2021/01/05 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にグリモワールさんが現れました。
グリモワール > 九頭龍山脈、その山中。
月明かりだけが照らす薄暗い獣道を、一つの白い影が麓へと向かいゆっくりと進んでいた。

微風に靡く、膝に届かんばかりの長さを持つ白銀の髪。
透き通るような蒼い瞳を行く先に向けて。
胸元と袖口と裾の部分にフリルをあしらった緩やかなドレスを身に纏う、一人の少女。

野生の獣だけでない、賊や魔物も出るだろう山中。
にも関わらず、少女は何ら警戒する様子も見せずに歩んでいる。
…こんな場所で、明かり一つも灯さずに。

グリモワール > 少女が歩くのは獣道。
周囲の茂みから草葉が飛び出していたり、足元が歪んで歩き難かったりしている。
薄暗さも相まって、普通に歩くのも至難な事だろう。
そのはずなのに、少女の歩みはまるで遮るものが何もないかのように一定間隔で進んでいた。

もし、それを見る者が居たならば。
その理由は、それとなく分かるだろうか。
まるで何かに阻まれているかのように、掠めそうな草葉はある距離で退けられて。
足元がどんな歪な形状をしていようとも、何事もないかのように、その上を歩いている。
…正しくは、ほんの僅か上を浮いて歩いていた。

そして、歩いているにも関わらず、両手は前に、何かを抱えるようにしているようで。
そこにあるものが、一冊の分厚い本だと分かるだろう。

「うぅん…結構歩いたんだけど、本当に何も無い場所だなぁ。
頂上から麓まで下ってみれば、何かあるだろうなって思ったんだけど…」

歩みを続けながらポツリと呟き、大きな溜息を零す。
ここは九頭龍山脈、本当に何も無い訳ではないのだけれど。
今回は不運で、偶然にも何も無い場所を下って来てしまっていたのだ。