2020/04/25 のログ
■イディオ > 「さて、と―――」
(食事を終えてしまえば、後は寝るのみである、明日も又ミレー族を見るために、里を探すことになるのだろう。
こういう普段ではない場所ほど、早めに休み、体力をしっかりと回復せねばなるまい、だから男は、休みに入ることにする。
その前に最後に、人除け、獣除けの罠を確認し、己の安全をしっかりと確保してからの事。
冒険者の旅の一幕の話――――。)
ご案内:「九頭龍山脈山中」からイディオさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にアンヤさんが現れました。
■アンヤ > カリコリと山賊街道の山中に不意に聞え広がる音は何か硬質の物を誰かが噛み砕く音、それと交互に鳴るのはグチリと言う柔らかな物が噛み千切れる音、野生の獣が腐肉を漁る音に近しいが、実際は山道をあるく人影が果実を貪っているだけである。
だらしなくも口の周りを果汁で真っ赤に染め上げて、血の気の薄い唇すらも果汁が赤く染め今一時だけは健康的な唇と見えるか。
それは人であって人に非ず。
人の形をした精霊、悪霊、悪鬼、羅刹、荒神と呼ばれる神には到底至らず、だが精霊よりも何よりも力を持ち、性質は人の悪意を凝り固めたような歩く小さな災厄である。
人に希望を与え、希望に満ちたところを刈り取り美味しく歪んだ楽しみの為に生きているそれが今夜は果実を刈り取って齧り貪っている、その芯までもカリカリと。
「やれ、血の気の多い者が多い地ぞ。我が我が手で特別に静かに出来る様にしてやったのだから、感謝せよ?」
チラと今齧っている真っ赤な果実に帯状の眼帯をまいていない右眼でチラと見下ろし、ニーっとギザ歯を剥き出しにし嗤った――…果実は元は人間、何て事ではない、決して。
ただ果実をもぐ前に幾つか収穫し易い状態にする際に多少戯れただけである、山賊と名乗ったか、それともボウケンシャとやらだったか、憶えは悪いが確かにそんな奴らが折角の食事を邪魔したので、軽く血抜きしてやったのだ。
思い出すだけで痛快。
果実の味が更に美味しくなる。
真っ白な東方の神職者がまとうような衣、そのひらりと揺れる袖口で口元を拭い、果実の真っ赤なその色で衣の袖を赤く染めながら、今夜も山賊街道を山中を歩く。
願いをかなえるための小さな幸運を気紛れに与える為に。
或いは配下を増やすために配下の褒美を作るために。
――…足音もなく、灯りも持たずに。
■アンヤ > 「ああ、灯りだ。灯りが必要だ。コレでは不自然すぎるな。」
唐突本当に唐突に足を止める、足音も無ければ足を止めた際に大地を足裏で擦ったがその音すらも無く、声だけが宵闇に暗黒に包まれた山賊街道の山中に響く。
言葉での宣言。
ああ、不自然なのは良くない、我は不自然は好まぬと果汁で真っ赤な唇でぼやくと、拍手打つように両手をパンと打ち合わせる乾いた音を立てると、合わせた手と手をすぅっと離し距離をあけると――…其処には一枚の呪符が浮いていた。
「そうだ不自然はいかん。我が何をするにも不自然はぁ宜しくない。見るものが怯えてしまうではないか、良くない、良くないぞ……。『さあ燈れ、汝が意を遂げよ』」
あくまでも術式は東方のそれを形だけ真似たものである。
言葉が呪符に語りかけると、呪符は言葉に圧されて端から燃え始め、それが燃え尽きて灰になる頃には其処には小さな狐火が一つ。
それを右眼をチラと見遣ると、よしと頷く。
狐火は小さくはあるが確かに足元を照らし周囲を僅かに照らすので、光源としては十分ではある。
だが、闇の中に一つ狐火が浮かんでいたら恐怖ではないか、とまでは考え付かなかった。