2020/08/09 のログ
■タマモ > 九頭龍山脈、本来は、少女の式の一人が見張っている場所だ。
しかし、こうして少女が気紛れでやって来た時は、その姿を見せる事はない。
その理由は二つ。
一つは、少女が居るならば、その場に己は必要ない事。
もう一つは…普段の少女に、関わりたくないからだ。
別に、不仲と言う訳ではない。
単に、疲れるから、である。
「………むっ!?」
くん、と釣り糸が引かれ、釣竿が軽く撓った。
伸びる手が釣竿を握り、その感触を確かめる。
上下左右に僅かに揺らし、その具合を確認。
「えいやっ!」
そして、タイミングを見計らい、ぐいっ!と一気に引き上げる。
ざばぁっ…!水飛沫が上がり、勢いよく魚が姿を現わす。
そのまま、魚は少女へと向かい、飛来して…
ぱしん、器用にその身を手で受け止めれば、流れるような動きで、するりとタライへと投げ落とす。
本来ならば、中に刺さった釣り針を取って、とやるのだが。
少女の技術は、それを不要としていた。
器用に引かれた釣針は、魚の口から外れている。
ひゅんっ、と釣竿を振るい釣針を手元に寄せれば、かたん、と一度釣竿を岩の椅子に立て掛けて。
ご案内:「九頭龍山脈 山中の麓付近」にアンヤさんが現れました。
■アンヤ > ギラギラと怨めしく呪わしい程に照りつける日差しの無い夜は矢張り過ごしやすい――…多少じっとりとしているが、だ。
王都の方では涼しくなれるような場所を探していたが、何処も人人人で、涼しくなんてある筈も無く王城に駆け込むにはちと空気がピリピリとしていたもので、仕方なく今夜は山野を駆けての散歩であった。
九頭竜山脈
山中の麓付近まで足先が向いたところで、おや何とも美味そうな……ではなく、いや実際に美味そうではあるが、魚を器用に釣る少女と釣られた魚を見つけて、ふらりと足をその方へ向ける向けて遠慮なく少女に声をかける。
一応友好的に、帯状の眼帯で隠した左目も右眼もニィと細めて、それが見合うようにギザ歯がチラリと見えるように口元も笑みの形にしてから……。
「ふむ、随分と美味そうな魚であるな。それに魚を釣ってる主の尻も中々に美味そうな……な……?」
挨拶も流暢に友好的に。
まずは美味そうなそれを褒めてから、続き釣り人も褒めれば相手も悪い気はしないだろう。
言葉の最中も距離を詰めながら、紡ぐ言葉の最後はぶれる。
なんせ隻眼が見つめる先の釣り人の尻には九つの尾、言葉では褒めた尻なんぞ見えもしない。
それに尾が九つと言うのがまた言葉に困る。
縁起が悪いとか九つの尻尾に恨みがあるとかではなくて、俗にいう尻尾の数は持ち主の力の数、と百鬼夜行の1匹がそんな事を言っていたのがチラと脳裏を過ぎったからである。
そんな理由で視線は隻眼は笑みの形の細めたままであるが、少女のその九つの尾をジィと見つめてしまうのであった。
■タマモ > ぴくん、少女の耳が揺れる。
タライの中で泳ぐ魚、その音に紛れ、何やら近付く音が聞こえたからだ。
まぁ、害意や敵意は感じられない。
問題なしと判断し、とりあえず、次を狙うかどうか、考えていたのだが…
「………釣ったばかりで活きの良い魚、当然じゃろうな。
しかし、だ…どう見たら、妾の尻が見えるのか、不思議なものじゃのぅ。
そうは思わんか?ん?」
よいせ、と岩の椅子から立ち上がる。
聞こえたのは男の声、ならば、女子に気を向けるのは分かる。
だが、うん、ちょっと言葉が直接的や過ぎないか?とか何とか、思ってしまう。
だから、少し疑いの含みを乗せて、言葉を返す。
実際には、そこまで気にしてはいないのだが。
ゆらりゆらりと尻尾を揺らしながら、くるりと男へ振り返る。
その際、軽く首を傾げるのだが、特にそれ以上は何も言わない。
単に、人間じゃないな、との判断を下しただけ。
少女にとっては、だから何?程度の些細な問題だからだ。
■アンヤ > 友好的な少なくとも自分の中では友好的な顔をして良かった、筈である。
九つの尾を持つ少女が岩の椅子から立ち上がり、此方を振り返るのをジィと見つめながら、相手の態度が気配がゆるい雰囲気である事に胸のうちでほっと安堵。
相手の実力も尻のサイズも判らぬまま牙をむき出しにするのは望むところではなく、出来れば勝てる状況で確実に相手を貶めることが出来る舞台で無ければ術のひとつも振るう気になど――…なろう筈もない、少なくとも今は。
「安産型のよき尻に見えるな。何……そうさな乳も悪くない。我の左目はそんなお主の裸体を見通す不思議な眼でな?」
軽い冗談を交えながら、ケラケラと笑って見せる。
笑って見せるも内心冷や汗がタラりと落ちぬわけではない、何だろうか、視線の先の見えぬ尻……乳はともかく、その尻は見たこともない筈なのに口からそんな言葉がでた、褒め言葉の心算であったが近づけば近づくほどに、己も首を傾げるだろう――…どこぞで見たような?見ていないような?と笑顔が一点訝しげな顔となる。
魑魅魍魎悪鬼羅刹なれば見た目以上に長生きである。
――…故に記憶のどこかで引っ掛かっているのではないかと。
他キツネの空似?何てこともあるだろう。
だからハッキリとは口に出来ないが、こう、訝しげな表情のまま視線は上に下に、特に少女の唇に……後は矢張り乳に戻ろうか、衣装を押し上げる胸元にも視線をおいて。
その間も歩みは止めず、止まるのは相手の拳が届く距離、そして自分の拳も届くような絶妙な間合いである。
しかし、本当に美味そうである。
思わず一つ喉に唾液を生唾を飲もうか。
■タマモ > 男がどう思っているか、それは分かりはしない。
しかし、少なくとも、己の気配からも害意や敵意は感じられないはずだ。
………僅かな、悪戯心はあるかもしれないが。
人ではないが、人の姿。
この場所を考えれば、当然と言えば当然だろう。
そんな事を考えている中、再び男から声が掛かる。
その言葉の内容に、じーっと、じと目を向ける少女であった。
「いやいやいや、お主、初対面の女子相手に、いつもそれか?
一言言わせて貰えば、もう少し、考えた方が良いと思うぞ?」
そんな態度で応えたのは、相手の言葉に冗談が含まれている、それを理解しての上だ。
実際、それを初対面の相手に連発すれば、周りから警戒される事請け合いだろう。
さて、冗談はさて置き。
「………で、このような場所で、何をしておる?
妾は、見ての通りじゃろうが…のぅ?」
と思っているのに、相も変わらず、男の態度は変わらずで。
己の体へと無遠慮に向けられる視線に、はふん、と軽く溜息を一つ。
とりあえず、それを示すように、手元に釣竿を寄せるのだ。
■アンヤ > ……初対面。
正直その一言にも思わずホッとした。
何敵は殺せ好みは犯せで過ごしていた悪鬼羅刹の類としてはやり合って勝てるか否かの相手に恨まれるとか面倒ごとは願い下げである。
ジト目な少女の視線を帯状の眼帯で隠していない右眼を少女の柔らかそうな果実から持ち上げて、ジィと受け止めながら不意に表情を眼を元の笑みに変えて細めて、少女のご忠告にケラケラとまた軽く自分の腹部を押さえて笑う。
「ああ、我に悪気は無い、が、ご忠告感謝する。なんせ巫女をもたぬ身としては色々と餓えてな。」
と、矢張り視線をまた下らせて、更に下らせて……。
笑みの形の唇の隅を持ち上げて、手で親指で自分の顎を支えるように、いやはや間近で見れば確かに美味そうである、そこに泳ぐ魚よりも此処は一つ悪戯でも仕掛けるか?と悩むくらいに美味そうである。
さて、冗談半分、策をめぐらせ半分で。
「……と、我は散策中よ。主は釣りと、何時間があるなら我にその時間をちくっと分けれはくれぬか?あれだほれナンパという奴だ。」
視線も無遠慮ながら口説くのもまた遠慮も隠しもしない。
一つ前の言葉通りに餓えている、まあ諸々と。
それに相手が同等か格上と感じれば悪戯心もより反り返る程にむくむくと沸きあがる。
なんせ相手は九尾。
上手くいけば拍手喝采。
得るものは多く、骨の髄まで愉しめそうであると。
なら試すとする。
もう片方の手の指先で自らの頬を軽く引っかいて、その支度をば。
行使を企むは精神操作。
この場は
無論隙を狙って行使する、一つでもその隙間に頚木を打ち込めれば後は――…と思わず細く笑みそうになる。
それには蓄えたものを放って、それなりに力を見せ付けねばならないだろうが、視線の先の女狐にはそれだけの価値は十分にあるだろう。
■タマモ > 少女は、相手の顔を、相手の気配を、忘れない。
時々…いや、結構、名前は忘れるが。
そんな己に記憶がないのだ、初対面、間違いないだろう。
だったら、そう気にする事はない、その存在さえも。
「………お主、分かっておらんのではないかっ!?」
そんな考えや、遣り取りはともかく。
再び動く、その視線の動きに気付けば、ぺしん、頭を叩いた。
時に、少女もツッコミ役となるのだ。
しかし、続く男の言葉と、そこから感じる何かに、すぅっと瞳が細められる。
「言葉の端から、行動の端まで、そんなものを見せておるようでは、獲物はすぐに逃げてしまおう。
常に獲物を求めるならば、まず、相手を見極める、それが大事じゃぞ?
目先にばかり、意識が向くようでは、まだまだ未熟じゃのぅ」
くすくすと笑いながら、体を少し屈め、上目使いに男を見上げる。
その瞳は、真っ直ぐに男の瞳を見詰めていた。
まるで、何かを見通しているかのような…まぁ、そう感じるかどうかは、男次第だが。
「………じゃが、時に、すんなり事が進む相手、それに出会う事もある。
無駄に策を講じずとも、無駄に危険に身を寄せずとも、な。
妾は、確かに釣りをしておったが…それも、終わろうとしておったところじゃ。
まぁ、ちと小腹が空いておるから、それを満たした後となるがのぅ。
その程度ならば、待てるじゃろう?ん?」
そこまで伝えれば、足元のタライへと屈み、手を差し込む。
ぱしゃんっ、と払うように手を動かせば、中の魚が数匹、そこから振り払われ、河川へと投げ込まれて。
残った魚は二匹、その言葉の意味をどう捕え、どう動くかも、また男次第なのだ。
それ次第で、この後の成り行きは決定する。
どうなるのか、それを知るのは、少女と男の二人となるのだろうが。
ご案内:「九頭龍山脈 山中の麓付近」からアンヤさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山中の麓付近」からタマモさんが去りました。