2020/05/23 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にマルズヴェインさんが現れました。
■マルズヴェイン > 真夜中の山中、大樹の根方に露営の炎が燃えている。
炎の傍らに座して、夜空を見上げているのは一人の男だ。その鍛え上げられた体躯を男は、異装の鎧に包んでいる。
ところどころ、その鎧が汚れているのは、返り血か。
この日、城塞都市アスピダを訪い、ひとつならざる悶着を起こしたのが、この男だ。
どこか、腕の振るい甲斐のある陣場を借りられはせぬか。
鈍った腕が夜泣きすると、男は呑気にも賊徒どもの本拠地へと、その腕を売りに向かったのだ。
負け戦をその腕でひっくり返すことほど、いくさ人として滾るものはないというのが、この男の信条であるが。
どうやら、劣勢にある賊徒どもには、漆黒の巨大な一角獣に跨り、大身の槍をひっさげた姿は、敵にしか見えなかったものらしい。
門を開けさせること叶わなかっただけでなく、結句、随分とその鎧を返り血で汚すこととなり果てた。
が、この男に後悔の色はない。
それはそれで、鈍っていた腕を少しは慣らすことができたとばかりに。アスピダの城門に血花を咲かせた後に、こうして山道にて夜を迎えたのだった。
「酒だけは…惜しいことをしたな」
ふと、男はそう漏らす。
今あるのは、腰に下げた水袋の中のぬるい火酒だけだ。
せめてアスピダの中に入れたならば、もっとよい酒があったろう。
それだけは悔やまれると、男は呑気に夜空を見上げて嘯くのだった…。
■マルズヴェイン > 炎が猛り、薪が爆ぜる。
長年の相棒たる漆黒の一角獣は、男の許を離れ好きにこの山と森の中を経巡っているのだろう。
朝日が昇り、男が眠りから覚める頃には、いつしか音もなくその巨体を男の傍らに侍らせている。それが、男と漆黒の一角獣との常である。
いつしか、水袋の酒は尽きていた。
漆黒の鎧を外し身軽な姿へと変ずれば、その鍛え抜かれた総身が夜気に露わとなってゆく。
炎を傍らにして男は、大樹の根方を枕に寝転んだ。
不用心なこと、このうえない。
それほどにそれは、無防備ととれる姿では、ある。
だが、今の男には、気配を殺さずに悠揚と寝転がる、大型の肉食のけもののような、そんな風情が漂っていた。
虎や狼が、我が身の危険を気にするものか。
問われたならば男は、そう答えたことだろう。
そうして男は、野放図にそして無防備に、山の夜の中、眠りに深く落ちてゆく…。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からマルズヴェインさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > 「んー……まだ、かなあ………」
午前中のまだ早い刻限。早起きの鳥たちが賑やかしく囀り回りながら日の出を喜ぶように飛び交う頃。
街道に近い山中の中腹。この辺りを荒らしている山賊が根城にしているという、小さな砦付近に聳える特徴的な樫の大樹の前で人待ち顔のヒーラーが一人佇んでいた。
冒険者ギルドの方から請け合った依頼では、砦の山賊が昨今襲った商隊から強奪したとある絵画を取り戻してほしいというもの。勿論、それには山賊のアジトを潰す、という目的も含まれており。そんな依頼は到底ヒーラー一人では適わない。故に、前衛と組んでの作戦が立てられていた。
その山賊というのも、まだ構成人数も4,5人程度でさほど腕の立つ連中でもなく、素人に毛が生えた程度。街の不良共がイキって集った――という有様なので、プロの冒険者となれば二人がかりで対処できるだろうと云う物。
今回組む予定の前衛職の何某かの情報は入っておらず、手の空いた人に声を掛けて寄こすからこの樫の前で待ち合わせて、山賊どもが眠っている早朝の内に奇襲をかけて叩く。そんなざっくりとした指示しか下っていない。
樹の幹に背を持たせかけて装備を点検しつつ、
「どんな人が来るんだろー。やりやすい人だといーなー」
ぽつり、と呟いて周囲を見回した。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に紅月さんが現れました。
■紅月 > そんな彼女のもとへ、まるで散歩でもするかのようにのんびりと近づく姿。
頭上に小鳥を乗せたまま、森の木々や草花をキョロキョロと…こう、鼻唄でも歌い出しそうな。
…けれど辺りに響く足音はなく、その気配は異様に薄い。
「……、…あっ」
ふ、と、顔を上げたさき…少し変わった枝振りの樹の下、女の子が立っている。
「おはよう!
…貴女今日のパートナーの、ティアフェルさん?」
緩く、軽くあげた手を振りながら穏やかな笑顔で歩み寄る。
■ティアフェル > 山賊のアジトを壊滅、という事項も含んだ任務――まあ、それなりにガチっとした感じの、ムキっとした感じの……そういうのを自ずと予想していたので、見回した先に小鳥を頭上に載せたすらっとした女性――それが相方だと、即座に予測できようか。できまい。
まさか…あの人じゃ、ないよね…?と考えながら、何故か自然と薄ら笑いを浮かべて冷や汗を流していた、が……。
「ぇっ? え、えぇ…あ、はい、おはよ、ございます…?
え、と、そー、です、けど……も、もしや、今回の、あの、任務の、山賊、の、あの、前衛の……?」
恐る恐るというように手を振りながら愛想のよい彼女を、凭れていた幹から背を離して待つようにして立ち。
名前まで呼ばれてしまったのだから間違いないだろうが――予想外なの来た、と驚いたように目を瞠って。
■紅月 > 「はい♡ 山賊の、前衛の」
ニコニコと笑顔で告げる、肯定。
まさかもまさか、女二人の山賊討伐。
しかもこの紅髪の女…パッと見、手ぶらである。
筋肉があるようには見えない事もあり、少々、いやだいぶ頼りなく見えるかも知れないが。
「私はコウゲツ、祖国にては"紅の月"と書きまする。
…得物は、この子たち」
胸元に右手を触れ、先ずは自己紹介。
名を告げれば空いた手を…虚空に、まるで突っ込むようにして何かを引っ張り出す。
…左手に握られているのは、黒塗りに月模様の細工が施された扇が2柄。
「他には魔法、精霊魔法、治癒術と…何なら、素手で?
刀もあるにはあるんだけど…敵さんの隠れ家が狭かったら、逆に邪魔になっちゃうから……」
たぶん不安だろう彼女に、1つ2つと己の手札を挙げていく。
刀に関しては小首を傾げながら、やや困ったような表情を浮かべつつに。
■ティアフェル > 「なるほどーぉ……」
わあ。語尾にハートマーク。
上がり気味のカワイイ声で応じられて、思わず、目が無になった。
どこか悟ったような表情を浮かべて、かくり、と機械的に肯き。
上背は女性にしてはあるが、しなやかで華奢な体躯。自分が云うのもなんだが、これからお花摘みじゃないんだよね、山賊のアジトにカチ込むんだよね…?と遠い目になりつつ。無手ですか…?と手ぶらモードに尋ねかける前に返答が来た。
「コーゲツさん? 東の国の人かな?
改めまして、ティアフェルです。ティアで大丈夫。
っへ…? おう、ぎ……?」
舞踏にでも使いそうな細工の入った黒い扇を取り出されて、これからわたしたちは舞踏会で王子様を物色しに行くんだっけか、と頭の中で静かに錯乱した。
「え、っと……回復はわたしが担当するので、戦闘の方お願いします。こっちも多少は叩けるけど、戦闘は本業ではないんで。
でも、魔法が行けるなら……眠らせる魔法とか行けます?
多分すでに寝てるとは思うんだけど……起きないようにして貰って、寝首を掻きまくり作戦がいいと思いまーす」
魔法が使えるならばかなり有利ではある、確か山賊たちには魔法使いはいないはずだ。ふんふん、と気を取り直して伺いつつ。
武器は長物の代わりに短剣など有ればいいかも知れないと小首を傾け。
■紅月 > 「はい、宜しくねーティアちゃん。
…ふふっ、こう見えてとっても頼りになるのよ?」
胸元に当てていた右手を頬に。
頼りになるのは扇を指すのか紅月を指すのか、のほほんと笑いながら緩く宣って。
けれどティアフェルの提案を相槌を打ちつつ聞けば、視線を虚空へ…扇の先で唇にトントンと軽く触れながら口を開く。
「そうねぇ…
眠り、酩酊、麻痺…一通りは。
一応生け捕り用にロープも用意してあるけど…」
そこで一旦言葉を区切ると…にっこり。
意味ありげに笑みをつくり、魔力を込めながら軽く扇を振ってみせれば。
ジャキン…
扇から物騒な金属音が鳴り、物騒なものがはみ出した。
刃物、である。
まるで小さなナイフで出来た羽根扇のように、扇の先から、整然と並んだ刃先が顔を覗かせている。
「サクッと、やっちゃいましょうか。
今日はティアちゃんが動きやすいように精一杯サポートするから、安心してね?」
■ティアフェル > 「こちらこそ、よろしくです。コーゲツさん。
っふふ、じゃあ頼りにしまーす」
何だか親しみやすい雰囲気に、緊張は解れた。若干の懸念は残るものの…まあ、ギルドから寄越されたなら何とかなるだろう、と気楽に考えることにして、ぴ、と敬礼をして見せながら、にこにこ笑い返し。
「おお。それはかーなーり使える。じゃぁま。こっちは乙女二人がかりなんで、動きを封じた上でぶっ潰しましょ」
動けなくさえしてしまえばこっちのもん。魔法の後ろ盾があればさほどの労は要しないだろうと考えられて、ぐ、と拳を握った。
しかし刃物が扇から飛び出してきたので、うわあバイオレンス…と冷や汗が伝う。一見優雅だが相当ヤバイウェポンでした。
「うっす。お願いしまーす。
あ、一応メインはコーゲツさんなんでね? 斬り込みはお任せするんで」
むしろサポートわたし、と思うが、もしかして自分要らなかった感じか?と頬を掻いたが。よし、とざっくりとだが作戦が整うと、枝葉で巧妙に隠されてはいるが、その隙間から見える岩肌を繰り抜いて作られた小さな山賊の砦を示して、
「行きますか! 今回は山賊の殲滅と――盗まれた絵画の奪還。絵画自体に価値は薄いらしいですが……持ち主の思い入れがあるものとのことで無傷で、とのこと」
念のため依頼内容を確認して口にすれば、スタッフを握り締めて気合を入れなおし、聳える砦の方へと山中を進んで行こうか。