2020/08/15 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  日暮れまではまだ時間があるが、ゆっくりしていたらあっと云う間に日没だ。
 少しずつ少しずつ、日は傾いて行っているものの日差しの強さは余り弱まっている感じはしない。それでも標高は多少あるので平地よりは大分風がひんやりとしていて過ごしやすい。

「日没後は特に山賊が湧いてくるからなー……急ご」

 山賊街道、などと名付けられたこの道は勾配だけの問題でもなく難所だ。
 女一人の道行きでは、うっかり出くわすと厄介なことになってしまう。はー、と小さく嘆息を零しつつ足を速め、滲んだ汗を拭っては、

「どーか出て来ませんよーに! 犬! 山賊! 犬! 犬!」

 山賊よりも野犬の方が個人的に厄介らしい。犬出てくるなと山賊の場合よりも強く念じながらてくてくてくてく、ひたすら足を進めて行き。

ティアフェル >  ――で、大体そんな懸念を抱いている時に限って。災厄は行く手を遮ってくるもので。

「きゃ……?!」

 ざん!

 突如進行方向に進路妨害を仕掛けるがごとく道の脇から躍り出てきた、いかにもという風情の男数人が行く手を阻み。

「…………………」

 『っへっへっへ、ちょうどいい獲物が通りかかってくれたもんだぜ…』ぼろっちい服装にぼさぼさの髪無精髭、テンプレ感満載な科白を聞かせてくれるもので思わず真顔になって少々硬直した後。

「キタコレやっぱりなあぁぁぁぁ!!」

 反射的に頭を抱えて叫んだ。なんだかパターン通りで脱力しそうになり。
 わたしもここはいっちょ、「キャー助けてー!」もしくは「あーれー!ご無体なー!」とかいかにもな悲鳴を上げて震えあがってみるべきか?
 開き直ってそれっぽく乗っかってみるかどうか、悩んだ。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」にタマモさんが現れました。
タマモ > ここ九頭龍山脈は、今日も平和だった。
まぁ、それは己から見てのものだが。
いつもの気紛れの散歩、いつもの木々の枝を使った移動だが、その途中で聞こえる声に、ぴくん、と耳が揺れる。

「………はて?」

なんか、定番のオチがやってきた、それを彷彿とさせる叫び声。
そんな声が聞こえれば、当然、興味が向くのは仕方無いと言うものだろう。

とん、とん、とん、と枝を伝い、声の聞こえた方角へ。
そこまで来れば、それらしい光景が、すぐに見えた。
男数人と、少し離れ、少女らしき姿。
それを見れば、己もこう思うのだ。

あぁ、うん、ありがちな光景だ、と。

そんな光景を見れば、やはり、次を期待するものだろう。
そこから更に定番通り事が進むか、意外性を見せてくれるのか。
だから、静かに眺めてみよう。

ただ、ある種、その少女が冷静であるのならば。
男達の姿から少し上、木の枝の隙間から、ゆらゆらと揺れる数本の尻尾が見えるかもしれない。
だって、別にしっかり隠れる必要なんて、ないのだから。

ティアフェル >  観戦者が混じったとはまだ気づいていない段階。
 ご無体な、はちょっと古めかし過ぎ……と云いますか態とらし過ぎですかね、と判断して――

「キャー! 助けてー!」

 を採用して見た。
 女の子らしく、コレで。とふざけた思考で試みてみたが。
 山賊連中には好評だった。一応怯えたような悲鳴を聞いたものでちょろいったらない、と判断して早速下卑た笑いなど響かせているもので。
 せーぜーMAX油断しろや……。
 胸中で唾棄しながら、ぐっとスタッフを握る手に力を込めそれとなく上体を低くした。
 黙ってやられる気はない。大人しく慰みアイテムに成り下がる気も毛頭ない。

 ただ――それも相手の実力次第ではあるが。最悪一発カマして逃げるくらいはしないと冒険者としてアウトだろう。

 そこで飛びかかってこようとする男を迎え打とうと、スタッフをフルスイングしたその時――

「えっ…?!」

 男の後ろの樹上からチラつく尻尾に気づいて一瞬隙ができる。
 大の犬嫌いは、犬の尻尾かと誤解して動揺してしまったのだ。考えてみれば犬は木には登れないのだから違うに決まっている――
 そう、冷静な部分で判断した時には、スタッフを顔面に叩きこんだ男は昏倒したが、後続に対する反応が遅れた。

「――ッ!」

 普段なら軽く避けられる棍棒の一撃を側頭部に直撃ではないが掠めてしまい、よろめき。くらっと眩暈がしそうになるのを耐えながらどうにかバックステップで距離を取ったが。バランス感覚の狂いを感じる。

 マズイ――

 やや形成が悪い。背中に冷たい汗を滲ませながら回避、離脱を思案し始めた。

タマモ > どうやら、少女が選んだ選択肢は、定番を突き進むものらしい。
有り体な叫び声だが、明らかに、その声に真意が篭っていないのだが…まぁ、それは簡単に気付く。
つまりはあれだ、下に居る男達を往なすくらい、少女は出来るのだろう、との考え。
だから、己は静観に徹する。
………のだが。

「…うん?」

飛び掛る男、それを迎え撃つ少女。
そこまでは、予想通りのものだったのだが、そこで不思議と少女の動きに変化が見えた。
結局は、出来た隙を突かれ、棍棒を受けてしまったようだ。

しかし、しかしだ、あの一瞬、視線がこちらを向いたような…?
もしかして、あれってこちらのせい?
そんな考えが、ちらっと浮かぶ。

「あー…もしそうなら、このままってのもあれじゃのぅ…」

ぽりぽりと頬を掻き、よいせ、と枝から腰を上げる。
逃げ切れるのならば良し、逃げ切れないのならば、助けるしかないか。
どちらにせよ、それを問うておかないと、後味が悪い。

静かに、枝を飛び移り、少女の真上へ辺りへと移動。
次の少女の状況次第で、己も動きを決めようと。

ティアフェル >  しかし、樹上で暢気に観戦している存在がいるのも可怪しな話。やはり犬――いや違う。ぜーったい違う、だって犬が木登りできる世の中になったら――わたし死ぬじゃん。
 ノー根拠な結論をぐるぐる纏まらない思考で弾き出しつつ、平静を保ってともかく山賊相手に立ち回ろうと動いたが――、最初の一撃が動きを鈍らせてしまい。

「ッ、っの……せい!」

 右手から再び棍棒を振り抜いてくる攻撃をすれすれで回避し。むしろステップを踏んで振り抜いた隙を衝いて距離を縮め脇腹へ叩きこむが、浅い。あまりダメージにはならなかったようで、逆に左手から続けざまに突き出された短剣に肩口を裂かれた。

 ぽた、と路上に赤が散り、焼けるような痛みに眉をしかめ。

「―――!」

 そして、いつの間にか真上に移動していた気配に勘付き。無意識に見上げると、誰かいた。
 尻尾の主だ。良かったまったくちっとも犬じゃない! ほんっとーに良かった! おめでとうありがとう!
 一瞬でそんな安堵をカマしている場合ではなく。

「あっ――!」

 機動力を削ぐために足元に投石を受け、よろけた。そこを衝いて纏めて三人が飛びかかってくるものだから、走馬灯が過りそうになった。

タマモ > 今この場で、今の戦いとまったく関係ない、そんな思考を巡らせている少女。
そんな事は、己が知る由もある訳がなく。
心の中で、がんばれー、がんばれー、と己は応援を送るだけだった。

が、世の中、そんな上手くいくばかりではないらしい。
攻防を行う男達と少女だが、さっきの一撃があるか、少女が一歩二歩不利な状況か。
そう思っていたら、何か視線がこちらに向いた、っぽい?
こんな状況で、不思議な安堵感を漂わせる少女だが、足に受けた次の一手で王手となった。
よろめいた少女に向かい、一斉に飛び掛る、三人の男達。

あぁ、このまま眺めてれば、その後のお楽しみ?も見れるかもしれない…
そんな考えが、頭を過ぎる訳だが。

「さすがに、それはなしじゃな、仕方無い」

ぽつりとそう零せば、とん、と枝を蹴り、飛び降りる。

「ていやーっ」

大して気を入れてない声を上げながら、げしんっ、と飛び降り際に端の男を蹴り飛ばす。
それは、隣に居た男、更にその隣にいた男を巻き込み、横っ飛びに吹っ飛んでいった。
気の抜けた掛け声の割りに、結構な威力はあったように見える。
見えるだけで、威力は無く、ただ吹っ飛ばしただけなのだが。

そして、そのまま、しゅたんっ、と軽やかに地面に着地するのだった。

ティアフェル >  上で応援されているらしい。そんな気配を察知したのか、上見たら見知らぬ少女がいた。
 絡まりそうなほど大量な尻尾を持っていて耳も生えているが――犬じゃない! それでいい。それだけで、いい。
 しかしそんなに悠長に安堵してる場合でもなく、一瞬の隙が命取り。
 一斉に襲い掛かられて万事休すかと思われたが――、

「?! おわっ!」

 いまいち色気のない悲鳴を上げながら、襲い掛かってこようとした男の一人が蹴飛ばされ、連鎖してもう一人も飛んで行った。
 結局威力があるのかないのか良く分からないが、三人の男の内二人は離れて、一人くらいなら腹に引き離すように足蹴りを入れて後ろへ転倒させ。
 そして着地したそちらを見やって、

「あの…?! どなたか存じないけど、手伝ってくれる…?! あ、タダとは云わない、お礼とかするんで!」

 男を吹っ飛ばしてくれたことから少なくとも山賊側ではないことは判る。それならばぜひともこっちへ加勢してもらわねば、と倒れてよろめきながら起き上がってこようとする男をスタッフを構えて見据えながら、いち早く回復してきた男の脳天にスタッフの先端を叩き込みつつ伺いを立てた。

タマモ > とりあえず、降りてしまったからには、少女どころか男達にも己の存在はばれてしまったか。
ともあれ、そこでやっと、己の姿を双方、ちゃんと確認出来るだろう。
狐の耳と複数の尾を持つ、異国風の着物を着付けた少女の姿。
少女と、男達の視線の中。
ぽんぽんっ、と着物の埃を払うかのように、お尻を叩き。
ぐーっと軽く、伸びをする。
緊張感、無し。
そうしてから、改めて、少女へと視線を向けて。

「まぁ、一端は、妾にもちとあるしのぅ…
そのお礼とやらに期待して、軽く手伝ってやろうではないか」

何か、そんな言葉の遣り取りをしてる間に、男の内の一人が殴り倒されていた。
とは言え、それは一瞬で事終わる。
ただ吹っ飛ばしただけなのだ、残った二人の男は立ち上がるのだが。
すっと片手を差し出し、もう片手を続けて伸ばせば、ぱんっ、と手を打つ。
その途端、糸の切れた人形のように、静かに男達は崩れ落ちるのだ。
そうした後、こんなもんか?みたいに、少女へと振り返ってみせた。

別に、殺めたりはしていない。
よく見れば、ただ意識を失っているだけなのが分かるだろう。

ティアフェル >  突然現れたイレギュラーな存在に、山賊たちは警戒するも――獲物と同じような少女だったものでぶっちゃけナメてかかった模様。
 意表を突かれた飛び蹴りには倒されてしまったが、それも大したダメージではないことから、二人纏めてと考えるのが定石。
 ――しかし、早めに気づくべきであった。飛び入りの少女がやたら余裕綽々であったことを。

「っしゃあ、助かる!
 ご期待に沿えるかわかんないけど誠意は尽くしまーす!」

 がこがこ、と脳天に食らわした男にスタッフを何度が打ち込んで追撃しつつ、お手伝いを受けてくれた声に声を弾ませて。さて、残りの野郎どもをどう料理したろうか、と思案し始めたが――

「……っへ?」

 そんな必要もなく、彼女が徐に手を打ち鳴らしたかと思えば、糸が切れたように出し抜けに昏倒する男達。思わず目を見開いて何度が瞬き。
 それから振り返る相手に、きょとん、とした視線を向けて。

「瞬殺……?! 死んではなさそーだけど……」

 道端で倒れた姿を爪先で突っついて確認し。ともかく助かったようだから先にお礼と思い当たり。

「どうもありがとう! これ、ほんの気持ちですが……!」

 しゅば、と懐から取り出した一枚の紙切れ。書かれている文字を確認すると『肩叩き拳』と書かれていた。券、ではなく、拳、と。なんでそんなものを持っているのかはヒ・ミ・ツ。

タマモ > 数人程度で活動しているっぽい山賊達だ、この周辺にある、己の噂も知らないだろう。
王都にさえ現れる、神出鬼没、自由気ままな狐の存在を。
大きな賊に集団ならば、こうはならなかったのだろうが…まぁ、今更の話である。
倒れた男達を一瞥するも、すぐに興味を失い、少女へと向き直る。

「ふふんっ、妾の手に掛かれば、この程度は造作もない。
………あぁ、意識を奪っただけじゃ、少しすれば、目も覚めるじゃろう」

きょとんとする、少女に向かい、自慢気に胸を張って答える。
と、男達の様子を確認し、ふと思い出したように、懐から取り出し差し出す紙切れ。
それを受け取れば、それに視線を落とすのだが。

「………いやいやいや、ちょっと待て、待つのじゃ。
これ、割に合っておるのか!?」

少女へと、視線向ければ、びしり、と指差し問うのだ。
うん、これ、当然の主張じゃないか?多分、間違いない。

ティアフェル >  一瞬で倒されてしまった山賊たち。
 こんなに速やかに片がつくならもう少し早めに出てきれたら嬉しかった、と贅沢なことを考えながら、小物な山賊たちを見下ろして、賞金も出そうにないなーと小さく息を吐き出し。
 そして向き直られたところではこちらは傷を負った箇所に短く詠唱紡いで回復魔法を掛け。
 それから視線に反応するように愛想よくにこにこと笑みを投げかけ。

「やー、助かった! 良かった犬じゃなかったし! 犬じゃなかったし!!
 そっか、じゃあ起きると面倒だし、ちょい歩きながらでもいーかしら?」

 少しすれば、ってことはのんびりしてたら起き出してくるのだろう。てくてくと街道を進もうとしながら小首を傾げ。
 そしてお礼にと俊敏に差し出した『肩叩き拳』 ひとまず受け取ってもらえた。

「あ、ごめん、揉む派だった? 分かった、じゃ、特別ね?」

 そう噛み合ってないことをほざくや否や、ちょっと失礼、とその手に持たれたままの紙切れに取り出した細削りした木炭で『肩揉み拳』と上書きして、かなり見づらくなったそれに満足げに肯くと。

「これで、よし、と。――早速使っちゃう?
 いつでもいーよ。凝った時に云ってね!」

 にこにこにこ、と屈託のない笑みを浮かべながらなんぞほざいた。