > 「………逃げたんだ。あれだけしつこかったのに。」
背負い袋を投げつけられても、金的を蹴りあげられても、目に胡椒をぶつけられても追いかけてきた山賊たち。
それがあっさりと逃げ出したという事実に呆気に取られてしまう。
それだけ、この少女のことが怖かったのだろう。
一体過去に何をやらかしたかと訊きたい気もするけれど、訊かない方が身のためかもしれない。
「サイズ的に可笑しいような気がするのは、そろそろ目がヤバくなってきたのかな…?」
着物の袖口から取り出された風呂敷包み。
そこに入りきらないとは言わないけれど、そんなところに入れていたらもっと膨らんでいただろう。
そんな突っ込みを入れる気力はさすがにない。
「愉しませ…って、さすがにその余裕はないかな。
タマモさんの尻尾は気持ちよさそうだし、堪能させてもらうけれど。
……ふぇぇ、痛いのが消えて……?」
助けて貰う対価は高くつくだろうというのは覚悟のうえ。
それがそっち方面だろうというのも、まぁ、理解しているけれど。
それでもさすがに今は無理と断った矢先に、見る見るうちに傷が癒えていく。
「はぁ……まさか治癒魔法??まで使えるとか。
でも、かなり痛かったから、ほんとありがとう。」
空腹感はそのままだけれど、脚の怪我とともに顔色も幾分マシになる。
ほっとした表情で素直にお礼を告げたのも束の間、その表情が次第に戸惑いを含んだものへと変化し始め。
つい先ほどまで青白かった顔色が、赤みの射したものに変わる。
「その……さっきの、お礼……はぁ、撤回、んっ…しても……いいかな…?」
切なげに太ももを擦り合わせながら、ジト目を向ける。
助けて貰ったのは素直に感謝しているのだけれど。
それを告げるには早すぎたらしく。
■タマモ > 「まぁ、それだけ自分が大事、って事じゃろうな?
先を考えれば、正しい選択、ではあったやもしれんが…
やってしまった事が、悪過ぎた。
あれじゃな、後悔先に立たず、と言うやつか」
そんな答えながら、くすりと一瞬笑うも。
その意味は、きっと少女には分からないだろう。
「あー…何でも入る、不思議じゃろう?
………まぁ、大きさに限界はあるが、な?」
さすがに、大き過ぎる物、重過ぎる物は、入り切らない。
とは言っても、普通に考えれば、今取り出した風呂敷包みも、それなりに大きい。
突っ込もうとするのは、当然かもしれないか。
疲労から、突っ込めないようだが。
「うん?…いやいや、その余裕、すぐ出来るぞ?
見ていれば、すぐに分かるじゃろう。
愉しみも、同じくのぅ?」
傷を癒しながら、くすくすと、意味あり気に笑って見せる。
その言葉通り、傷は癒えていき、疲労も少しは消えてゆく。
代わりに起こる、その変化もまた、見ていればすぐに分かるもので。
「さぁて、言うた通り、後は食事だけじゃろう?
ふふ…それは、今更な話しじゃろうて、のぅ?
それは、お主も、分かっておる、ではないか?ん?」
向けられるジト目、それを気にする事なく。
太腿を擦り合わせる、そんな少女に、ずぃっと身を寄せて。
与えた悪戯、その効果を確かめるかのように、するりと伸びる両の手は。
無造作に、ぎゅむっ、と尻肉を鷲掴みした。
■アルシェ > 火照り始めた身体をもじもじとさせながらも、空腹感は変わらず。
それでもこのままでは落ち着かない程度には昂って来てしまっている。
分かっているだろうという言い草に、ぷくぅーッと頬を膨らませて。
「ひぁぅっ!……うぅぅ、ご飯一食じゃ割が合わない気がする……」
不意にお尻を鷲摑みにされて悲鳴が漏れてしまう。
助けて貰ったのだから、拒むつもりもなかったのだけれど。
何だか素直に受け入れるのは癪に感じられて。
そんなわけだから、お尻を掴まれたまま、相手の方へとにじり寄る。
「ご飯はちゃんはもらうけど……その、今は……えいっ!」
目の前の風呂敷包みをチラ見してから、飛び掛かる。
狙う獲物は風呂敷の中身ではなく。ふさふさもふもふの少女の尻尾のひとつ。
ぎゅむっと抱きつくと、想像以上の弾力と温かさで。
火照った身体をスリスリと摺り寄せると、むずむずとしたもどかしい心地よさが込み上げてくる。
添い寝希望と宣言したとおりに、尻尾を抱き枕に幸せそうに表情を綻ばせ。
とはいえ、このまま寝かせて貰えるかどうかは、少女次第で―――
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からアルシェさんが去りました。
■タマモ > 効果は出てるも、その表情の変化に、それはそれで、つい笑ってしまう。
少女の言葉に、かくん?と首を傾け。
「いやいや、一食ではないじゃろう?
お主、そんなに早く、ここを下れるのか?
そう考えれば、それなりに…とは、思うがのぅ?」
ぐにぐにと、尻肉を弄りながら。
逆に、今度はこちらがジト目で見遣る。
夜で一食、明日の朝でもう一食。
この九頭龍山脈から出るのに、昼前に出られるとも思えない。
それだけ、食事をとる必要があるのだ。
…そう、己は、この状況から転移をするつもりはない。
「………おぉぅ!?
ふむ…まぁ、仕方無いのぅ」
言葉の途中、飛び掛って来る少女。
避けようと思えば、避けれない事はない。
が、特に問題なさそうなので、尻尾の一本を掴ませた。
もちろん、本物でない尻尾だが。
それでも、その感触は本物と同等、もふもふの心地良い感触だ。
この状況、一食は抜くらしい。
ならば、明日の食事の時間でも使って、愉しむとするか。
そう、食事をしながら、遊んでやろうと考えていたのだ、抜かれては手が出せない。
そんな拘り、捨ててしまえと思うが、拘りは大事。
…と、言う訳で、この日の夜は、愉しむまでは至らないが、お尻の感触は楽しみながら、眠りに付く。
その代償は、明日に…となるのだが、さてはて、どうなる事やら、である。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からタマモさんが去りました。