2020/03/28 のログ
ご案内:「九頭龍山脈/山中」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 例のごとく、悲鳴を上げて逃げ回る女。その背後には野犬が数頭。断末魔かというような絶叫の尾を引いて山中を駆けまわり―――、最終的に。

「………降りれない……」

 犬の追って来れない場所――と、夢中で高い樹によじ登ったはいいが、その太い枝のひとつに登り上がって、落ちないように座り込み。まだ下でしつこく吠えまわっている犬をびくびくと見下ろしながら、さめざめと顔を覆った。

「いつまでいる気よぅ……いい加減にしてよぅ……怖いじゃないよぅ……」

 そして登ったはいいが、高過ぎて一人で降りれそうにないじゃないかという……。

「我ながらポンコツ過ぎる……」

 自覚はあるらしく、情けなさと犬怖さで涙目になりながら樹上のポンコツは嘆き悲しんでいた。

ティアフェル >  登る際より、降りる際の方が格段に危険。犬が立ち去ってくれたところで、この高さ……どうしたら。
 地上から6メートルほどの高さの枝まで必死で夢中でどうにかして登ってしまった自分、恐怖の余り火事場の馬鹿力的なアレが発揮されたのだろう。
 人間パニックに陥れば、なんでもやってのけるもんだ――遠い目をしてそんなことを考えているところに、水を差すように、凶悪な咆哮が響き、びく!と大きく肩を跳ねさせて。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいー!! わたしが悪うございました! お犬様たちは何も悪くございませぬー! 頼むからお帰り下さいお願いしますー!!」

 ヒィィィ、と慄き震えながら、幹に組みつき半泣きで叫んだ。こんな無様な姿――せめて誰も見ていないことが救いかも知れないが。逆に誰もいない山中、どこからも助けが入らず――降りれない。
 このままここにいるか、落下覚悟で降りてみるか――、犬がまだ低く唸りながら周囲を回る下を見て、その高さに腹部がすぅっとするような感覚にぞっとして蒼褪め。

「いぃやあぁぁぁぁー!! だーれーかー!! たーすーけーてぇー!!」
 ワンワンワンワンワン!!

 悲鳴と被る犬の吠え声にここだけやたらやかましかった。

 誰かなんているのかどうか、そんなこと冷静に考える余裕もなく情けなく泣き叫ぶ声が山中、街道から外れた場所で響き渡った。無駄でも何もしないよりは……マシかも知れない。

ご案内:「九頭龍山脈/山中」にファイネアさんが現れました。
ファイネア > さてどうしようかしらねぇ。
そんなキャンキャンと騒がしい様子を少し離れた場所で見守る影。
風下なので犬には気づかれてはいない。

野犬に追われて木に登ったはいいが、犬は逃げないし木からも降りられない。
傍から見ても割と間抜けな光景ではあるのだが…。

「ま、犬苦手って言ってたしねぇ。」

ちょこーんとしゃがんだまま頬杖ついて眺める事しばし。
なんか可愛くなってきたのでもうちょっと眺めてようかな、と悪戯心が湧き上がる。
一応、ランタン持参ではあるので、位置と角度によっては見えてしまうだろう。

見えてしまったら多分助けを求められるだろうから「あ、しまった」みたいな表情をするわけなのだが。

ティアフェル > 「あああぁー!! 冷静に考えて誰もいる訳なーい!! 自明の理ー!!」

 泣いても叫んでも、こんな山中の出来事。人なんかいる訳ねえよ、と頭を抱えて嘆き。

「わたしはここで終わるんだぁぁぁ、落ちて死ぬか犬に食われて死ぬかどっちか…いや!落ちたところで犬に食われて死ぬんだぁぁぁ! もうそれしかない……明日という字を明るい日と書いた奴は誰だバカー!嘘つきー!ペテン師ー!」

 とうとう訳の分からん八つ当たりまでして、悔しさを今お世話になっている樹の幹にがすがすと拳を打ちつけて有り余るバカ力を発散させていた、が……。

「っふ、っふ、ふぇ……ぇ……? なに、あれ……?」

 潤んで滲む双眸の端にふと映った……灯り…? 小さな暖色の炎を認めて目を瞬き。そちらに顔を向け。じぃーっと目を凝らして見ると……。

「ファ! ファイネアちゃんー!?」

 バッチリ目撃しやがった。

ファイネア > 静かな山中で盛大に騒ぎやがったので周りの他の様子は静かなものだ。
尤もあの野犬が増えない保証はないわけだが。
しかも何やら叫び声には妙な恨み節まで混じってきている。
ふむふむ、という顔をしながらその叫びを聞いていたのだが…。

ばっちり見つかったらしい。こちらを呼ぶ声がする。
あ、気づいた。しまった。という顔は勿論するわけだ、が。
その直後には笑みを浮かべてひらひらと片手を振ってみる。
さてどんな反応をするかなー、と思いつつ…。

でもまぁ、あの様子ではきっと助けてー!!というのだろう。
犬いるしね、間違いない。
そう思えばひとまず重い腰を上げて木の根元、野犬のいる場所へと向かうわけだが。

ティアフェル >  静まり返った山中で響く叫び――むしろ、その意味不明な雄叫びがコワ過ぎて、物静かな山の住人たちは寄って来ないのかも知れず。辺りは一層、静けさを増す。
 そんな、閉ざされたように静かな緑闇の中差す希望の光――(ランタンです)

「おおい、おーい! こっちこっちー! あ、待って、危ない、犬メッチャいる…!」

 助けを求めるように大袈裟な身振りで片手で樹の幹に捕まって片手を振ったが、そうだ、この下には野犬がたくさん湧いちゃってる。近づいてきたら咬まれるかも知れない、なんて恐ろしい、と起こっていない内から想像して震えあがり。

「待ってぇぇー! 今来ちゃだめえぇ! 咬まれるよー!」

 さすがに、先日知り合ったばかりの相手が犬にボロカスされるなんて避けたい。助けて欲しいけど取り敢えず腹ペコな野犬どもが群がっている内は危険だ、と訴え。

ファイネア > かさかさと草木を踏みしめ、獣道を進む。
上を見ていれば、呼んだはいいけど野犬の存在に気づいた、とばかりに。
今頃注意を飛ばしてもなー、と少し考える。

いくら風下とは言え、ここまで来れば野犬には感づかれる。
あいつら鼻いいもんねぇ、と考えながら腰の後ろに手を回す。
危ないのは承知の上。こうして武器持ちの冒険者である以上は野犬程度には怯える事もなく。
曲刀を一本引き抜いて、だらりとぶら下げながら歩みを進め…。


ぐるる、と唸る野犬達はファイネアを新しい餌として認めこちらに向き直った。
やれやれ、という様子でその群れを見つめていれば――。

ガァゥ!!という叫びと共に数頭が飛び掛かってくるだろう。

ティアフェル > 「ちょ…ッ、マジ危ない…! ねえ、犬だよ…?! 犬ですけど…?! 犬がいるんだってぇー!」

 ここまで犬が駄目なのはお前くらいのもんだろうが、自分が怖いもんだから、きっと彼女も怖いだろうなんて一方的な基準で計って、近づいて来ちゃう彼女の立てる足音と匂いに犬どもが気づいて、鼻を鳴らし首をそちらへ巡らせるのに戦慄する。

「――! 危ない――!!」

 とうとう、野犬どもの攻撃範囲内に入ってしまった彼女に一斉に犬たちが襲いかかる光景を樹上から目撃して悲鳴が上がる。
 ……冒険者で犬に遅れを取りまくっているのは、くれぐれもコイツだけですが。

ファイネア > 飛び掛かってきた野犬。
軽く体を捌きながらその先頭の犬に向けて無造作に曲刀を振り下ろす。
がっ、という音と飛び散る血飛沫。
同時に飛び掛かって来た2匹目を無造作に蹴り飛ばす。
ぼぐんと鈍い感覚が脚甲を通じて伝わってくると、弾き飛ばされた犬は真横に転がっていく。
即座に3匹目の鼻先にローブの裾を絡ませ、視界を奪う。そのままそれも横に蹴り飛ばした。

びくりと足を止める残り数頭。
一瞬で3頭を捌いた様子に警戒心を強めていくだろう。
飛び掛かって来た3頭の内、絶命したのは最初の一匹だけ。残り2頭はよろよろと起き上がっている。

少しの間、野犬達に唸りと睨みを向けられていたものの…。
やがて諦めたか茂みの中へと去って行った。
かなわないと悟ったのかもしれない。それを見てから、フン、と鼻を鳴らした。

ティアフェル >  目を見開き、犬に襲い掛かられて咬みつかれる光景が頭の中で進行していたが――実際に起こっていたのはそれと逆のことで、

「ファイネ……ッ……」

 あまりに鮮やかに三頭の犬を相手にして、捌いてしまうので絶句した。
 残りの犬たちが退散した後に残されたのは野犬の死骸と飛び散る鮮血。
 しばし茫然と樹上で声を失っていたが―――、はっと我に返ると。
 パアァァァァ
 頬をめちゃめちゃ紅潮させて目を輝かせ。

「きゃああぁぁ! サイコー!! ファイネアちゃんかあぁーこいーい! すーてーきー! っふうぅぅー!」

 パンパンパンパン、拍手喝さいしながら褒め称えた。両手を叩くと当然――

「ぅ、わゎ…!」
 バランスを崩して慌てて幹にしがみ付く、締まらない様子を晒したが。

ファイネア > 本来なら殺生するつもりもなかったのだが…まぁ、一頭は必要経費と割り切る事にする。
荷物から布を取り出して曲刀の血を拭いさってから、鞘にしまい込む。
布は汚れが他に付着しないように別にしまい込み、さて、と頭上を見上げた。
何か黄色い声が聞こえる。

「何やってるの、ティア。」

微かな笑みと少し呆れたような語感。
しかも興奮のあまり落ちかけるとは。これで枝が折れたら数え役満だ。
で、どうやって降りるの?とちょっと意地悪な笑顔で問いかけた。
問いかけた後に「何かあったかなー」と声を出しながらわざとらしく荷を漁り始める。

浮遊の魔術などあれば別なのだろうが…生憎そんなものはない。
血の匂いもする事だし、早めに離れるに越したことはないのだが。

ティアフェル >  犬という脅威がいなくなったので、途端に沈みまくっていた気持ちが浮上。かなり高速で爆上げされた。
 後、やってきたのが顔見知りという安心もあり、すっかり心健やか状態だったが……。
 何をしているのか問われて、また、はっ、と気づく。わたしまだ樹の上でしたよってことに。

「……やー……、何って……お察しではありませんこと?」

 おほほ…と乾いた笑いを零して小首を傾げた。犬が下にいて樹の上に取りすがっていてという状況。一目瞭然だろうにわざわざ訊いてきちゃったこの子…と遠目で彼女を見下ろし。

「えーっとぉ! あのねー! 実はぁー……
 降りられなくなってたりね、するんだわぁー。
 で、でね……あの、助けてくれたり……しないかなーなんて……
 てか、たーすーけーてー! お願いー!! 何か奢るから!」

 今度は枝に両足を絡みつかせて体勢を安定させながら。両手を組み合わせて地上の彼女に恥も外聞もなくお願いした。

ファイネア > 「知ってるわ。」

助けてー!という予想通りな反応ににっこり笑顔。
もうちょっとマシな場所が無かったのかしら、と思わない事もないのだが。
奢りはどうこうよりも血の匂いに惹かれてやってくるモノがいたら面倒だ。
面倒が増えるのは御免被りたいので、荷袋からロープとナイフを取り出す。
ナイフにロープを結わえて重りの代わりに。
それを枝に向かって放り上げた。別にキャッチできなくても枝に掛かればいい、という感じ。

「結わえて降りてきて。早い所ここから離れましょ。」

結び終えれば下から強度チェックくらいはするだろう。
それが終れば周囲の警戒に。まさか降りられないとか、降りる時にドジを踏むとかそういう事はないと思うが。

ティアフェル > 「ですよねー!」

 また、ここでかわいらしい顔で笑いながらどS容疑を掛けたくなるような反応をしめすよ、この子……。
 知ってる、とあっさり云われた言葉に若干落涙しながら肯定し。
 そして、先端にナイフを括りつけられたロープを投げられると。
「わ、っとと……」
 足でしっかり枝に捕まって、そのナイフを両手でキャッチし。そして、やはり受け取る際に大きく体勢が崩れるので、慌ててしっかりと幹に抱き着いた。

「ありがとうー!」

 指示通りにすぐに捕まっている枝に硬く括り付け、ぐいぐい、とこっちもしっかりと縛り付けられているか確かめて、ナイフを外すとウェストバックに一度仕舞って、腰に差していたスタッフの方は、先に下の茂みに無造作に落とした。
「よし、――ん、っしょ……よい、っしょ……」
 ロープをしっかりと両手でつかんで、幹の出っ張りに足を掛けて慎重に降りていく。
 途中、汗が滲んだ手が滑りそうになって、ひやっとしたが落っこちることなく、じりじりとゆっくり地上へと降りて――、

「っふう!」

 すたん、と最後は軽くジャンプして爪先から降り立って大きく息を吐き出した。

ファイネア > 周囲の様子を伺っていたが、特に変わった気配は見受けられない。
それでも熊など出てくると非常に面倒だ。逃げるとしても脚早いし。
などと考えている内に降りる算段は整った様子。
じわじわと降りてくる姿を確認してから、周囲をまた見回す。
それを数度繰り返すうちに降り切ったようだ。

「災難だったわね。」

ひと息つく様子を見てから近づく。
怪我は?と聞きながら軽く顔を覗き込むように。
ちょっとナンパ師っぽい対応になってしまったかもしれない。と思いつつ。

一息つけば撤収の準備だ。
結び目は仕方がないとしてももったいないのでロープはできる限り回収してしまう。
槍の穂先でなるだけ上部を切断し、荷物にしまい込んでしまう。
それから、

「さ、早いとこ離れましょ。熊か魔物でも寄ってくると面倒よ。」

遺跡と似たような感じね、とちょっと苦笑しつつ。

ティアフェル >  下でしっかり警戒してくれているお蔭で安全に地上に降りてくることができた。
 足が着くとほっとして、はあぁ……と今度は長く息を吐き出して胸を撫で下ろし。
 近づく彼女の顔に、何だか余計に安堵が込み上げて来て。

「ぅうぁー。ありがとねー。助かったよー。まーさーに地獄に仏……死ぬとこだったーぁ」

 覗き込まれた顔は、くしゃ、と崩れてやはり情けなかった。
 今日はもう一層かわいく見える……と女神でも見つめるような眼差しを注いで。
 手早くロープを回収する様子にさすがに申し訳なさそうな表情で、

「あー。ごめんね、ロープ……弁償するよ。
 うん、そだね。せっかく助かったんだから。これ以上のトラブルは御免」

 前回を彷彿とさせる状況に、こちらもいくらか苦笑いしながら肯いて。
 とにかく、犬の死骸から流れ出る血の匂いから遠ざかっていき。街道まで進みつつ。

「ほんとに助かったけど、ファイネアちゃんはなんでまたこんなとこに?」

ファイネア > 死にはしないでしょ、と思うものの安心しきった様子の彼女。
覗き込んだ顔を見て、あら可愛い、と思ってしまった。
食べちゃおうかしら、などと不届きな考えを持つものの、
とりあえず場を離れる為に足を動かしていくだろう。

「使えないわけじゃないから気にしなくてもいいけれどね。
…でも外出するならロープくらいは持っておいていいと思うわ。」

切った分は多少勿体ないとは言え、残りはまだまだある。
ランタンを掲げて進みながら、彼女をチラリ。

「タナール砦での仕事。明日王都に戻るの。
山の中に温泉あるでしょ。砦自体あまり清潔ではないから、山中のを利用してるのよ。」

さらり、と指先で流す髪はわずかに湿り気を帯びている。
湯上りなので気にすればちょっと独特の香りがするかもしれない。

ティアフェル >  犬三頭に追いかけられた時点でまったく生きた心地はしなかった。死ぬとこだったという言葉にはそれなりに無駄な重みが含まれてた。
 だから、安堵に包まれて顔くしゃくしゃになってた訳だが。それはともかく、その場から立ち去りながら。

「やー。でもやっぱ、悪いよ。
 持ってはいたんだけど……崖を降りる時に使っちゃって……」

 まさかもう今日ロープの必要ないだろー。と回収困難だった為諦めてしまったのだが。
 一日に二度くらいロープのお世話になるもんだなぁ。…と痛感した。ぽり、と気後れ気味に頬を掻き。

「そうなんだぁ、砦で……結構ハードそうだね。
 お風呂大事」

 云われて少々鼻を鳴らしてみれば、仄かに硫黄の香りがした。納得して肯きつつ、街道まで出てくると、

「それじゃこれから砦に戻るの?」