2020/07/03 のログ
■カーレル > その胸であったり、尻であったりの栄養は何処から来ているのか?
まさか、何もせずともここまで育ったと言うには余りにも―――
なんて言葉が平素であれば、口から出たであろうが、ここは泣く子も黙る山賊街道
灯りを落とし無灯火で進んでいるが馬蹄の音を頼りに山賊が襲ってこないとは限らない
馬に乗り情報を届けるために長距離の移動なんてのは密偵時代に何度も経験している
その頃は大抵、追手が掛かっていたもんだが、今はその心配をしなくて良いだけ幾らかマシである
「怒れる程度の気迫があるなら心配もしないけどな…
ああ、それならもうそれでいいや…
ゆっくりでいいから今は馬上にいて、真っ暗な中を駆けてるってのは頭の片隅に置いといてくれ」
ほっそりとした腰を支えて彼女がこれ以上に動かないと思えば添えた手を離し、手綱を掴み直す
一瞬の重心の動きに馬が意識を此方に向けるが、それを手綱で巧みに捌き事なきを得る
良い子だ、と頑張っている馬とそれとこっそり彼女にも伝えるような声音で呟き
「宿場に付くまでに何かあったらとは思わんのか…まあ、過ぎた事言っても仕方ないわな…
そうだろう、そうだろう…海より深く、俺に感謝していいぞトリシャ」
彼女の言葉にふふん、と今度は此方が鼻を鳴らし威張ってみせる番であった
彼女のように胸を張ったりはしないけれども
するとようやく森を抜けて、街道は丘陵地帯へと向かって伸びている
多少、道も良くなりほんの少し馬を操る身としては気も楽になる
「まだ、まだ幾つか丘を超えなきゃなんないけど…深夜前には王都だ
眠たくなったらそう言え、スピード落としてやるから」
彼女が眠たくなれば今度は自分の後方に乗せ、両手を自分の身体に縛れば落ちる心配もないという算段である
どちらにしろ王都までの道程はまだまだ続くのである――……
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からトリーシアさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からカーレルさんが去りました。