2020/03/17 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「っはあ、はあっ……ふあっ…――も、大丈夫、かな……?」

 山中に分け入ったところ、狼の群れに出くわして。犬嫌い=狼も駄目、な女はとにかく我武者羅に逃げ出した。立ち向かうなんて気はカケラもなく。
 足の速い獣相手ではなかなか撒くことも難しいが、どうにか今回は上手く逃げ切れた、か……と後ろを振り返り、まだ足は緩めないままで走っていた、その時。

 ずっ…!

「う?! あ―――きゃあぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」

 足元が崖になっていることに気づかず、踏み出したそこは地面がなかった。走っていた為、ある程度勢いがあってそのまま、バランスを崩して前傾し、悲鳴が上がる。

ご案内:「九頭龍山脈 山中」にグラントさんが現れました。
グラント > 山中と言うのはうまく使えば街道を使うよりも近道になる事が多い。
特に歩きなれた場所を使えば更に目的地には近くなる。

過去の経験ですっかりと慣れた足取りで山中を歩いていれば聞こえる悲鳴。
一瞬何事と足を止めるが直ぐに声は聞こえた方向へと駆け出し。

「こんな場所で悲鳴は尋常じゃないねえ。
まさか一人旅が山賊にでも襲われたか?」

草木を掻き分けるように一直線にかけて進むと目の前に崖が見え土煙を立てながら急停止。
まさかここから落ちたのかと……。

「おーい!誰かいるのか?」

落ちていなければそれで良いのだが、万が一と。
崖を覗き込むようにして声をかけていく。

ティアフェル >  ガッ……

「ふっ……ぁ、あっ……!」

 落ちる――認識して咄嗟に崖縁の出っ張りを掴み、ギリギリで落下を食い止めながらも、そのまま身体を引き上げることがなかなか難しく、とにかくどうにか必死で捕まっていた。その時。

「ぐ、グラントさん……?! た、助けて!落ちるぅぅぅ!!」

 崖下を覗き込もうとした視線と、下に落っこちかけて引っ掛かってた視線がかち合う。
 相手の顔を確認すると驚いたように目を見開きながらも、即座に助けを求める声を上げた。

グラント > 影を覗き込めばすぐに声の主、知った顔を見つければ流石に驚いた顔を見せる。

「何やってるかは後で聞くからねえ。
兎も角動かないように!」

状況が状況だけに少女の声もあって直ぐに気を取り直して荷物をその辺りに投げるように置き。
助けを求める少女の崖縁を掴んでいる手を両手で掴むと落ちないようにと力を籠め。

「一気に引っ張り上げるから…足場になりそうなのがあったら踏ん張るんだよ」

そう告げると同時に崖上に引っ張り上げようと思い切り力を込めて引っ張り上げていく。

ティアフェル > 一刻一秒を争う切羽詰まった状況。とにかく即座に救助に当たってくれて、手をつかんでもらえば、ぎゅ、と力を込めて握りながら指示に肯いて。

「分かった。お願い…! せぇーの…!」

 しっかりとその手を握り締めつつ、引き上げられていくに従って、崖肌に脚を掛け力を入れて、上に向かって重心を傾けて。

「んっ……んん…!」

 足を交互に動かして登り上がって行き、頭がひょこりと崖上まで上がって、肩が崖の上まで出てくると前のめりになってよじ登り。

「ふ、あ。ああ…!」

 汗を滲ませながら力んでとうとう上半身が崖縁に上がると倒れ込むように傾いて。

グラント > 「絶対に離すんじゃないよ」

しっかりと握り返されると後は引き上げるだけ。
人一人を引き上げるのは重労働ではあるが今はそんな事も言ってられずに全力。
少女も崖肌に足をかけているのか時折に軽く感じれば一気に引き上げて。

「頑張るんだよ、あと少しだからね…」

崖から頭が見えだせば真上ではなく銃身を後ろにして身体をそらせていき。
顔から肩と崖の上に上がってくればと少し。

「一気に行くからね……せいや…!!」

ここまでくれば安心かもしれないが滑ってまた落ちるかもしれない。
そうなっては困ると、後は一気にと気合を入れて思い切り引き、少女を崖上にと引っ張り上げていく。

ティアフェル > 「そっちも落っこちないでよォォォ」

 共倒れは御免だ。小柄な方とは云え人一人を引き上げるのは容易くはないだろうし、腕一本でいくとなると結構危険ではある。
 ぐぐぐい、と引き上げられるのに従って力を込め。

「う、っく……ううー!」

 重力の恐ろしさを痛感する瞬間。励まされるのに汗を滲ませた顔で仄かに目を細めて、最後のひと頑張り、駄目押しのように一気に引き上げられて、思い切り崖を蹴って、どさっ、とそちらへ傾き倒れてようやく、崖から這い上がっては、はあはあと肩で息をして。

「し、死ぬかと思った~………」

 目を軽く渦巻き状にしながら呻いて脱力し。

グラント > 「おじさんもこんな所で落下死したくないよ…!」

助けるつもりが共倒れなど笑えなさすぎる。
だからこそ普段の気の向けたような態度ではなく必至と言う様子。
大の大人が情けないと言われるかもしれないがそれだけ人一人と言うのは重いもの。

少女も懸命に上がろうとしているのを見下ろしながらあと少しと気合を入れ。
崖から引き揚げ上がってしまえば勢いを殺せずに尻もちをついてしまう。

「おじさんも……危なかったよ…。
でもね、何にしても落ちないでよかったよ」

無理をして少々痛みを訴える腰に手を当てて笑みを浮かべ。
脱力した少女の傍によると「よく頑張った」と告げて頭を優しく撫でようとしていく。

ティアフェル > 「すみませんねえ、ダイエットするよ…!」

 重たいかも知れませんすみません、と謝罪しつつ、どうにかこうにか力を合わせて這い上がって来れました。
 後ろへ転倒するそちらに、前へ倒れた勢いで頭突きをカマしてしまいつつ。

「ご、ごめんなさい……だいじょぶ?
 あー。どこが痛い?」

 小首を傾げて腰をイワせてしまった彼を見つめて窺い。
 頭を撫でる手に、ひょこ、とアホ毛を小さく揺らしながら。

「ありがとー。助かったぁぁ~。グラントさんが通りかかってくれないとやばかったわあ」

 ふう、やれやれ、と助かった安堵で表情を緩めつつ深々と頭を下げて。

グラント > 「あはは、そこまでしなくてもいいよ。ティアちゃんは今ぐらいが調子いいとおじさんは思うしね」

あくまで依頼中の姿を見た印象ではあるが普通だと思っての言葉、他意はなく。
むしろ今は状況が悪かっただけというように笑って。

「大丈夫大丈夫、痛いけどイワしてはないよ。
それにティアちゃんを助けられたんだから腰の一個や二個は安いもんだねえ」

何ともないよと強がるように見せるが痛みに小さく呻き。
無事でよかったと優しく頭を撫で、揺れるアホ毛を見る。

「悲鳴が丁度聞こえてねえ。おじさんも今日ほど近道を使ってよかったと思う事はないよ。
で……なんでこんなところにいるんだい?」

そこは気にしなくていいと手を揺らし、それよりもと何で落ちそうだったのかと聞いていく。

ティアフェル > 「そっかな? ちょっと太ったかもと思ったんだけど……まだセーフ?」

 お腹周りをふにりとつかんで確認しつつ小首を傾げ。
 普通よりスマートでいたいお年頃。体型は気になるゆえに運動やら食事やら普段から管理はしているつもりだが。

「へーき? あれならヒールするからご遠慮なっく。
 いや、確かにわたしの命が懸かってるのに「腰痛いから離すねえ」とか云われたらキレるけどさ、でも、痛いの我慢は駄目だよ?
ほらほら、治すから無理しないで!」

 強がった直後に痛そうな声が漏れて、腰?ここ?と彼の背後に回り込んで患部を確認するように腰の中心を指で押そうとして。

「まさにグッドタイミング! 命拾いー。
 わたし? わたしは薬草採取に来たの。この辺にしか生えてないのがあって……」

 薬の材料集めである、と。その途中で狼の群れに出くわし、慌てて逃げてこの惨状。犬嫌いのブレない弱点。

グラント > 「おじさんは元をしらないからねえ。確かめる……って言うのはセクハラになっちゃうしね」

お腹周りを掴んでいる姿に、おやめなさいという突っ込み。
男とは違い、女の子はそう言うのが気になるのだなあとしみじみと考えて。

「大丈夫だと思うんだけどねえ。
いくら腰が痛くでもティアちゃんを見捨てるほど薄情じゃないよ。
それじゃお願いしようかな」

やはりがたが来ているのかと痛みに呻いてしまい。
背後に回った少女に腰の中心を押されると、そこそこと何度も頷いてしまい。

「本当にグッドタイミングだったねえ。ちゃんと神に感謝しとくんだよ?
この辺りしか生えてない薬草……あぁ、あれだねぇ」

理由を聞くとそれは仕方ないと納得するのだが…。
続いた言葉には呆れてしまい、誰かと一緒に来なさいとつっこんでしまうほどで。

ティアフェル > 「セクハラセーブができるおじさんは全然セクハラじゃないよね」

 セクハラ親父はそんなこと云う前に確かめに入る。
 さすがは元騎士だ。そんな下世話な真似はしない。自分をおじさんおじさん云うてる割にそんなにおっさん臭くない人だと。

「ダメダメダメ。こういうのは早期治療が物を云うのよ。
 無理したって悪くなるだけだし! 強がりなんて一番ダサイんだから」

 無理は良くない、と、患部を確かめる指先に反応がくると、よしここか、と肯き返して。そこまで悪い状態でもなかったので、スタッフの先を翳して、短い詠唱を唱え回復術を施した。スタッフの先から淡く暖かな光が生まれて、患部の痛みを取り去ってゆき。

「助けに来てくれない神様よりも、助けに来てくれたグラントさんに感謝しとくわ。ありがとうございましたー!
 ――うん、ここら辺には貴重なものがいくつもあるし……。
 それじゃ、今日はグラントさんと一緒しーよお」

 呆れたような声には勝手に決めて、に、と悪戯めかして口元を持ち上げてがし、とその腕を組みに行き。

グラント > 「これでも騎士時代は紳士で通っていたんだよ」

それが辞めた程度でセクハラなどしませんと何故か威張り。
おじさんと名乗っているのはそろそろ40歳になりそうという理由。

「それはよく言われるんだけどついねえ…。
はは、助かるよ」

患部を見つけられてしまうと強がりもそこまでと大人しくお願いする事にして。
回復魔法の淡い暖かな光に腰の痛みもすっかりと治ってしまえば確かめるように身体を捻って。

「神様がおじさんを遣わせたって可能性もあるから一応感謝しとくんだよ?
でもお礼を言われると恥ずかしいもんだねえ。
でもそれを知ってるティアちゃんは結構通い慣れてる感じみたいだね。
おじさんと?後は戻るだけだったし……構わないよ」

腕に組みつき意地悪めかした顔の少女を見ると仕方ないなと笑みを見せ。
それじゃ行きましょうとするのだが…。

「先に荷物を拾わせてね?」

そう言い助ける時に投げてしまった荷物を集め始め、何とも締まらずに。

ティアフェル > 「んー、今でもじゅーぶん、紳士なんじゃん?
 騎士はやめても紳士は現役だね」

 ふむふむ、と肯いて、見上げたものだよ、と軽く拍手を捧げた。

「まあったくー。回復屋を前に無理はやめて下さいよ?
もお若くないんですよ? 若くても駄目だけどさ」

 めっ、と人差し指を立てて悠長に注意キメる。
 施術が効いているか様子を窺っていれば身体を捻る所作に大丈夫そうかなー?と見つめ。

「無神論者なの。わたし。見たら信じる。
 一応調合などもやりますんで、どこにどんな薬草が自生するかくらいは把握しとかないとですよ。
 よっしゃー。じゃあよろしく、犬類が出たらぜひ積極的によろしく!」

 モンスターは別にいい。問題は犬の類。同行に許可が下りれば、やたー、とはしゃいだように感性を上げて。
 
「あ、荷物大丈夫? 壊れた物とかない?」

 さすがに助けるために破損させていたら責任を感じる。拾い上げる隣になって心配そうにアホ毛を左右に揺らし。

グラント > 「そんな事はないと思うんだよ?おじさんは人の嫌がる事はしたくないからね」

人が良いというかヘタレているというのか、どちらとも付かないような態度で笑い。

「判ってるよ、そんな無謀をするほどアホじゃないよ。
自分が若くないのは自覚があるから言わないで……」

勿論無理をするつもりは全くないが、それでも年下に注意されたとなれば肩が落ち。
本当に回復魔法は一級だと全く痛みがなくなった事に感謝して頭を下げて。

「無神論者の神官……また新鮮だね。おじさんも見ないと信じないんだけど。
調合も出来るのは凄いよ。薬草の自生地は把握し解かないと仕事にならないしねえ。
まかせなさい、ティアちゃんをきっちり守ってあげるから大船に乗ったつもりでいいよ」

少女が言っているのは狼や野犬の類、それは任せてと請け負い。

「大丈夫だよ、大したものでもないしねえ」

投げたのは槍と背嚢程度、割れるような物もなく直ぐに拾い上げ。
それじゃ行こうと少女の背中を軽く叩いて。

ご案内:「九頭龍山脈 山中」にグラントさんが現れました。
ティアフェル > 「それが紳士なんじゃん。まー、わたしはそういう人のが好きでさあ」

 常識的なところをちゃんと抑えているのも紳士的な人だよと。

「分かっているならよろしい。
 ごめんごめん、でもまだまだじゅーぶんかっこいいって。グラントさんは」

 おトシは気にしているらしい、微苦笑気味に謝罪しては。にこ、と笑い掛けながらきっちりフォローも入れておく。
 施術は上手くいったようで、安堵しつつ頭を下げる所作に、イエイエこちらこそと頭を下げ返し。

「わたし神官じゃないよ? ヒーラーだもん。プリーストみたいな聖属性じゃなくって、魔力や回復力や薬品を利用して施術してるから……医者に近い?
 えへへ。まだまだ修行中だけどね。そうそう、いちいち高い薬草を買ってもいらんないし。
 きゃああぁ、素敵……。素敵ですグラントさん……うっとりっす」

 犬を対処してくれるということで、好感度が爆上げしまくる。キラキラした目で見上げてそれこそ神にでも対するように腕を組み合わせた。

「そ? それなら良かった―――ってぇぇぇ、あれ!あれえぇぇえ!
 犬?! 犬じゃないの…?! 狼か? いやもうどっちでもいい!
 ヤダァァァァ!!」

 破損品はないと聞いてほっとしながら、背中を叩かれて歩き出したところで――大分前方の茂みの奥ががさっと揺らめいて、獣の尻尾や耳が覗いたのに、警戒警報が発動した。
 ヒイィィッ、と慌ててその背中に隠れて衣服を掴み。茂みの向こうを指差す。
 嫌いな奴は目ざといというが……。

グラント > 「そんなこと言われたらおじさん…嬉しくて踊り出しちゃうかもよ?」

いたってそれが普通と思うだけに、そんな事で褒められるのは照れくさくてお道化て見せて。

「無茶をすると死んじゃう仕事をしてたからね。
ティアちゃんぐらいから見たらおじさんじゃない?」

苦笑気味な謝罪の後にお世辞込みだとは思うがフォローをされて頬を掻き。
若い頃のように軽く動く身体に凄いものだと感心しかなく。

「ヒーラーも神官みたいなものだとおじさん、思ってたねえ。ほうほう、医者に近いんだね。
修行中でもね、ティアちゃんなら直ぐに良い所にいけるんじゃないかな?
そんなにおじさん持ち上げちゃ駄目よ?調子に乗っちゃうからね」

勘違いしたらどうするの?と困った笑みをキラキラとした目を向ける少女にかけて。

「それに割れても精々空の薬品瓶だしね?
……苦手なのは直ぐに分かるのも才能の一つだってね」

歩き出せば先の方の刺激が揺らぎ、風かと思ってはいたが少女には別の物が見えたようで。
背中に隠れて服を掴み、茂みの先を指すことに居たのだと直ぐに分かって。
態々無駄に殺す必要はないだろうと石を拾い上げて茂みに全力で投げつければはっきりと命中をした音と狼の悲鳴があがり。
そして茂みを鳴り揺らして逃げて離れていく気配にもう大丈夫と安心させようとする。

ティアフェル > 「いいじゃないの、ぜひどうぞ。合いの手なら任しとけ!」

 むしろ煽った。楽しく見守るのでいつでもどうぞ、と掌を差し向けて。

「その割に無理も多い仕事なんじゃない?
 んんー。まあ、そうでもないよ。40もいってないっしょ?」

 おじさんを主張させるほど、おじさん的にも見えていない。
 自分のとーちゃんより大分若い…そんな雑な基準ではあるけれど。
 術が上手く作用したことには嬉し気に、少し照れたように頬に手を当て。

「雑だなー。似たようなものに見えるかも知れないけど……。まあプリーストはヒーラーを兼任してることも多いもんねえ。
 えっへっへ。やだ、おだてちゃってぇー。引き続き修行がんばりまーす。
 いや、犬でしょ? 犬を何とかしてくれるんでしょ? ティアからすればスペシャル素晴らしいよ」

 犬ガード、それは自分の中で主神にも等しい。勘違いしたくなるのはこっちの方だ。
 犬を追い払ってくれる=信仰対象。

「ぅぅあぁぁぁー。やだよー。犬ぅー。
 グラントさん、グラントさんんん、早く早くっ追っ払ってぇぇぇー」

 と、その背後に隠れ忍んで恐ろし気に震え上がりつつ、要求するまでもなく、石を投げて茂みの向こうに潜んでこちらの様子を窺っていた犬…じゃなくて狼を追い払ってもらい。

「行った? 行った? 行っちゃった? ホントにいない??」

 犬がいれば一歩も動けない。恐る恐るその背中から顔を覗かせてもう恐怖の対象は行ってしまったのかと茂みの向こうを見やった。

グラント > 止める所か煽る少女に本気なのかと視線を向ければどう見ても本気。
流石にやめておくというように首を振り。

「冒険者だしねえ……無理しないといけない時はやっちゃうねえ。
おじさんは今は38だよ」

もう直ぐ40と言うのは本当、パッと見ての年齢ではあるが少女の倍はあると自分では思っている。
そんな少女に癒され身体は絶好調となれば感謝しかなく、照れているように見える少女の頭を軽く撫で。

「あぁ、それでおじさんは一緒だと思っちゃったんだねえ。
これでも人を見る目はあるからね、ティアちゃんは絶対に立派になれるよ。
犬で良いならおじさんは何時でも守ってあげてもね?」

正直犬もゴブリンもチンピラも似たような物。
それを追い払い少女が喜び安心できるなら安いものだと引き受けて。

「もう追い払ったから大丈夫だよ。落ち着いてね」

はぐれか偵察かは判らないが居たのは一匹だけの様子。
逃げて行った気配以外がないかと少々集中しては見るが他はいない様子。

「もういないから大丈夫だよ。おじさん嘘言わないからね。
不安なら手を繋いでみるかい?」

後ろから茂みを見ている前で石を茂みに投げ。
草の鳴る音以外しない事に大丈夫と笑ってはそれで安心できるならと提案をしてみる。

ティアフェル >  煽って見たが、結局やらないという結論にちぇー、と残念そうに唇を尖らせた。

「無理は良くないけど、時に必要なのが無理ってものよねぇ。
 んー…じゃ、まだそれほどじゃないじゃん」

 まだまだ若いって、と軽く背中をぽん、と叩こうとし。
 頭を撫でる手に、擽ったそうにどこかはにかんだ表情を浮かべ、神経通ってる説のアホ毛がまたひょこと揺れた。

「っふふ。まじでぇー? いやあ、やだなあ照れちゃうなあ嬉しいじゃないの。
 うあぁぁぁ、イヌの前で盾にしちゃっていいんですか? いいんですかあっ?」

 それは素敵にもほどがある。基準が犬に偏り過ぎている女は、ぱあぁぁ、と表情を明るませて、若干興奮気味に頬を紅潮させた。頼れ過ぎる。
 雑魚モンスターなんか一切合切引き受けちゃっていいから犬だけお願いしたい。

「本当にいない…? いないのね?」

 さっきは群れに遭遇した。後からわらわらと湧いて出たら死ぬ。びっくびくしながら、気配を探ってもらっては、ようやく安堵したように盾にしていた背中からおっかなびっくり出て来て。

「ありがとぉおぉ、信じてるよぉぉぉ。
 ――つなぐ…!」

 石を投げて安全を確認してくれる行動に、安心しつつ。
 がしっ。提案に大きく肯いてすぐさまその手を握りにかかり。
 かなり大真面目な顔でヨロシク!と片手で敬礼し。

「――あ、グラントさん、方向そっち、右行く。右……」

 お子様のごとくお手々つなぎながら、時々くいくい、と引っ張って進路を指示したり。

グラント > 「これでも前衛だからね。必要なら命を張る時もあるんだよね。
もしかして……ティアちゃんのお父さんの方が年上だったりするのかい?」

若いという言葉と共に背中を叩かれ、まだ頑張れるという気持ちになっていき。
はにかんだ表情は可愛く見え、先ほども思ったが…どうしてアホ毛は動くのだろうと。

「マジだよ。立派になったらお世話になると思うからよろしくね、もちろん今もだけど。
もう何度かされちゃってるけど…構わないよ」

寧ろどんどんしなさいというように胸を叩いて請け負う。
明るくなった表情、興奮気味なのか頬を紅潮させる姿は非常に可愛く見えるので目の保養にもなり。
雑魚モンスターよりも犬を怖がるのも少女らしいと。

「いないからね。本当にいないよ」

今はいないのだがそれを言えば怖がらせると考えてあくまでいないと教え。
もし集団でくれたその時は可哀そうだが犬達には大怪我をしてもらうしかなく…。

「最初の仕事でも約束は守ったよね。だから信じなさい。
離さないようにね?」

これ安心できるならという提案に飛びつく少女。
手を握られるとしっかりと握り返して。
大真面目な敬礼に判りましたというように頷き。

「こっちなんだね。右っと……」

場所さえ違えば親子に見えるかもしれない年齢差の男女。
時々に引っ張られて進路を変えつつ、途中に何かの気配を感じれば先に石を投げて追い払い。
そうして進んでいけば薬草の群生地はそろそろだろうかと少女を見て。

ティアフェル > 「そだね、そういう役割を選んだんだものね。
 うちのおとーさん?確か43とかだったかな?」

 さすがにこの人よりは年上。小首を傾げつつ応え。
 傾ぐ首に合わせふらーん、と動く謎のアホ毛。仕組みは誰にも分からない。

「やー。もちろん。いつでも頼っちゃって。腕上げとくから。
 スペシャルサンクス過ぎる。ありがとう、ありがとう…!
 わたしはいつでも犬から助けてくれる人がいたとしたら、無条件で好きになりそうで我ながらちょっとヤバイ」

 胸を叩く所作に容易くぐっとくる。ああ、いけないわ、犬盾というだけでぐっときては…。と頬を抑えてふるふる首を振ったり、一人で盛り上がりながら。
 とにかく彼がいる時は犬の心配はないという科白に心底心強く感じ。

「う、うん……」

 少しだけ心配そうにしながらも。犬不在を告げられてビビリビビリしつつも、手を繋いでいると少しだけ安心して。あと信じるように告げる言葉にも何となく安堵を覚え。うん、とこっくり首肯して見せ。

「信じてる…! 信じてるから…!
 命綱ですからね…! そっちも離さないでよね」

 狼が一杯いる地帯と認識した時点で、この手は命綱となった。
 そして、犬か犬でないかは分からない時点でも、気配を探っては何かいると察した場所に投石して追っ払ってくれるので、安心して進めてゆけて。
 時折立ち止まって方向を確認しながら山中を進んでいくと、

「――ん、もうちょっと、この先に――あ! あそこ…!」

 目的地を窺うように視線を投げかけられて、目線を返しながら、前方の茂みの向こうに拓けたような草原を見つけて指差し。そこに赤く小さな花が群生しているようで、それは目当ての薬草に違いないよう。