2020/09/04 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にサチさんが現れました。
サチ > 太陽は天頂から傾き始めて大分立つ。まだ茜差すほどの斜陽ではないが、刻々とそれには近づいて行っていた。
「っはあ、はあっ、はっ……!」
そんな頃合いに街道の途中を呼吸を乱し、何かから追われる様に時折後ろを振り返りながら駆ける一人の娘。
額から流れる汗を拭いながら、振り返った後方にはもう気配がないと悟るとようやく足を緩めて、本当は止まって休みたい所だが、それも怖い。そういう様にのろのろと引き摺る様にだが足を止めず。
「っは~~~……今日は……厄日です……」
半刻ほど前に起こった事を思い出しながら、生きた心地がしない、と言う様に身震いして零した。
例によって使いの仕事で街道を乗合馬車で移動する途中、馬車が山賊に襲われてしまい、一応乗っていた護衛はいたのだが賊の方が上手だったらしく早々に乗客を置いて離脱してしまったからさあ大変。
その後は当然の如く略奪が始まった。これは――拙い、と危機感知能力に優れたタイプの貧乏人は沈む船から逃げ出すネズミの如く荷物を抱えて逃げ出したものだから何とか事無きを得たのだが――。
それでも、夕刻の迫る山賊街道で女の一人歩き。無事に乗り切れるかどうか………。
「ああ……どうしたらいいんでしょう……」
生活力は人並み以上だがレンジャー能力などはお持ちでない身。賊に再び出くわせばまた無事切り抜けられるかは運次第だ。

サチ > こんな状況な物だから風に木擦れが響いても、ビクリと肩を震わす。そして何でもない事を確認して胸を撫で下ろしてまた進む。
どうか、どうかこれ以上の厄には見舞われません様に。
そう祈る事くらいしか出来なかった。持ち出した荷物をぎゅっと胸の前でしっかり抱えて、辺りをきょろきょろと警戒しながら進むのは酷く消耗する。然程の距離を過ぎた訳でもないのに早くもぐったりして。
「日が落ちたら……どうしましょう……」
野盗の類だけではなく、山中に棲まう獣たちも活発になってくるのだ。
無事に抜けられる確率は絶望的に低い。それくらいは理解して思わず天を仰いだ。刻々と傾いて行くお日様に、お願いまだ沈まないでと請わずにいられない。
「解ってはいましたけど……やっぱり安い乗合馬車は……最悪ですね……」
けれどここまで悲惨だとは思わなかった。護衛の逃げ足の速さには舌を巻いた。あいつら何しに来た、給料泥棒、と顔を見たら罵ってやりたい。
はあ……大きな嘆息を零しながら疲れた様な顔で、とぼとぼ歩きながら時折怯えた様に周囲を見回し、疲れ切った足でそれでも進んで行く。

サチ > 物音が響く度に、ああもう駄目かも、今度こそ終わりかも、そんな風にいちいち悲観しながらの重苦しい道行き――
果たして、奇跡的に何事もなく切り抜けられるかは――赤々と沈みゆく斜陽に変わり、徐々に光を増してゆく、今はまだ白んだ月だけが知っていた。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からサチさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にタマモさんが現れました。
タマモ > 「………ふむ」

とん、とん、と木々の枝を足場に、少女は移動していた。
ここは九頭龍山脈、山賊街道が隣接した山岳地帯だ。
今日も今日とて、適当に、目的も無い散歩である。
あわよくば、何か起こると面白い、程度の考えで。

まぁ、そう言うのがなくとも、河川が見付かれば釣りをするし、温泉があればのんびり入るし。
その時その時で、臨機応変で楽しむのもありだ。

移動をしつつ、視線は時折周囲へと向けられていた。
僅かなりとも、何か見えるならば即反応である。