2020/11/28 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「嘘でしょ…?!」

 交易の為街道を進む一台の馬車が襲撃された直後。やばそうな気配に応戦する用心棒を尻目にいち早く逃げ出したのは一人の女。
 冒険者たる本業はヒーラーの能力を失ってしまってからは行えておらず、今回もただの下働き…いわゆるアルバイトとして荷馬車に乗車していたのだが……。
 運が悪いのか割と早々に襲われた。山賊が出没するということだからもちろん備えはして、ルートも比較的安全とされる道を選んで進んでいたのだが……。
 ちょうど、縄張りを変えたばかりだった山賊連中とかち合ってしまい、昼日中の見通しもいい中で行く手を塞がれ横道に逃げる間もなくあっという間に取り囲まれて。

「やばい、これはやばいヤツ……!」

 腐っても冒険者、用心棒の力量と対する山賊の力量の差はすぐに推し量れて――もちろん不利な方に――分が悪いと察した瞬間、ここで一応若い女一人残っていればどんなことになるのは火を見るより明らか過ぎたので、

「すみません! 離脱しまーす…!」

 一人速やかに荷物を持ってすたこらと逃げ出した。
 しかしそれに気づいた山賊が、後を追っかけてくるので、

「ぎゃーっ! 嘘でしょー!!?」

 後方から投石など受けて必死で避けて全力疾走しながら悲鳴を上げる、初冬の街道は紅葉も散ってきていて寒々しい風景の広がる中やたらそこだけ賑やかだった。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」にラファルさんが現れました。
ラファル >  幼女は遊んでいた。基本的に森や、山、川、大自然は幼女の遊び場である。
 依頼を受ける時は基本的に危なくない依頼か、おとなの冒険者……通称お目付け役さんが居ないと受けられない。冒険者ランク最低の見習い冒険者。
 そもそも御年10歳のお子様であり、成人もしてないのだから当然、そんな年齢で冒険者登録できる方が規格外とも言えよう。
 そんな幼女、お昼ご飯に猪を狩ろうとしていた時の事。

『「ぎゃーっ! 嘘でしょー!!?」』

 と言う声、知っている声が聞こえる。
 おやあ?と思うわけでもなく、視線はそちらの方へ、ちょうど、反対側と言った所か。
 だから、運のいい猪さん、君は、ご飯の運命から逃れられたのだ。
 すくり、と立ち上がる。この秋空……冬に近いと言うのにかかわらず、半裸といって良い、胸にベルト、腰に短パン。
 声のした方に向き直り、走り始める。

 ストライダー、これが、幼女の冒険者としてのクラスで、長距離を駆け抜ける、盗賊系の上位クラスだ。
 音もなく、風のように、山をぐるりと回って。
 にぎやかな方に向かった。
 人ではない脚力と、敏捷性、盗賊クラスの技術をもってすれば。
 山を半周は、3分あれば十分だ。

「ティアおねーちゃーん」

 速度は破壊力とよく言う、幼女の体格だとしても、その速度は時速100を超える化け物スピードで。
 彼女に一番近い盗賊に悪質タックル。ちゃんと、死なないようには手加減します。
 ぼきぃ、と鈍い音が聞こえた。まあ、いいか。

ティアフェル >  たまにはフィールドワークに出たい!と調子に乗って商隊の募集に参加してしまったのが運の尽きだった。

 だけど、結構うきうきしていてピクニック気分でお菓子とか用意したりして今日は天候にも恵まれて、やっぱお外さいこー、と油断コイていたのがやっぱり間違いだったような気がする。
 疾走する後ろから石だの枝だの次々投げられて、

「投ーげーすーぎー! どんだけ投げんのよー?!」

 逃げながら避けるのも一苦労だ。苦情を発しながらぜいぜい息を切らせていた、その時――

「っは…?!」

 どこかからざかざかと木っ端だの茂みなど蹴散らして凄い勢いで疾駆して来る小柄な影。なんか、聞こえたかと感じた次の瞬間には元気な声で呼ばれていて、そうかと思えば後方からの追撃が本人とともに鈍い音を立て吹っ飛ばされていて。

「え、わっ、きゃっ……!?」

 後ろで巻き起こった急展開に瞠目して注意を全部持っていかれたので、振り返りざまに足元から突き出た木の根に引っ掛かってずさーと転んでしまい。

「……嘘でしょ……」

 ばったりと突っ伏しながら、呻くような声がまた同じ言葉を紡いだ。

ラファル >  盗賊の人は面白いように吹っ飛んで、ごろごろ転がって呻いています。人間ある程度以上のダメージを受けると痛みに意識がもうろうとして声が出なくなるのです。
 ぶつかった時に入念に腕の骨と両足の骨を、こっそりぽっきりしておいたので、意識が回復してもすぐには動けないはずだ。
 コロコロしないだけましと思って置いてもらおう。まだ、使い道、あるし。

 そして、ぶつかっていった方の幼女は、ぴんぴんしてます、そのプラプラ揺れる金髪のツインテールや頭にに、葉っぱがくっ付いて幼樹ドリアードな感じになってます。
 トレントと言ようなかんじ、流石に顔に付いたぶんは、ぺしぺし、はたき落としますが。

 盗賊さん吹っ飛んだ!状態を作り上げた元凶は、とたたたっ。と走り寄ります。
 

「わーい。ティアおねーちゃーん!
 ……だいじょぶ?痛くない?」

 そして、金色の目をぱちぱち瞬かせて、茫然としてるおねーちゃんの脇に女の子座りして。
 じーっと、見下ろすのです。
 はい、と手を差し出す

「たてる?」

 痛いの痛いの飛んでけ、居る?首を傾いでお姉ちゃんを見て心配する幼女。

ティアフェル >  突如参入した弾丸娘に状況は圧制された。追跡していた山賊はもうそれどころではなく、聞いてるだけでなんだか痛いような気分になる呻き声を発して倒れていたし、ついでにこっちも転んで倒れていたし。
 ぎゃあぎゃあ騒がしかったその場は、大分静かになった。
 さわさわと風にそよぐ木擦れの音色すら響くほどに。
 迷彩状態で身体のあちこちに葉を散らす小さな少女が、倒れているこちらに駆け寄って声を掛けて来ることには、ずるずると這い起きて、

「ら、ラファルちゃん……? な、なんで……」

 異なところで会う、どころではない。今日の朝おはよー、といつも通り挨拶しておのおの出掛けた後だったので懐かしさも何も感じない間合いでの再会。ここは家か、と妙な錯覚すら。
 見慣れた顔に向けて驚いたように見開いた目を向け。それから、大丈夫大丈夫、と心配してくれている声に苦笑しながら肯いて小さな手を借りて立ち上がり。
 いつまでも情けないところは見せてられない、とすく、と居住まいを正すと。

「これっくらいへのかっぱよ!」

 見栄を張った鼻の頭は軽く擦り剝いていた。あと髪が乱れて衣服は埃塗れだった。

ラファル > 近寄っている間に、お姉ちゃんはゆっくりだけれども起き上がりてくれた。
 重大なダメージとかはなさそうだ、それは一安心だな、と幼女は思うのだった。

「ん?走って来たの!」

 5W1H、お姉ちゃんは何故(Why)を聞いた、幼女の返答は(How)どのように、だった。
 幼女の中では、此処は遠出にはなっていないのである、その感覚を理解してもらうにはもう少し掛かるのかも知れない。
 手を取って立ち上がるおねーちゃん。
 そして、元気に見栄を張るおねーちゃん。とは言え、見たところ大きな怪我の様子もなさそうだ。

「わぁい!よかった!」

 にぱーっ、と満面の笑み。彼女の服に付く泥とか埃とか、髪の毛が、乱れているさまには気にならない。
 それに。そんな乱れているのに、元気に揺れるアホ毛ちゃん、その元気バロメーターはいつもの様だし。

「そういえば、あっちで、荷馬車襲われてたね、逃げて来たの?」

 彼女の所に姉の所に一直線な幼女だったから。
 荷馬車商人の馬車が襲われているのも見た、用心棒が盗賊とじゃれ合っているのも見たし、多分そうなんだろうなーと。
 助けたかどうかでいえば、助けてない。関係が判らないし。
 優先度でいえば、おねーちゃん一番だから。

ティアフェル > 「まったくその通りだね…?!」

 むしろそうとしか見えなかったが、訊いているのはそこじゃない。走って、ときっぱり答える声に突っ込みの態で肯いて。
 転んだ時のちょっとばかりのダメージとかが吹っ飛ぶ。もともと大したことがないのだから当然だが。
 この位全然平気だし、と胸を張る勢いだが、擦れた鼻先に寒風が吹きあたると、ちょっとだけ、イテテと顔をしかめ。
 そして笑顔満開の表情に少し情けなさそうに笑みを、はは、と零して。
 あっち、と云われた方向に顔を向けて、こくりと首肯し。そうだ、と思い出したようにその手を取って引き。

「そうそう、あっち危ないの。巻き込まれちゃ敵わんから行こう。山賊の制圧まではこっちの仕事じゃないわ」

 そっちはそっちで用心棒に任せておこう。そして、残念ながら制圧は厳しい戦況だろうと読んでいたので。とばっちりを大人しく食らってやる気にはならず。別方向に誘導する。
 自分もだがかわいい妹まで巻き込まれたらたまらないと。そそくさ逃げの一手。

ラファル > 「……あ。うん!猪さん狩ってた!おひるごはん!」

 一寸反応が変だなー?おかしいなー?あ、何をしてたのか聞いてたのかもしれない。突込み交じりの言葉に幼女は判った!と頭の上にピッカーんと豆電球。
 この答えで良いんだよね?ね?問いかけるように幼女は見上げる。
 鼻の先をすりむいている様子も見える、顔をしかめる様子も見えるけれど、大丈夫と言ってるし、必要以上にそれを気にしちゃダメな気がする。
 情けなさそうにしている様子、笑う彼女、ぎゅ、と抱き着いて、頭をすりすり、と擦りつけて見せた。

「うん、ボクは良いけど。ティアおねーちゃんは、良いの?」

 お仕事に出かける、と言っていた。
 山賊の制圧と言っていたし、つまり、荷馬車に関するなんかしらの仕事なのだろう。
 お姉ちゃんは逃げの手段を選ぶようだ、彼女の判断は正しい、勝てない戦いに向かうのは愚かだと知っている。
 しかし、仕事を放り捨ててと言うのはどうなのだろう。

「ボク、おねーちゃんを虐めたやつら、めってしてくるよ?
 さっきの荷馬車程度のおじさんなら、ボク、出来るよ、全員。」

 姉の今後の事もある、此処で逃げたらお給料もらえなくなるかもだ。
 むしろここは、姉が援軍を引き連れて助ければ、姉の報酬アップでは?と、黒い幼女。ブラックロリータ。

ティアフェル > 「相変わらずワイルドな昼飯だよねっ?!」

 大猪とか丸ごと平らげる勢いの、胃袋宇宙少女に激しく肯いた。
 なんでもいいや!と問いかけるような眼差しに、はは!と爽笑を浮かべていなし。
 そして抱き着いてすり寄ってくる様子に、家のいもーとかわいーい、と相変わらず突発的なまでにめろめろになって。よーしよしよし、とかいぐりかいぐり。

「うぅ~ん、いーよしょーがないよ、諸行無常って奴だよ……弱っちい癖に用心棒なんかやってる奴らの責任で、経費ケチってそれしか雇ってなかったのが敗因だよ……」

 大人しく金品を差し出せば多分商業山賊はそれ以上のことはしないだろう。これも一種の商いだ。
 交渉役が上手く取引してくれるのを祈って、わたしは逃げる。最初からそういう契約でもあったので躊躇はない。ただ、手付金以外はノーギャラになるのは痛恨だが。

「んん……ありがたいけどやっぱり駄目よ。それはラファルちゃんが危ない目に遭っていいって理由にはならないし、少なくとも用心棒を倒せる程度の手練れも混じってる。
 ラファルちゃんは強い子だけど、いつでも過信はしちゃいけないわ。必ず勝てる保証なんてないんだから」

 ふる、と首を振った。お金=安全。天秤にかければ重いのは瞭然。確かに制圧できるのかも知れないが、必ずできるという訳でもないし、それぞれの役割に徹するしかない場合もあるのだ。
 だから、とまたその手を引いて。

「――行こう。あっちも大人同士よ。上手くやるわ」

 ほとぼりが冷めた頃に戻るのも手だが、女の身ではやはり得策でもない。逃げ帰るのが無難だ。

ラファル > 「うん、だって。お腹いっぱいに食べようとすると、お金一杯必要だもん。それなら、自分で捕まえて食べた方が、お安いし。
 それに、動物の毛皮とか入るから、お金になるから、一石二鳥。」

 今現在彼女の家に拉致されているので、食費は、彼女の懐―――幼女もお金はいれているが、掛かるのである。それを考えれば、出来るだけ安くした方が良いと考える。
 なので、毎日幼女がお出かけすると必ず、牛、猪、鹿、鳥、を初めとした野生のお肉とか、山菜を持ってくる。
 料理はおねーちゃんに任せきりだけどお手伝いもする。だって物理的に多いし。

「えへへ。ティアおねーちゃん大好きー。」

 かいぐりかいぐり、抱き締められて撫でられる。そんな当たり前の高位がとても嬉しくて、甘えてしまうのだ。
 とろーんと零れる好き。もっと頭なでなでしてほしい。
 でも、今は一寸。断腸の思いで顔を持ち上げて見上げる、でも抱き着くのは止めない。

「うん、わかったー。」

 彼女が良いと言うのならば、それでいい。幼女は別に正義を振りかざしたいわけではない。
 姉の面目が潰れないのであれば、どうでも良いのだ、商業の荷馬車など。
 実家の荷馬車と比べても貧弱で、警備も惰弱、お金をケチってそうなっていると言うのであれば、さもあり何としか考えられない。
 彼女が非戦闘員であり、契約内容に逃げても良いとあるのなら、其れこそ逃げるが勝ちだ。

「あぶないめ……?
 うん、師匠のおいちゃんにもよく言われる、弁えろって。自分の実力、相手の戦力。
 すべてをしっかりと把握して、その上で戦力を削り、必ず勝てるようにしろって。」

 もっと難しい理論なども、師匠からは伝授されているが。姉の心配や、言葉に対する返答としては、これくらいで良いのだろう。
 彼女と同じことをちゃんと聞いて、覚えてるという事。安心してほしいから。無謀なことはしないよ、と。
 最初の一言に関しては、あの程度のごろつきに、幼女が危ない目に会わされる、そんなイメージが一切、無かったから。

「うん!ティアおねーちゃん、お腹すいたから、何か、狩らない?
 お魚とか、キノコ、とか。
 鹿とか、馬もいるといいなぁ。」

 手を繋いで、幼女は姉を見上げる。
 ご飯食べ損ねて、お腹がぎゃーすと鳴いている。このままでは、その辺の木の枝を食べたくなる。
 岩もそこそこ美味しいんだ、この辺。

ティアフェル > 「確かに稼ぐ以上に食べそうな勢いではある……。
 ぱっつんぱっつんに食っても太らないのはちょっと羨ましいけどエンゲル係数考えるとわたしはこの胃袋で生きていきたいと昨今実感しております……」

 食べ盛りの弟たちも大概やばいし。実家にいた頃は毎日の炊事が地獄だったし鍋の大きさは子どもが煮れるくらいの大容量だったが。
 それにしたって、この子は一人でよく食べる。肉の解体だけは手間がかかるのでお願いしておいて、調理は時間のかかるものは追いつかないのでできなくなっていた。
 だけど、すべてカワイイいもーとの為、弟達相手の時は食い過ぎだサル!と罵倒していたが妹にはそんなこと口が裂けても云わない、思いもしない。むしろ沢山食べるといいよと見守っている。

「おねーちゃんもラファルちゃんだーいすきー」

 よしよしよしよし、艶やかな金髪の頭を存分に撫で繰り回す。小さくってやわっこくって女の子はカワイイ生き物だなあと実感しながら甘やかし一択。
 そして、判ってくれた、と素直に肯く所作に安堵して。「いいこいいこ」とご褒美のようにさらになでなでして、むぎゅーとハグして。
 今回はずれの商隊に当たってしまったのは運が悪かったと早々に諦め。

「そう、師匠がいるんだったね。その通り。
 だからね、まだ全容が判らない相手を〝倒せる〟って判断するのも良くはないよ。
 相手は山賊だから色々罠も張ってるだろうしね」

 自分も幼い頃は大人相手でも簡単に『やっつける!』なんて息巻いていたものだが、そう簡単にいかないのは積み重ねの経験で理解したこと。無用な戦いを避けるのも大人になった証のようで、子どものようにまっすぐでなくなってしまった証でもある。
 少し眩し気に自分の力を純粋に信じれている小さな少女を眺め。しかし説教めいたことは散々云われているだろうし、自分も小さな頃にはうっとうしく感じたものだ。
「ラファルちゃんはちゃんと解ってるもんね」と表情を緩めてぽんぽんとその頭の上で柔く手を弾ませ。

「んー。そーね、わたしもお腹空いちゃった。
 山はでっかい食糧庫! 冬眠前の動物のごはん採り過ぎないように狩るか!」

 増えすぎて森を食い荒らしてしまうような動物は構わない。けれど山の生き物が困らないだけいただこうと肯いてお腹を鳴らす妹に急がなきゃねと強く手を握って、山中に飛び込んでいこう。
 それにしても岩食うってどういうこと? 岩塩ってこと?と首を捻りつつ。茸と木の実の収穫に火起こしから炊事は担当するので、タンパク質はよろしく、とそっちは馬力の高い妹にお任せ。
 突如収穫祭が開幕する。

ラファル > 「うん、だから、足りなくならないように何時も頑張ってるよ!何時も走り回ってるからね!えんげる……?」

 いっぱい食べて、いっぱい動く、ご飯は大事なエネルギー食べた分だけ使っているから、屹度太らない、動くことを止めると、どこぞ商会にいるのリアル姉のようにぷくぷくになるのだろう。
 お肉の解体を見ればわかるだろうけれど、幼女、手慣れ過ぎていたりする。元々一人で狩って食ったりしているから、綺麗に骨と肉を分けたり、内臓を取ったり。
 内臓だって食べられるものと食べられないものに、分ける事さえできる。一体辺り2~3分で。
 家に帰る前に締めて、血抜きもしているので臭みとかはないはずだ。
 そして、聞きなれない言葉、えんげるけいすう?なにそれおいしいの?と、姉の一寸どんよりしそうな顔を見上げる。

「うれしっ!ティアおねーちゃーん。」

 金髪の頭をなで繰り回すと、モリゾー状態の頭から、葉っぱや枝がぽろぽろり。元の幼女に戻っていきます。
 ふにゃふにゃと、子猫の様に甘える幼女。優しいお姉さんは、とても大好き。
 いいこいいこしてくれた、ほわぁ、と目を輝かせ、ハグを受け止めて、キューンと鳴く。犬なのか猫なのか。

「うん。判った。盗賊さんの手口、勉強してみるね。」

 盗賊の罠。どんなもの使うのだろう、どんな策略を使うのだろう。
 今は兎も角、今度、それを調べるのも学びになるはずだ、程度の上下ではなく、経験と言う名の学び。
 知る数が多くなれば必然的に手札も増える、程度は、使い方で変わるのだ、簡単な落とし穴だって必殺なのだし。
 彼女の言葉に、確かに確かに、と、理解した。

「冬眠前の動物の……!熊!」

 ティアおねーちゃんの意図は伝わった。冬眠前の動物が飢えるようなことがあれば、他にも被害が出るから、取る分はちゃんと考えようねという事だ。
 しかし、幼女は其処から発想をワープさせた。
 冬眠前の動物、人にとっては危険で、その上で食べられるお肉。
 猪も上がるが、猪ばかりでは姉の猪料理の技量ばかり上がる。それは良いのか悪いのかはわからない。
 だから、趣向を変えて熊を採ろう。

「今日のご飯は熊さん鍋ー。」

 狩猟者の目が、其処に有った。きらきら、輝いていた。
 頑丈な牙は、自重してますが、その辺の木とか、岩とか、食べられます。岩塩ではなく。
 前に、其れで、騎士団の人に怒られた経験もあったりなかったり、な悪食。

ティアフェル > 「おぉ……それで余計にお腹が空くという循環はないのかな……」

 いっぱい動く=いっぱい腹減る。そんな図式ができたが。しかしだからとて食べ盛り育ち盛りの歩みを止めるわけにもいかないのは経験済み。
 できるだけ、家に持って帰ってくる前に解体をお願いしているので、たまに正体不明の肉もあって調理がアドヴェンチャーな日々である。
 エンゲル係数に関してはお勉強の時間を設けてついでに家計簿の付け方も教えておこうかと思案。

「うぅ~ん、かわいいかわいい、よしよし」

 いっそ孫を構うばあちゃんみたいな勢いだが。猫かわいがりも突き詰めると恐らくそこが終着点になってしまうのだ。
 撫でるついでに木っ端を払うと大分すっきりした。懐く幼女がかわいいもので。甘やかす比重が高いのは教育上いかがかと云われれば反論できない。
 だってしょうがないじゃない、かわいいんですもの、と駄々を捏ねるしかない。

「そうね、これからいっぱいお勉強することあるわね。師匠にも沢山教えてもらって」

 この年頃の成長は目まぐるしいものだ。すぐに山賊の制圧くらい訳もなくなってしまうかも知れない。
 だけど、そうなったとして「やっておしまい」などと妹をけしかけることはない。だって姉ちゃんだもん。
 姉は妹を守るもの。

「ああ、ある日山の中であった熊さんを――狩っちゃうのね、そして食っちゃうのね……いつ来るかと思ってたけど、とうとうここで食材に熊が追加か……この辺の熊ってどんな種類だっけな……」

 おお、やる気やで、ときらきらお目目を輝かせながら熊料理を所望する女の子を見つめて、しみじみと呟いた。
 しかし、熊は癖があり灰汁があり匂いもきついので調理にちょっと手間暇コツが必要。今すぐ食すとすればどうだろうなあと感じつつ。

「じゃあ熊は晩御飯にすることにして、今は草食獣とかお魚にしとこっか。あっちの方に川が流れてるから……そこで設営しとくので、食材獲ってきてくれる?」

 おひるごはんに熊さんはちょっと間に合わないかも知れないなと感じて、あっち、と街道から少し入った南側を示して。分担作業の提案。
 川に向かいながら山の幸を採取して、調理の準備を整える係。
 それぞれに散って山ごはんの準備開始だ。

 大分減っては来たが山ブドウやら茸やら栗やアケビやイチジク、山は実りの時期で豊富に採取できた。

ラファル > 「……はっ!」

 余計にお腹がすくという認識、確かに、いっぱい動いた後はご飯がおいしい。つまり、余計にお腹が減っているという事ではないのだろうか。
 姉の指摘に、今、気が付いたと言わんばかりの幼女、どうしよう、ご飯美味しく食べるには動いた方が良いけれど。
 おねーちゃんの労力を減らすならば、動かない方が良いのではないか、幼女、腕を組み、ムムムと悩み始める。

「だいすきぃ……。」

 いっぱいなでなでしてくれて、いっぱいよしよししてくれる。
 幼女はもう、液体のように表情をとろーんと、蕩かせて、ほにゃーと、朗らかな笑顔。とろらふぁる。
 いっぱい蕩けて、体を預けて、懐きマックス。ちょろい。
 お願いされたら、全力傾けちゃう。

「うい。一杯教えてもらうの!ティアおねーちゃんも、教えてくれる?」

 彼女は師匠ではない、だから、師匠とは違う事を教えてくれる気がする。
 情報は、多角的に手に入れると言い、様々な事を覚えるのは良い事のはずだ。だから、おねーちゃんの知ってる、教えられることを、学びたいな。
 妹は、姉を真似るものです。
 ちなみに、やっておしまいといわれたら、「あらほらさっさー!」と、やってしまう系幼女です。危険物。

「熊さんも其れが判ってるのか、最近、見ると逃げるんだよねー。追いかけっこ楽しいのー☆。
 ヒグマとかグリズリーとか、かな……?
 美味しく食べられるよう下処理はしておくよー!」

 下処理、あく抜きとか、血抜きとか、食べたこと既にある幼女、じゅるりと、涎。

「はーい。じゃあ、お魚さん取って来るねー。
 草食は、森だと……鹿かなぁ。」

 川が近いなら、魚の方が良いか、と幼女は考える。
 そして、川に付く為り。木の枝を何本も手に入れて簡易な柵を作り川に横断するように置いた。
 次に、軽く大きな岩を殴る。その衝撃で魚が気絶するガチンコ漁法。ファンタジーだから許される暴挙。
 それを何度も繰り返して、魚を浮かせて捕まえる。
 分身を出して、ちゃんとお魚それぞれ腸や鱗取って、串にさして焼くだけの状態へとしていく。
 火を焚いているおねーちゃんの元に、大量のお魚さんを持って帰るのだ。

ティアフェル > 「子供は気にせずいっぱい食べていっぱい遊ぶといいのよ。
 わんぱくでもいい、逞しく育ってほしいものよ……」

 食べる為に生きているような勢いで食べている様子を見て止められるはずもない。
 ぽんぽん、と背中を叩いてフォローを入れる。子どもの内は食べるのも遊ぶのも仕事のようなものだと。
 その為に何十人分調理することになろうとも大人としてストップしてはいけない。

「もぉかわいいしかない……駄目な大人になっている気がするが……諸ともしないんだからねっ」

 きゅーんとする、きゅーんと。かわいいなあと心底和み愛でる19歳女子はそれこそ止まらない。
 小動物相手みたいな手加減無用な愛で具合。蕩けたような両頬を両手でふにーんと挟んで覗き込んで。
 かわいいー反則ーと声を弾ませる。

「うん、もちろん。わたしに解ることならなんでも」

 小さい弟の勉強をみてやっていたこともある。壊れるなら教えられる知識はなんでもと軽く胸を叩いて請け合う。
 こうして教えることで教えられることもあり、相乗効果を生むものだ。

「わたしが熊さんならそりゃー。全速力で逃げるわ。
 よろしくね。子持ちのお母さん熊は見逃しつつね」

 さもありなん、と逃げる熊を想像してしみじみ肯いた。気持ちがわかるわ。熊の。
 処理はお願いできるようなので、こんばんはおいしい熊鍋だ、と決めて。そうするといっそうお腹が減って来る。
 早くご飯にしようと急ぎ足で設営に入る。
 河原の石で簡易かまどを組んで、枯れた枝葉を集めて火をおこし。
 首尾よく、そして力技で漁をするのを横目に、「うぅわあ……」と時折調理の手を止めて唸っていた。
 栗に穴を空けて焼き栗にしたり、掘り返してきた芋を蒸したり、摘んできた木の実の皮を剥いたりとせっせと立ち働き要領よく調理を行い。
 そして新鮮な川魚がどっさりやって来ると、

「おー、大漁だね。じゃあ、香草と一緒に蒸して、塩を振って焼いて、茸と煮てスープにして…。食べながら作ろうか」

 全部仕上げるのは少し時間がかかる。煮たり蒸したりしている間に先に焼きながら食べて、焼き魚が終わったころに出来上がったものを食べることにしよう、と。
 さっそく集めて置いた枝に刺して手持ちの塩を振って火であぶり始め。

「もうすぐ食べれるからねー」

ラファル > 「そなんだ?じゃあ、いっぱい食べて、いっぱい元気になる―!」

 食べるために生きる、それは、屹度真理だ、生きる為には食べなくては行けないのだから、食べることが楽しいのならば、食べるために生きるのもまた、正しい。
 本能がそう命じるので、そのままに食べて生きて楽しむのだ、ストップ所か、Goサインをもらったと、認識。
 ぐごおごごごご。と、お腹が嬉しそうに、成る。

「ひぃふぁほへーひゃんほはひゃひひひょ!」

 ふにーんと、挟まれて、唇が突き出されるようになったら、言葉がなんか変な発音。
 プルンプルンしている頬っぺたはもちもちで、つるつるで。
 ぷひー、といきをはきだしてみせる。楽しそうなので、幼女もにへーと笑おうとしてみるが、流石に頬をはさまれたままで閉まらない。

「じゃあ、ティアおねーちゃんの得意分野……料理?」

 胸を叩いて任せてと言ってくれるなら、さっそく。
 いっぱい食べるし、食には興味津々だ、おねーちゃんの料理は大好きだから、教えてもらいたい。
 美味しい方が幸せだし。

「あーい。じゃあ、お母さん熊さんは見逃しで、お父さんとか、独身貴族を狙うよー!」

 熊さんに対する感情がある、何かあったのか、と思うけど、熊は大きいから、子供も一緒に食べるとなるとお腹いっぱいかもしれない。
 そして、生態系を考えるなら確かに、熊さん絶滅ルートはいけない。うん、と理解した。
 お魚捉えるドラゴン。うわわしているおねーちゃんの視線に向かって、やっほ―!とサラウンドで手を振る。
 二人いるのは見間違いではなく、分身だ、聞かなければ答えないけど聞かれれば、答える。

「あ、ボクのカバンに調味料あるよ!胡椒とか、砂糖とか、はちみつとか、香草とか、ハーブとか。」

 幼女は食べるのが好きだから。
 そう言うのはいっぱい持っている、バックパックを下ろして開ければ、沢山の調味料、料理酒とか、酢とか、ワインとか、ウイスキーまで入ってる。

「わくわく、わくわく。」

 焼けるのを今か今かと待つ。生でも食べられるけど、それとこれと話は別だ。

ティアフェル > 「それでいいのよ。無駄に食べるのは良くないけど必要な分はしっかり食べなくっちゃ」

 どこぞの貴族のようにお腹一杯になったら吐き壺用意するような食事は論外だが、たくさん食べ物が必要な身体であれば、その分食べればいいのだと。
 食べる量に差があるのは人間だって同じこと。
 我慢して食べる量を減らす幼子の姿はよくないものだ。お腹も食べる気満々で鳴っているので小さく笑みを零して。

「あー。ぜんぜんわかんなーい」

 にこにこ笑いながら感想。頬をふにふに挟んでいる時の発語の意味は全く掬えないが。もちもち柔らかいほっぺは触り心地がよくってしばし堪能させてもらう。
 うーん、食べちゃいたくなるっていうのはこういうことかねえ、と性的な方ではなく考えて。

「そーねえ。家事は大体教えられるかなぁ? あとは手当ての方法とか薬草の知識とか……
 ついでに値切り?」

 意外と編み物や手芸も教えられる。長年次席オカンのように実家で過ごしていたため主婦力は高い。
 食べることが好きな彼女に料理を教えて一緒に作るのもいいかも知れないと肯いて。

「動物もお魚も植物だって、子どもの内は獲ってはいけないものだからねえ」

 必然的に子供を育てる役目がある親も。それは本能的に彼女の方が理解していることかもしれない。
 以上の条件を踏まえた上でおいしそうなのおねがいねーと熊狩りを託す。山賊狩りは非推奨だが熊狩りは推奨するあたり矛盾かも知れないが。野生動物に慣れている分問題ないとの判断。

 魚を獲りながら二重化している様子……あれ? 猛スピードで動いているのか?と目をしばたいたり擦ったり……けれど、不意に火が爆ぜて慌ててそちらに戻ったりで聞く暇がなかった。

「あらー、色々はいってるねえ。じゃあこれ使っておいしいの作ろー」

 料理用にするなら、ウィスキーよりブランデーの方がいいよ、とちょっとアドバイスもして酒や酢まで入っているので様々な味付けができるなと喜んで。
 胡椒を振ったり塩や酒を追加して魚に調味を施し。
 鍋がないので。代わりに器に素材と焼けた石を放り込んで煮ものを調理し。
 大きな葉を皿代わりにして焼いた栗や芋や木の実を盛り付け。
 そして、ほどなくして魚も焼けると、それは盛り付けずに気を付けてね、と云いながら焼き立ての魚の刺さった枝を渡し。

「よーし、じゃあ食べよっか」

 先に出来上がったものを食べ始めようと自分も焼けた魚を構え。いただきますの合図。
 野趣あふれる屋外の食卓が整った。

ラファル > 「はーい!いっぱい食べて、大きくなるよー。目指せ25m-!」

 思わずぽろっと零れるのは全長……ドラゴンとしての大きさです。25mが大きいかどうか、それはその種族によって違うのですがまあ、まずはという所。
 子供のいう事なので、屹度、ストレートに流してくれると思います、彼女が幼女の事をドラゴンだと知悉していれば。
 あれ?言ったっけ、言ってなかったっけ?幼女覚えてない。

「ほー!」

 にこにこしてる、ぷひーと吐息が漏れる。桜色の唇がつーんとつりあがる、一寸むくれた。でも。
 もちもちしてくれるのも、存外悪い気がしないので、その程度。すりすりしたいけど出来ない程度のストレス具合。

「薬草の知識は、おいちゃんからおそわってるよー、手当の方も。家事は教えて欲しいかも。

 あと……値切りはあまりしない方が良いよ?
 ぼくんち、商会だけど、お父さんが言ってた。
 食べ物とかは、作ってくださっている農家さんの努力の結晶を安くしろっていう事になるし。
 服とかそういう物は、一生懸命作った人の腕を、貴女の努力や技術はその値段に値しないっていう物だもの。
 それに、商人ギルドの皆様が相談して決めたお値段なんだよ?

 不当に値段を上げている商人さんからは、どんどん値切っていいと思うけどー。」

 生活が懸かっているから、とついつい値引きするのは判る、ついでに言えば悪い事とは言わない。
 それに、商人の方から値引いてくれることもあるだろう、それは、商人の方の都合なので、良い事だと、思う。
 でも、値引きを教えると言われても、そもそもの話、商人の娘なのです。こう見えて。
 だから、値引きに関しては、思った以上に反応してしまって。

「……ごめんなさい。」

 強く言ったこと、彼女の善意に対しての返答にはこれはないな、とペコリ、と謝罪。

「ウン、ネダヤシハイケナイコトダヨネー。」

 たった今、お魚さん大量に取ってきた件。
 根絶やしにするような漁法なので、視線をつつーっと、あっと向いてほい。THE棒読み。
 大丈夫、多分未だ根絶やされてないはず、おさかなさんがんばえ。
 熊さんは良いんだ、盗賊より強いのに。まあ、人間の強さは、物理的な強度だけではないので、彼女の判断に不思議は感じなかった。

 分身に突っ込みがないなら、それはそれで。
 まあ、幼女は色々と不思議生命体なのです、まる。

「ブランデー?こっちの方が良いの?美味しいから飲もうと思ってた。」

 あるのです、問い詰めれば、東洋の米の日本酒とか、芋、米・焼酎とかいろいろなお酒が出てくる出てくる。
 エールだって見つかるレベルです、えへ、と笑ってごまかす。このかばん、マジックアイテムだ……!

「いただきます!」

 野生児にとって、野生の料理は大好物。
 頬を赤く染めて、おいしー!と、両頬膨らませながらもぐもぐあぐあぐ。

ティアフェル > 「いや、それ泳げる距離…!」

 突っ込みはしておこう。
 それは体長というか。泳ぎを習い始めたばかりの子の目標みたいだ。
 特にこんな姿の幼女が云うとそうとしか聞こえない。
 とりあえず、人じゃないのは早い段階で分かっていたが。
 差別意識の強い土地柄、下手に斬り込んでいいものかどうか気を遣っている。

「あー、柔らかー」

 もにもにもにもにもにもに。
 小さなほっぺたをいじくり回す大人の図。けれど、しばらくもにもにしたら満足そうに頭を撫でなでして。
 弟にやるとうざったがられるのでやっぱり妹のほうがいいなあ、と不届きな感想を抱いていた。

「じゃあ、お料理とお裁縫だね。寒い時期だから毛糸編みからかな。
 値切りにも色々とあるのよ。
 たとえば、少し傷んでいても買うからおまけしてね。売れ残ったのを全部買うから少しおまけしてね。
 ここのお店をいつも贔屓するから少しだけ安くしてね。
 そういうことよ。なんの理由もなくただ安く買いたいからっていうのは良くないわ。
 買う側と売る側の気持ちのやりとりでもあるの。売る側も得をする値引きもあるの。結局売れ残るのが一番困るでしょう。食べ物なんかは。
 市場での買い物は常連さんとお店とのコミュニケーションだからね」

 ふる、と首を振って謝らなくていいが。ただし、きちんとした店舗での買い物と売り買いが娯楽のひとつと化している庶民の市場ではまた事情は違うのだ、と説明した。
 まあ、それでも商会の運営理念とはことなるだろうから、やはり間違っていると云われれば仕方がない。

「全部獲りきっちゃうと、次の分がなくなるからねえ……」

 極端なことをすると結局しっぺ返しは自分が食らってしまうことにもなる。
 多分、大丈夫だと思うが、恐々と川の中を覗きこんで確認してしまう。だ、だいじょうぶよね?

「そうね、ウィスキーは少し風味に癖があるからこっちの方が……ああ、子どもの内からの飲酒は脳の発育に影響が………あれ? そこら辺の成長圏外かしら……」

 子供の飲酒は推奨できないが、人ではないのなら影響はないのか、そうだとしたらとやかく云いづらいがそれにしても絵的にどうなのか。最近竜族と云うより酒量の多さと大食は鬼族なのかと疑い始めている。 
 鞄が見た目以上の容量を持っているのは、自分のものもそうなのであまり不思議には思わないが、それにしたって酒ばっかり詰めすぎだなーと。難しい表情。

「はい、いただきます。
 んー。獲り立てはおいしいねえ、やっぱり新鮮で。
 野外料理の醍醐味だわあ……」

 さっきまで川を泳いでいた魚は鮮度が高くって身がしまって格別だ。焼き立てを覚ましながら齧りついて目を細め。
 食べている内に次々とおかわりを焼き、それから岩を熱しながら香草と蒸した魚の具合を見て、焼け石で煮ている器の石を取り換え。そうして食べている内に次々仕上がっていく料理を出して、熱い内に平らげていくが、早々にお腹いっぱい、とこちらは手を止めた。
 彼女の10分の一くらいしか食べていないが、普通ならそれで充分。ふいーとお腹を擦って食後の山ブドウを味わっていた。

ラファル > 「泳げるの……?
 あ、ご飯の後、一緒に泳ごう!」

 25は、泳げる距離らしい、じゃあ、もっと、大きくても良いかもしれない。彼女の突込みに異次元な思考は、ぐるぐると、メビウス回転を始める。
 そして、結果は、遊びたいという欲求が思考を邪魔をしたらしい。
 せっかくおねーちゃんがいるんだから、そして、其処に川がある。泳ぎの距離とかそんな話題が出た。
 泳いで遊びたいに帰結する。

「はぅー。もにもにしたぁ。」

 しばらくの間、もにもにもにもにもにもに、頬っぺたをもにもにされていた。
 それが終わって、頭をなでるので、うひゅぅ、と変な吐息が零れる。
 こう、ほっぺたをもにもにされつくしたのが、精神的に疲れたのか嬉しいのか自分でもわからなくて、ちょっと不思議な感覚。
 首を傾いでもにもにー?と、不思議な言語と共に、おねーちゃんの頬へ視線が。
 もにもにしたら、気持ちいいのだろうか?

「お料理、やったー!毛糸!温かい。プレゼントに良いね!」

 料理と編み物に関しては手放しに喜んで。
 次の、値引き、に関しての彼女の返答には、静かに耳を傾ける。
 金色の瞳は珍しく真面目に、彼女の一挙手一投足を見つめていた。

「………コミュニケーション。おまけ。」

 正直に言えば、幼女の方は実家の、商家の手伝いはほとんどしていない、大きな枠組みは知っていても、小さな売り手と買い手。
 商人と客、そう言った所までに意識は向いてない。
 実家の方の姉であれば、幼女の様な反応はしなかっただろう、値引き、だのそう言ったことを提案して行う人物だからだ。
 深くかかわってないからこその勘違い、そして、優しく諭してくれる姉。

「うん。覚えたよ。」

 値引き自体は、悪い事じゃない、と最初からは判って居た。その上で、彼女の。ティアフェルのコミュニケーションという項目が追加された。
 売り手と、買い手の気持ちのやり取りと言う部分も、関連付けられた。
 幼女は消費者の視点に触れることができた。
 ありがとう、とにこやかにお礼を言うのだった。

「うん、多分、柵も壊したし、大丈夫、ダイジョブ……。」

 川のお魚さんは、海からくるのも多いし、大丈夫なはずだ。プルプルがくがくしながら、こくこく頷く幼女。
 ぶんぶんぶんぶん、頭がものすごい勢いで上下する。

「うーん?わかんない。でも、お酒、受け付けてないよ?」

 飲んでも酔う事がない、ドラゴンだからだろうか。なので、大丈夫じゃないかなぁ、と気楽な思考。
 両親も家族も、家令も止めない、止めるとしても―――家の在庫がなくなるから、の方でなので。
 難しそうな表情に、怒らないで、と上目遣い。

「こう、取り立てをキュッと占めて食べるの美味しいよね!
 海の方のお魚さんだと、こう、生のまま切って食べるとかもするらしいよね。
 あれもおいしいんだー!」

 こう、飲酒量で種族が間違われかけている。そんな事実に気が付かない幼女は、新鮮なご飯の食べ方に感動する姉に乗っかる。
 海の幸も、新鮮だととてもおいしく食べられる、今度は、海の幸も良いね!と思うのだ。
 持ってこようかな、お魚さん。マグロとか。

「おいしいね!」

 彼女の10倍、もぐもぐ食べながら、お手伝い。
 熱い石ころは素手でつかんで川に投げて冷ましたり危ない所は幼女が担当する。
 人外なので、熱とか大丈夫だよ、と教えてもいる。
 山ぶどう、器があれば、ジュースにできるのかなぁ、と食べているところを眺めて考えていた

ティアフェル > 「無理…! 泳げるけど無理!
 夏になったらね…!」

 こんな寒い時期に水着もなしで川に飛び込めるほどタフな生命体でもないです、とぶんぶん、首を振った。
 かわいい妹の云うことはなるべく付き合いたいけれど、さすがに風邪をひく。

「うん、どっちかというともにもにされてたよねー。はー。いつまでもこのほっぺでいて欲しいわあ…」

 無理な相談だろうが。弟が乳児の時にも抱いた感想だが。柔らかさの余韻が残る指先をわきわきした。
 わたしの頬に絶望しなければいいわよ…とほっぺに向いた視線にそんな感情を含んでなんとも云えない視線を向けた。
 彼女に比べれば老いたほっぺだ…。

「じゃあ、今度はお家でお料理と編みもの教室ね」

 毛糸製品はこの子には暑苦しいだろうが贈り物には確かにいい筈で。
 うんうんと目を細めて肯いて次の約束。

 値切り、という言葉も悪いのだろう。こういえばよかった。市場での商談の方法、と。
 黙って考え込んでいるように見える姿に、うーん、商人のお嬢さんに余計なこと云っちゃったかなあとアホ毛を悩まし気に揺らめかせていたが。
 やがて口を開いて素直に肯いてお礼を聞いてはどこか微苦笑気味に肯いて。

「うん、でもこれは単にわたしの意見だから。ラファルちゃんのお父様には内緒ね」

 適正価格を愛し値切りを極端に嫌がる商人さんもいるから、ひょっとして聞いたら嫌な気持ちになってしまうかも知れないし、余計なことを吹き込む女と思われてしまうかも知れない。
 市場によっては最初から値切りのやりとりを眼玉にして、むしろ値切れという変わった処もあるものだが。
 一意見を素直に聞いてくれる性根の良さにはやはり和んだ。

「魚いっぱいいるから大丈夫ね、うん」

 もう獲ってしまったのだからそもそも返しようもないし。それにここで滅びる程、小川ではない。
 ぶんぶんな様子にまだいる、魚、大丈夫と肯き返して。

「ん? うん、んー……それは大丈夫なの……?」

 受け付けていない、という返答に微妙な顔。いいのか悪いのかぴんとこない。だけどさすがに妹とかわいがる小さい子が酒豪だったらなんだかこう、こう。複雑だ。頭堅いのかわたし、とうーむと悩んだが。
 怒ってない怒ってない、と急いで返答してへら、と相好を崩し。

「ほんとほんと、川のお魚には寄生虫がいるから、海の魚は生のもありだよね。
 ラファルちゃんだったら魚というか、クジラ一頭くらい要りそうだけど……」

 食いしん坊な様子に思わず肩を揺らして。大型魚に齧りつく絵を思わず想像してしまった。
 マグロとか遠洋でしか普通かからないもの持ってきたら、潜ったんか、泳いだんか、とタフさに遠目になりそうだ。
 船に乗ったなんて思いません。
 
「ほんとだね、一緒に食べると一層おいしいねー。
 でもわたしはもう、お腹一杯だ……焼石素手でつかまれるとめっちゃ心臓に悪いな……」

 大胆過ぎる行動に、心臓も鍛えられがちだ。一瞬悲鳴が上がるけど。
 食後の口直しに果物をもくもくと咀嚼し、それも充分食べたところで、あー。帰るの面倒くさいなと思いながらも彼女が全部平らげるのを待って、今日は山を下りるだろう。
 片づけをして火の始末をして、帰ってお風呂入りたい――と楽しい一日を終えていくのだった。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」からティアフェルさんが去りました。
ラファル > 「うん!約束!」

 そういえばそうだった、人間さんは幼女のように強くない、というか、半裸の幼女はいまだに半裸なのである。寒さを感じてないのである。
 寒いという言葉に、そういえば、とはっとしたのか、夏になったら、と言う言葉に、元気よく約束を。
 一緒に遊ぶのは楽しいんだ、おねーちゃんともっと遊んでいたい!と思う物で。

「もにもにされてたいかー。んー。どなんだろ。」

 何時までもこのほっぺで居るのだろうか、まだまだ成長期だ、脱皮したらもっと変わる気もするし。もちもちの儘かもしれない。
 もにもにしてみたいという希望に関しては……凄い絶望の視線がこちらを見るのだ。
 触れると絶望するかも的な言葉も紡げば、怖くなる、どうしよう、じぃぃ。

「わあい!ボク、頑張って覚えるよ!」

 編み物も、料理も、それ自体は技術として持っていた方が良いと思う。教えてくれることはとても嬉しいから。
 学ぶことは楽しいから、一生懸命覚えることにする。
 次のお約束は、楽しみだなぁ!幼女はワクワクしていた。

「ううん、人はそれぞれ、色々考えるものだから、一つが正しくて一つが悪いは、無いと思うの。」

 其れこそ、商売という物は、コミュニケーションとも言える。
 得になる、損になると言うのは、本当に本人の感覚次第でしかないのだ。
 適正と言う言葉がすべてに当てはまるとも言えないから、商人ギルドがあり、商人が品物の価格を相談して決めるのだろう。
 売り方、買い方、それらは、学んでいくしかなくて、彼女の買い方も一つの手段でしかないと感じた。
 微苦笑気味な笑みと、パパに内緒と言うのには、うん、と頷く。

「よかったー。」

 お魚さん全滅回避、今後食べられないのは悲しい事。だから、生き延びていると言うのは安堵のため息を。

「……さ?」

 お酒、効果がない、本当に大丈夫か、判らない。今まで大丈夫だったし、ドラゴンはお酒に強いし。
 宝多分大丈夫だろうという程度、微妙な顔のまま、でも、直ぐに相好崩すおねーちゃんに、にぱ。と笑い返す。

「クジラ……今度。ね?」

 彼女は大変な事を言ってしまいました。確かに、クジラ、は在りだ、大きい、凄く大きい。
 流石に自分一人で取るのは難しいかもしれない、ドラゴン状態でも、自分よりも大きいのだ。
 お母さんとか、誰か、手伝ってもらわないとかもね……と、考えるあたり、無理と考えないドラゴン。

 ちなみにマグロの場合は。飛ぶ、泳ぐ、潜る、全部します。船もあり。

「でも、片付けしないと、だし使わなかくなった分は早く戻せば後が楽ー。」

 慣れてくれているらしい。
 ちょいちょい色々と、人外らしい幼女。
 一緒にご飯を食べ終わり、仲良く片付けて。
 ちょこちょこうろうろ、お姉ちゃんの周りをうろつきながら、一緒に家に帰るのだった―――

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」からラファルさんが去りました。