2020/12/27 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > 常識だけれど、安全な冒険は冒険とは云わない。
危険を冒すからこその冒険と云える。
そんなことは百も承知だし、今さら再認識するまでもない――けれど……。
「えっ?! わ、あっ、あ……
きゃああぁぁー!!?」
山中に響く悲鳴と、獣道の途中の茂みが激しくざわめく音――次の瞬間には逆さに吊るされた女――
いかに危険な冒険者稼業とは云え、これはない。
――とある薬草を採取しに分け入った山中。山頂に近づくほどに冠雪が深くなっていくが、麓に近いこの辺りではさほどでもない。
だが寒いものは寒い。しっかり防寒着の毛織白コートを着込み足は分厚いタイツを穿いて脚には底に滑り止めを打ったブーツ。
冬用装備で訪れたのはいいが。
地図を確認しながら、寒い季節にしか自生しない薬草を求めて山奥に分け入り、獣道を辿る途中のこと。
うっすらと白く積もった雪に隠された狩猟罠をうっかり見落としてしまい………
引っ掛かって吊るされた。
右足に縄が巻き付いてバネが弾けるように大きく撓って、大樹の枝に逆さづりにされる格好の非常に間抜けな罠……吊るされた女の一丁上がり。
不幸中の幸いは、厚手の黒タイツを穿いていたのでスカートがめくれあがっても下着がフルオープンになってないことか。いや、問題はそこじゃない。
■ティアフェル > ぶら~ん、ぶら~ん、と右足だけで枝に吊るされるという大層みっともない上にかなりしんどい体勢で振り子のように揺れ、スカートの裾は完全に下に落ちてタイツに包まれた下半身を晒すという無様さで。
「うっそでしょ……」
少しの寒風にもぷら~んと揺れながら唖然と呟く声。何が起こったのか認識するのにしばしの時間を要し。理解したらしたで――
「え、ちょ、うそでしょ…!? なっ、これ、ええぇぇーッ…!?」
どうやって脱出するんだこんなもの、と逆さ吊りになって物理的に刻々と頭に血が上っていきながら慌てた。思わずじたばたと暴れ、釣られた魚の気分を図らずも存分に味わい。
「~~~っくうぅぅ……!」
取り敢えず全腹筋を駆使して、ぐぐぐぐ、と身体を足の引っ掛かった右に引き揚げ、腕をぷるぷる伸ばし、絡みついた縄を解除しようと唇を噛み締めて筋肉に掛かる負荷に呻きながら、もうちょっとあと少し…と足掻いたが。
「っふあ……! きっつ……!」
逆さ屈伸状態で頑張ったがあと少しのところで指が届かない。力が抜けてまたぶらーんと頭を下にぶら下がり。
そういえばこうして逆さ吊りにする拷問とかあったなあ……なるほど拷問になるだけあって、なかなかツライ。吊られているだけでも少しの間ならともかく、長時間となると相当キツイ。
大した労力は要らないし、外れないようにがっちり固定した後は放置しとくだけでいいのだから、効率のいい拷問かも知れない――。
そんな詮無い現実逃避的な思考を巡らせては、
「ちょっと待ってー…!! こんな地味な拷問で死ぬのはイヤアァァァー!!」
■ティアフェル > 「いくらベッドの上じゃ死ねないと云ってもこれはない!」
冒険者の末路とは時に悲惨なものだが……無様なのは勘弁してほしい。
悲鳴を上げてじたばた必死に藻掻いていると――縄は大分劣化していたらしく、やがて負荷に耐えかねて、じわじわと擦り切れ。やがてぶつり、と切れた。
「っぅ、わ…!」
どさ、と投げ出されるように地面に落ちて悲鳴を上げ。ようやく逆さ吊りから解放され。っふーと大きく息を吐き出し。
真冬なのに嫌な汗をかいた…と額に滲む雫を拭い足に絡み残った縄を外して乱れた着衣を整え、やれやれと嘆息交じりながら気を取り直して。今度は罠に重々注意しながら探索を続けるのであった。
ご案内:「九頭龍山脈 山中」からティアフェルさんが去りました。