2020/04/16 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にナランさんが現れました。
ナラン > 連なる山脈の中腹、鬱蒼とした森の中。
弱々しい月あかりが木漏れ日のごとく根太の張った地面を照らして、風もない木々の合間は緑と土の匂いが色濃く漂う。

がさり、時折繁みが揺れ枝が揺れ
夜行性の動物たちがそれぞれに生活のために動き、走り、鳴き交わし飛び交って、ヒトの目には暗いだけの一様な森の夜に賑やかな彩を添えている。

その暗闇の中、ひとつ雪柳の繁みに、身を潜める獣ならぬ影。
そっと息を殺し、手にした弓矢を握り、枝垂れた枝の合間から木々の間を通る獣道の様子を伺っている。

この季節、この時間帯、通りかかる鹿の群れがいる。

暫く動物の血にありつけていない。
もうそろそろ『限界』のような気もしている……

今夜は何としても、獲物を仕留めるつもりで
女は闇の中、白い花の香に巻かれながら、じっと零れ落ちる月明りの中を見つめていた。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にアルヴィンさんが現れました。
アルヴィン > それは、獣道から届くにしては妙な音であり、気配だったことだろう。
蹄の音だ。
それも、蹄鉄をしっかりと嵌められた馬のもの。
それが、街道を外れた獣道から届いてくる。
と、同時に、微かに鎧…金属鎧の鎖やプレートが擦れあう音も…。

このような気配を放つ者がいては、今宵は鹿は現れぬかもしれない。
鹿ほど、臆病で気配に聡い生き物は珍しい。
常ならば水場へと向かうはずのその『獲物』を、散らしてしまったとも知らずに。
獣道を今、騎士を乗せた軍馬が歩みを進めて、女の視界のその中に…。

ナラン > 闇の中、想定外の気配と音に女は訝し気に眉を顰める。
鹿とは遠い、蹄鉄を嵌めた蹄の音。

(―――……これは…)

今夜は駄目だ、と悟ると、唇からそっと溜息を落とす。
構えて矢をつがえていた弓からも、力を抜いて。

―――喉が渇く。

常は冷静なほうの女にしては少しだけ苛立って、獣道を睨み
やがて、月明りの下に派手な―――女からすると―――音を立てながら姿を現す騎士を見止める。

(――――こんな時間に、何の用か)

見やる鳶色の視線が、訝し気に顰められる。
―――果たして、何ぞ討伐の帰りか。

女は雪柳の影、潜んだまま
相手が通り過ぎるのをまた、息を殺して待つ……

アルヴィン > まず、歩を停めたのは馬の方。黒鹿毛の、随分と丈高い悍馬と評してよい馬だ。その馬が、女の視界に入ったところでぴたりと止まった。騎士の手綱捌きがあったわけでなく、自ら停まって嘶いたのだ。

「…わかっている。案ずるな」

騎士は、そう宥めるように愛馬の鬣を撫でている。
そして、ゆるりと視線を上げて、獣道に影を投げる、雪柳へとその夏空のような瞳を向けた。

「…ご配慮、痛み入る」

矢を番えた弓の構えを解いてくれたこと。それを指しての言葉であると、女には伝わっただろうか?

敵意は、ない。そして己を待ち伏せたものでもないと見極めをつけ。今度はこちらにもまた敵意はないと、そう示す言葉でもそれは、あった…。

ナラン > 馬が足を止める。
次いで、その馬上の男がこちらへと視線を向ける。
内心厄介な事になるかと一瞬、女の身体に緊張が走って弓を握ったままの手に力がこもる

―――が。

空色の瞳の次に投げかけられたのは、なぜか労いのような言葉。
そのまま去る様子ならば、相手に姿を晒す気は無かった――のだが。
かさり、白い花に覆われた枝を揺らして立ち上がったのは、飢えへの苛立ち紛れ、と、
ついぞ真っ直ぐに見ることが出来なくなった空色を、懐かしく思ったからかもしれない。

「―――配慮ではない。偶々、こちらの当てが外れただけだ……
 こんな夜中に森の散歩とは。何ぞお探しか?騎士殿」

声音には、苛立ちも何も感情は載せない。
ただ問う言葉には、すこし興味の色を覗かせて
雪柳の影から、森の中には眩しい装いの男へと問いを投げかけた。

アルヴィン > 「…急ぎの務めを果たしての、帰りだ。できれば明日の朝までには王都へと戻って報告を済ませたかったのだが…」

見れば、馬の鞍、その後輪にはボタボタと血の滴を垂らす袋が縛り付けられている…。その袋の口からは、捻じくれた角がのぞいてもいた。
竜の首にしては、小さい。それは、キマイラの三つの首のうちのひとつだった。

「貴女こそ…このような夜更け、しかも山深いところで何をなさっておられた…?」

咎めるような色ではない。
不審なと、怪しむ色でもその声はなかった。
むしろ、純粋に怪訝そうに。そして、このような場所に女人がいかに弓で武装しようとて、ただ一人でいるということが、どこか気づかわしいとそういう響きがそこにはある…。